公開日 2026年10月28日

フランスの暴動 影には国債問題 飛び火する先は

フランスの10年国債利回りが24年ぶりに5%を超え、イタリアを上回りました。同時に、高校生の抗議から始まったデモは全国55万人規模に広がり、放火や略奪を伴う暴動に発展しています。両者に共通する原因は「政治が決められない」ことです。国債問題と社会不安の関係、日本との違い、そして米国へ飛び火する可能性を整理します。
フランスの暴動 影には国債問題 飛び火する先はのアイキャッチ画像

フランスがマズイ

フランスでは国債が売られて利回りが急上昇し、時を同じくしてデモ、暴動、略奪事件が起きています。
・ 何が起きているのか
・ なぜ起きているのか
・ 政府の対策
・ 他国に飛び火するのか
・ 世界の問題の原点
を見ていきます。

何が起きているのか

報道からは見えにくいことですが、国債の下落の根底には「政治の機能不全」があり、デモ、暴動、略奪事件も同じ根から生まれています。
日本も米国も、国債が売られる構造的な原因はフランスと共通しています。

フランス国債市場(10月23日時点)

・10年国債利回り
フランスの10年国債利回りは10月21日に5%を超え、23日には5.05%と2002年7月以来、約24年ぶりの高さになりました。

10年フランス国債利回り

利回りが高いほど国債の信用度が低いといってもよいでしょう。
10月2日は4.90%、16日は4.79%でしたが、週末の暴動を経て再び上昇しています。

ドイツとの利回り差(スプレッド)は10月2日に約147bp(1.47%)まで広がり、さらに22日には約175bp(1.75%)に達しました。
ユーロ危機の2011〜2012年以来の水準です。

・他国との逆転
フランスの利回りは、イタリアを約0.45%上回り、ギリシャやスペインも上回りました。
債務残高の対GDP比はフランスが約119%、イタリアは130%台とイタリアの方が高いのに、市場はフランスのほうを危険と見ている可能性が高いです。

デモ・暴動・略奪

発端は9月21日、パリ郊外クレテイユの高校での抗議でした。
教員不足、1クラス30人を超える過密学級、老朽化した校舎、猛暑の教室などへの不満から高校生が学校を封鎖し、10月初めには全国1,000校以上に広がりました。
政府は情報機関の分析として、極左政党「不服従のフランス(LFI)」とその周辺が組織に関わったと主張しています。

フランスでは毎週のようにデモがあり、これだけなら日常の風景ですが、そこに大学生、労働組合、さらに2018年の「黄色いベスト運動」の呼びかけが加わり、デモは一気に加速しました。
不満は生活費や燃料価格の上昇、公共サービスの劣化へと広がり、「マクロンは去れ」というスローガンも掲げられています。

リモージュでは19世紀に建てられた市庁舎が放火され、ほぼ焼失しました。
パリでは車が燃やされ、ディオールやセリーヌなど高級ブランド店が略奪されました。
百貨店ギャラリー・ラファイエットは全国約50店のほぼすべてが被害を受け、スーパーのカルフールも約50店が損壊、うち約20店が略奪されました。

マクロン大統領は「極左の反乱分子に多数の犯罪者が加わった」暴力だと非難し、略奪者には損害を償わせると処罰を明言しました。

なぜ起きているのか

ここからは私の見方です。

国債の下落が暴動を直接引き起こしたわけではありません。
時系列で見ると、学校での抗議は9月に始まっており、むしろ10月17日の暴動の後に国債利回りが5%を超えています。
社会不安が国債売りを加速させた面もあるということです。

それでも両者は同じ板挟みから生まれています。
財政を立て直そうと緊縮すれば街頭で反発が起き、緊縮しなければ市場が国債を売り、国債はさらに下落します。(国債利回り上昇)
市場が国債を売っている理由は、赤字の大きさそのものより「政治が決められない」ことです。

2027年春のフランス大統領選挙に向けて、世論調査では極右・国民連合のルペン氏が先行しています。
左派のメランション氏は、「中央銀行(フランス銀行)が保有する約18%のフランス国債を帳消しにする案」を打ち出しています。

どちらが勝っても財政再建は進みにくい、と市場は見ています。

政府の対応

フランス政府は2027年予算で、歳出削減と増税を合わせて540億ユーロの財政再建策を出しています。

それでも財政赤字はGDP比5.4%(2026年見込み)から5.0%に下がるだけで、EUの基準である3%には遠く及びません。
債務残高は2026年4〜6月期にGDP比119%に達し、今後も増え続ける見通しです。
予算案の議会審議は難航しています。

・ECB(欧州中央銀行)のサポートは難しい?
ECBには利回りの急上昇を抑える仕組み(TPI)がありますが、発動には財政規律を守っていることが条件になります。
フランスは2024年からEUの過剰赤字手続きの対象になっているため、ECBの支援はすぐには使いにくいと指摘されています。

他国に飛び火するのか

国債利回り上昇、デモ、暴動、略奪が他国に飛び火することが懸念されています。

日本に飛び火するか?

フランスはユーロ圏の一員なので、自国の中央銀行の判断だけで自国の国債を買い支えることができません。
日本は円を自分で発行できます。
この違いがあるので「フランスの次は日本」という形の国債危機にはなりにくいです。

ただし、自国通貨を発行できる国では、圧力は国債の暴落ではなく通貨安とインフレという形で現れます。
日本の長期金利も約30年ぶりの水準にあり、「政治の機能不全が金利や為替に表れる」という構図は、日本にとっても他人事ではありません。

飛び火する材料

私が一番懸念しているのは、左派のメランション氏が「中央銀行が持つ約18%のフランス国債を帳消しにする案」を打ち出していることです。

このフランス国債はユーロ圏の中央銀行の共同の判断で買い入れたもので、EU条約は中央銀行による政府への直接の資金供給を禁じています。
ラガルドECB総裁も以前から「考えられない」と否定しており、フランス単独での実行はユーロ離脱に等しいとの指摘もあります。
実現のハードルは非常に高いのです。

それでも、主要国の有力候補がこうした主張をし、それが支持を集めること自体が問題です。
フランスの大規模デモの影響は他国に一部飛び火していますが、政府が国債の一部を「棒引き」するという提案が米国に飛び火する可能性があります。

米国への飛び火

国債問題を一番気にしているのは米国だと思います。
現在、通常の対策では問題解決できないので「国債の一部を棒引きしたり」「国債の契約の変更」を実行する可能性があります。

米国が「国債の償還期限の延長」などと言い出しそうです。
米国に飛び火すれば、世界に飛び火します。

世界の問題の原点「世界の債務は過去最大」

国際金融協会(IIF)によると、世界の債務(政府・企業・家計・金融機関の合計)は2026年上半期に約10兆ドル増え、過去最大の365兆ドル(約5.7京円)に達しました。
先進国の多くは国債を発行して(借金をして)ばらまき、経済を拡大してきました。
株価の上昇もその結果です。
そのために多くの先進国で、通貨価値の下落(インフレ)と国債の下落(金利上昇)が顕著になっています。

利上げをすれば国債の利払いが増えて財政が悪化し、
利下げをすればインフレが加速して国民の不満が増える。
その板挟みの結果が、最初にフランスに現れたということです。

最後に

世界は大きな転換点に向かっていると判断しているので世界情勢と全ての相場を一緒に見ながら対処していきましょう。

参考出典
・ ideal-investisseur「OAT / Bund spread」
・ Trading Economics「France 10-Year Government Bond Yield」
・ Euronews「Europe's debt map flips: France pays more than Italy」(2026年10月15日)
・ Euronews「France's sovereign debt crisis explained」(2026年10月6日)
・ Apollo「French spreads, the ECB and the outlook for Europe」(2026年10月8日)
・ Wikipedia「2026 French student protests」
・ CBS News「French police arrest more than 1,800 people after violent protests」
・ ABC News(AP)「How France's worst rioting in years erupted」
・ Al Jazeera「Tear gas and unrest as hundreds of thousands protest」(2026年10月17日)
・ Forbes「Louis Vuitton, Dior And Hermès Stores Damaged As French Protests Escalate」
・ Public Sénat「Dette publique : la piste d'une annulation partielle」(2026年8月25日)
・ Vote-Scope「France 2027 Presidential Polls」
・ Forbes JAPAN「世界債務約5京7670兆円」(2026年10月14日)
・ 日本経済新聞「長期金利一時2.93%、30年ぶり高水準」

最新の記事をお届けします

Real Intelligence無料メルマガ

無料メルマガ登録

各講師のオンラインサロンや有料サービスもございます。詳しくは商品一覧ページをご確認ください。

プロフィール

松島修のプロフィール画像

松島修

エフピーネット代表取締役

エフピーネット株式会社 代表取締役 投資助言・代理業 関東財務局長(金商)第1898号、インベストメントアドバイザー、経済コンサルタント、ベストセラー作家

会員サービスに登録して
より有益な情報を手に入れよう

富を拡大するため一流で正統派の金融リテラシー・実践的情報を
元チーフディーラー集団からお届けします

会員サービス紹介
運営会社情報
エフピーネット株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第1898号
金融商品取引業の種別:投資助言・代理業
加入協会:一般社団法人資産運用業協会
よくあるご質問お問い合わせ
Copyright © FPnet Co., Ltd. All rights reserved.