3月以降の原油高で日米欧の景気指標はどう変化したのか?

イラン側がホルムズ海峡の自由な通航を認めるかどうかは不透明
トランプ大統領は4月1日の国民向けの演説で、今後の軍事作戦の期間を「2~3週間」としたうえで、「ホルムズ海峡は紛争が終われば自然に開く」とし、海峡はイラン攻撃に非協力的な欧州諸国や中東にエネルギーを依存している日本、韓国などアジア諸国が自分で管理すべきと述べた。
トランプ大統領としては、イラン問題から早く手を引きたいというのが本音で、その後の戦後処理の交渉を欧州や日本などに任せようとしているようにみえる。
一方、ホルムズ海峡の通航を事実上、管理しているイラン革命防衛隊は、原油1バレルにつき1ドル程度の通航料(原油積載量200万バレルの大型タンカーの場合、通航料は200万ドル)を徴収して、一部、インド、パキスタン、中国など友好国のタンカーの通航を認めているという実態もある。
イランは、停戦の前提条件として、
(1)イスラエルによる攻撃と暗殺の完全停止、
(2)再度戦争を強いられない保障(再発防止の明確な仕組み)、
(3)損害賠償の支払い、
(4)ホルムズ海峡における主権の承認と行使、
(5)イランに対する全制裁の解除、
という5つの条件を提示したとされる。
もちろん、米国やイランはこうした条件に応ずるわけにはいかない。また、戦後処理の交渉を任せられた感のある欧州や日本などにしても、国際法上、自由な通航が認められるべきホルムズ海峡に対して、イランが通航料を徴収することを許容することはできない。
日欧先進国は経済制裁をちらつかせることで、イランに対して圧力をかけようとしているが、それだけで効果があるとは思えない。早期のホルムズ海峡の封鎖解除を優先したい日欧先進国としては、事実上の損害賠償として、ある程度の期間、イランに通航料徴収を認めることもありそうだ。
仮に、多少の通航料が徴収されるだけで、以前のように完全に自由な通航が認められれば、原油需給がひっ迫することはなく、原油価格の上昇幅も通航料に見合うだけの比較的小幅なものになるだろう。
だが、ホルムズ海峡を通過する石油は1日当たり約2,000万バレルで、世界の石油消費量の2割に相当する大きさだ。しかも、湾岸諸国の石油関連施設の一部は破壊され、復旧には時間がかかりそうだ。
仮に、イラン革命防衛隊が、裁量的に敵対国の通航を制限するようなことがあれば、需給ひっ迫状況は続き、それが原油価格を押し上げる。
原油価格の先行きは依然としてイランがホルムズ海峡に対してどういう姿勢を示すかに左右される。
米国の雇用状況の弱さに変化はないが、原油高に対する米国経済の耐性は強い
そうしたなか、原油価格上昇後の3月以降の各国経済指標が発表され始め、原油高の影響が少しずつ判明している。
まず、米国では、4月3日に3月の雇用統計が発表された。非農業雇用者数は前月比17.8万人増加(2月は13.3万人減)し、また、失業率が4.3%(2月は4.4%)に増加するなど、予想以上の堅調さとなった。
ただ、3月の雇用増加は、医療従事者のストライキと悪天候の影響で13.3万人の雇用減となった2月(9.2万人減少から下方修正)の反動という側面もある。
雇用の前年比増加率は0.2%増(2月は前年比横ばい)と、リセッション突入の閾値とされる「1%ライン」を下回った状態が続いている。
また、雇用増加17.8万人中、業種別にみると、ヘルスケアが9.0万人増で、この雇用増加は必ずしも景気の強さを示すものではない。
一方、失業率の低下は、非労働力人口の増加(労働力人口の減少)によるところが大きい。昨年7月頃まで増加していた非労働力人口は、10月頃まで増加が頭打ちとなっていたが、11月以降は再び増加し始めた。非労働力人口の増加はトランプ政権の移民政策厳格化の影響によるものとみられる。
このように、米国では、もともとの雇用情勢の弱さが変わったわけではないが、米国がエネルギーを自給できていることもあってか、3月以降の原油高が米国の雇用を悪化させているわけでもない。
そうした点で、原油高に対する米国経済の耐性は強いと言っていいだろう。
ただ、雇用が予想外の増加を示したのに対して、注目度はさほど高くなかったが、同じ4月3日に発表された、3月のS&Pグローバルのサービス業PMIは49.8と3年ぶりに活動縮小を示す50割れとなった。
ガソリン価格の上昇が国内のサービス業の景況感を一部悪化させている様子が窺われ、ガソリン価格高騰が続けば、こうした悪影響が広がっていくおそれがある。
株価下落が好調だった高所得者層の消費を減退させ、ガソリン高が中低所得者層の消費を落ち込ませる、という形で、今後、米国景気が悪くなっていく可能性もあるだろう。
日銀短観は今回のイラン問題を十分織り込んでいないとみられるが、物価に関する企業の回答はインフレ加速を示唆
日本では4月1日に3月調査日銀短観が発表された。
それによれば、大企業・製造業の業況判断DI(良いと考える企業の割合マイナス悪いと考える企業の割合)は昨年12月のプラス16から今年3月はプラス17と上昇した。
大企業・非製造業の業況判断DIも昨年12月のプラス36のあと、今年3月もプラス36と高水準のまま横ばいだった。先行きを示す同DIが製造業でプラス14で3ポイント低下、非製造業がプラス29で同7ポイント低下といずれも低下を示した。
だが、先行きDIが低下するというのは通例のことだ。実際、前回昨年12月短観でも先行きDIは製造業が1ポイント低下、非製造業が5ポイント低下となっていた。
こうした点からみると、企業側の回答時期がちょうど原油価格上昇の時期と重なったため、今回の短観はイラン問題を十分に織り込んだ回答になっていない可能性がある。
ただ、3月以降の原油高の影響などが十分に織り込まれていないにしては、物価に関する企業の回答はインフレ加速を示唆するものになっている。
すなわち、企業の価格設定行動が積極化し、物価見通しも上向いていることが、今回の短観から窺われる。
例えば、川下の消費者に近い非製造業の価格判断DIをみると、大企業・非造業の仕入れ価格判断DI(上昇マイナス下落)は昨年12月のプラス42から今回3月はプラス46に上昇、先行きはプラス53に跳ね上がっている。
そして、同販売価格判断DIは昨年12月プラス31→今回3月プラス32→先行きプラス40と先行き販売価格が急上昇する見通しが示されている。
そして、最終的な物価見通しである、企業の物価見通し(1年後)は、全規模・全産業で、昨年12月の2.8%から今回3月は3.1%へ上昇、物価全般の見通しについても昨年12月の2.4%から今回3月は2.6%へと上昇した。
仮に、今回の短観には今回のイラン問題が十分に織り込まれていないとすると、それ以前に物価上昇テンポが加速し始めていたことが示されていたことになる。
もともとインフレが加速しようとするなかで、イラン問題に端を発する今回の原油高が起きたのだとすれば、日銀としては、景気悪化よりも物価上昇に対して、より注意を払わなけれなければならない。
4月27~28日の日銀政策決定会合での利上げ確率(4月3日時点)は67%程度とかなり高くなっている。
日銀は、原油高、さらには先行きのエネルギー枯渇による景気悪化に目をつぶって、利上げに踏み切る必要があるかもしれない。
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続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
2026/4/6の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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