公開日 2026年6月15日

和平合意成立でも需給ひっ迫から原油価格は高止まる

「和平合意=原油安」は早計だ。在庫の急減が続けば、原油価格は再び最高値圏を試す可能性がある。
和平合意成立でも需給ひっ迫から原油価格は高止まる

合意が成立しても、しばらくの間は、生産が需要に追いつかず、原油需給ひっ迫が続く

米国とイランはエネルギー輸送の要衝、ホルムズ海峡を再開させる暫定的な和平合意に達した。

イランの核開発計画を巡る協議開始でも一致し、今後、60日間で交渉がなされるようだ。

合意の内容について公表されていないが、6月12日に記者団へ説明した米政府高官は「合意にはイランが核兵器開発計画を持たないことを保証する一方、民生用の原子力エネルギー計画の維持を認める内容が盛り込まれる。

濃縮核物質の国外搬出、およびホルムズ海峡を巡る双方の封鎖措置終了も含まれる。

さらに、全ての条件が履行された場合、米国は対イラン制裁を緩和し、同国の国際経済への復帰を認める」と述べた。

米国が示した一連の要求をイランが満たすたびに経済的見返りを得るという合意の枠組みが検討されていると言われる。

ただ、ブルームバーグが交渉の関係者の話として伝えたところによれば、覚書には一部の条項で解釈の余地が残されるとの見方があるようだ。

その中には、ホルムズ海峡の通航再開が実際には何を意味するのかという点も含まれ、トランプ大統領は船舶の自由な通航が認められるとしているが、イランのメディアは、イランがなお一定の管理権限を維持するとの見方を伝えている。

中間選挙まで5か月を切ったトランプ政権としては、合意の内容が多少、玉虫色であったとしても成果を急ぐ必要があったと考えられる。

暫定和平合意が近いとの期待から、6月12日の原油WTI価格は84.9ドルと4月17日以来の水準に下落した。

原油WTI価格は戦争前の2月までは60ドル/バレル台で推移していた(2月27日の同価格は67.0ドル/バレル)。

ところが、2月末に米国とイスラエルがイランを攻撃し、ホルムズ海峡が事実上封鎖されたことで、原油価格は一気に急騰し、4月7日に一時112.9ドルまで上昇した。

ただ、その後は、各国の戦略備蓄放出など原油在庫の引き出し、米国シェールオイルの増産、中国の原油輸入減少、石油化学や航空部門などのセクターでの需要減少に加え、「米・イランの和平合意は近い」といった再三にわたるトランプ大統領の口先介入などもあって、上値を抑えられていた。

とくに、原油在庫の減少は、ホルムズ海峡封鎖による原油供給の急激な減少が、直接、原油価格に影響しないための緩衝材(バッファー)になっていたと考えられる。

合意が成立されれば、ホルムズ海峡の通航、湾岸産油国の原油生産も元通りになり、原油価格も一段と下落して戦争前の水準に戻るとの期待はある。

だが、合意が成立しても、米国側が主張するように、ホルムズ海峡で本当に船舶の自由な通航が認められるかどうかは不明で、イランがなお一定の管理権限を維持しようとするかもしれない。

イラン側が戦争前のような形での、ホルムズ海峡における船舶の自由な通航を認めたとしても、まず、機雷の除去が必要になり、海運各社が安全と判断するまでにある程度時間がかかる。

また、戦争によって被害を受けた湾岸産油国の石油関連施設の修理などにも相当な時間がかかるだろう。

さらに、イスラエルによるヒズボラ攻撃が継続されるなど、イラン側からみて今回の合意に反するようなことがあった場合、あるいはイランの核開発を巡る協議が頓挫するといったことがあった場合、イランはホルムズ海峡を再び封鎖する可能性もないわけではない。

一方、原油需要については、景気回復を見越した需要増のほか、戦争後に正常レベル以下に急減した原油在庫を積み増すための需要増も見込まれる。

こうしたことから、合意が成立したとしても、しばらくの間は、生産が需要に追いつかず、原油需給ひっ迫が続き、結果として、原油在庫の減少も続き、原油価格が値下がりしにくい状況は続くだろう。

今年いっぱい原油在庫の減少が続き、需給調整の緩衝材がなくなる

IEA(国際エネルギー機関)の5月“Oil Market Report”によれば、4月末時点の世界の原油在庫は79億バレルとなった。

イラン戦争前までの世界の原油需給は供給超過状態で、その結果として、今年2月まで原油在庫は増加傾向を辿っていた(2月末の原油在庫は82億バレル)。

だが、3月以降は湾岸諸国の原油生産が大きく落ち込んだことで、大幅な供給不足に転じ、世界の原油在庫は3月、4月の2か月間で約2.5億バレル(日量換算で約400万バレル)減少した。

一方、米EIA(米エネルギー情報局)は6月9日に短期エネルギー見通しを発表したが、この予測の前提は、「ホルムズ海峡を通じた石油輸送は2026年7~9月に再開される」「紛争前の輸送量に戻るには数か月かかる」というものだ。

同見通しの具体的な予想数字をみると、OPECの原油生産は7月の1,578万バレル/日を底に8月以降、緩やかな増加に転ずるが、2025年の生産水準である2,400万バレル台に回復するのは2027年2月になる。

結果として、世界の原油供給不足幅は5月601万バレル/日、6月735万バレル/日から、7~9月には759万バレル/日とさらに拡大し、10~12月になってようやく207万バレル/日と縮小する。

供給超過に転ずるのは2027年以降という予想だ。

今回の米・イラン合意が成立したことで、今後の原油市場の展開は、この短期エネルギー見通しに近いものになる可能性がある。

この予想通りになるとして、IEAの5月レポートで示された4月末時点の世界の原油在庫である79億バレルを起点に、今後の原油在庫を試算すると、6月末75億バレル、9月末68億バレル、12月末66億バレルと減少することになる。

世界全体で65~75億バレルの在庫があると言っても、そのうち2割程度が政府が管理する戦略備蓄だ。

IEA加盟国はイラン戦争前の時点で約18億バレル(政府保有、民間保有の合計)の戦略備蓄を保有していたが、3月11日、IEAは過去最大となる計4億バレルの緊急備蓄放出を決定した。

このほかに、石油生産者や精製業者、トレーダー、流通業者などが事業活動の一環として保有する商業在庫があるが、その大半は、パイプラインや貯蔵タンク、輸出ターミナルの稼働などシステムの維持に不可欠なもので、需給の変化に対応した緩衝材にはなりにくい。

米JPモルガンのコモディティ調査責任者、ナターシャ・カネバ氏は、早ければ6月下旬にシステム運用が逼迫する「運用上のストレス水準」に達し、9月にはインフラを正常稼働させるための最低限の稼働レベルである「運用上の最低水準」に達するおそれがあると述べている。

在庫による緩衝材が存在することによって、原油需給が直接、原油価格に影響しないですんできたが、今や余剰在庫がほとんどなくなっている状況で、ちょっとした供給ショックが原油価格を大きく押し上げる要因になる可能性がある。

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続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
2026/6/15の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。

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