公開日 2026年9月23日

「新興国は高成長」を信じるな  経済成長しても株で儲かるとは限らない

新興国投資が儲かると単純化するのは危険です。平和な時代の古い常識だからです。 激動の時代、先進国が不安定になると破綻する新興国さえあります。
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投資常識はすでに大きく変わっている

 今、投資常識が大きく変わっています。
一番象徴的なのはゴールドがS&P500より大きく上昇したことです。(2001年起点)
今回は「投資常識の間違い」シリーズ第3段です。
古い常識に惑わされないようにご注意ください。

 常識を疑う

「新興国は経済成長率が高いので新興国株は高いリターンが期待できる」
という理由で、新興国投資を勧められることがあります。

高い経済成長力と
内需拡大人口増加や
就労人口(働き手)の増加
中間層の台頭により
先進国を上回る経済活動や市場の拡大が期待できるからです。

確かに、人口推移を見ると新興国は将来性が高く見えるので投資先に相応しいように思えます。

新興国 平均年齢が若い 就労者が多い
先進国 世界的に少子高齢化が進んでいる

人口動態

実際に政府や専門家が、その国の長期的な成長で重要な要素として人口動態を重視します。
経済の先行きを示す指標で、一番確実で分かりやすいのが人口動態だからです。

たとえば、日本の年齢別の人口から労働年齢人口(世界的には15歳~64歳が一般的)を2010年と2030年で比べてることで、将来の労働力や経済成長力を考える材料にします」*1

2010年 日本の人口構成

2030年 日本の人口構成

人口で国の発展を判断するのは合理的で、ブレが少ないです。
日本の場合2030年の労働人口が少ないので経済は停滞するということになります。
この考え方は、ある面、正しいといえます。

日本でも人手不足を背景に、外国人労働者の受け入れが拡大してきました。 

しかし、物事には副作用があり、
移民を増やす場合、社会保障などの面を無視してしまうと大きく結果が変わってきます。 

一つの要素でしかない

人口動態で成長を判断する一つの要素でしかありません。
新興国が高度成長するかは、たった一つの要素
「平和な時代」か「激動の時代」かだけでも結果が全く違ってきます。

巨大な投資資金がどこに向かうかで
発展するか
衰退するか
が変わってくるからです。

巨大な投資資金

世界には巨大な投資資金があります。
巨大な投資資金が向かうところが繁栄し
巨大な投資資金が抜けるところが衰退します。

詳しくは次の記事をお読みください。 

平和な時代と激動の時代は違う

「平和な時代」と「激動の時代」は常識が違うことを認識することが大事です。

平和な時代 新興国は順調に成長 巨大な投資資金が流れ込む
激動の時代 新興国から巨大な投資資金が逃げ出すことが多い

IMFも、海外からの資本流入には投資・生産性向上などのメリットがある一方、急激な資金流出は通貨下落や資金調達コスト上昇、金融ストレスを引き起こす可能性を指摘しています。*2
特に新興国への資金は、世界的なリスク選好の変化に敏感です。

アジア危機の時にITバブル

1997年アジアの通貨危機が始まり、アジアに大不況がきました。
タイ、インドネシア、韓国は深刻な経済危機と外貨不足に陥り、IMF(国際通貨基金)などの支援(管理)を受けました。
1998年8月、ロシアはロシアは国内国債のデフォルト(債務不履行)に陥りました。
IMFも1998年8月のロシアの債務デフォルトを確認しています。*3

この時、私はアジアから巨大な投資資金が抜け、米国のIT関連株に向かったとみています。
アジア危機は、巨大な投資資金の向かう先を新興国から先進国へと転換させるきっかけになったという判断です。
実際にアジア危機の影響を受けた5カ国では、民間資本フローが
1996年 930億ドル流入
から
1997年 120億ドル流出

へ急変しました。*4

一般的な考え方は補足を参照ください。

アジア各国がダメージを受けて不況に陥った時に、米国ではITバブルで盛り上がっていたのです。

 先進国が風邪をひくと後進国が肺炎になる

かつては、
米国が風邪をひくと(景気が少し悪くなると)
日本が肺炎になる(大不況になる)と言われていました。

先進国が風邪をひくと後進国のお金が引き上げられるので
新興国は肺炎になることもあります。
先進国が不安定になる時、後進国はもっと不安定になりやすいということです。

2026年4月のIMFは、世界的な金融ストレスの局面で、特に債務が多い、外貨準備が少ない、制度面が弱いなどの脆弱性を抱える新興国では資本流出や通貨下落が増幅される可能性を指摘しています。*4

今後、金融危機がくると、深刻なダメージになる新興国があること推測されます。
新興国すべてが危険なのではありません。
外貨準備、債務、財政、金融システムなどが弱い国ほど、世界的な金融ショックの影響を受けやすいです。

一方で世界の先進国が大変な時、自給自足がメインの国は安泰ということもあります。

国の発展の要素

結局、国が発展するかどうかは次のような要素で決まるので安易に新興国だから発展すると判断はできないと思います。

 国の発展の要素

平和の時代か激動の時代か
人口動態
金融システム

政治・政策・制度 国が明確なビジョンを持っているか
財政

債務
外貨準備
無駄使いしていないか
汚職が少ないか
搾取が少ないか
重税かどうか
貿易
産業構造
文化
国民の民度・幸福度
国民一人ひとりが自分の役割を果たしているか

世界から流入する資金量

インドやアフリカ

インドやアフリカは、これから伸びるとされ投資を推奨されることがあります。
前項の発展の要素を吟味すると良いでしょう。

投資で一番大事なのはタイミングです。
インドの株価(総合指数:SENSEX)は2025年12月に史上最高値(86,159ポイント)をつけましたが、2026年に入り下落基調が続き、2026年9月時点で高値から約14%下落しています。

このまま反発するのか、それとも本格的な下落トレンドに入るのかは今後の世界情勢の展開次第であり、現時点で断定はできません。
インド経済が成長することと、今インド株を買えば儲かることは別問題です。

インド総合指数BSE SENSEX 月足

どうする

「売れ残った投資商品」を売るために古い常識で説明されることも多いです。
販売員に悪気は無くても、販売員に古い常識しかないことも十分考えられます。
大事なことは正しい情報と自分の頭で考えることです。
・常識が今の時代に通用するのか
・勧められるものを鵜呑みにしない

 投資常識の間違いシリーズ

投資常識の間違い①

 投資常識の間違い②

補足

 ITバブルの主因については、経済学ではやや異なる見方が主流です。
FRBはアジア危機・ロシアのデフォルト・LTCM(大手ヘッジファンド)の破綻危機が連鎖することを警戒し、1998年秋に3回連続で利下げを行いました。
この緊急利下げによって生まれた過剰流動性が、当時のベンチャー投資やIT関連株のIPOブームと結びつき、ITバブルを膨らませた面が大きいという指摘です。

つまり「アジアの資金が直接米国ITに流入した」というより「危機対応の金融緩和がバブルを助長した」というのが、より多くの経済学者が支持する説明です。

いずれにせよ、激動の時代に巨大な投資資金が新興国から離れ、先進国に向かいやすいという構造自体は変わりません。

■参考出典(事実確認)

*1 国内人口推移が、2030年の「働く」にどのような影響を及ぼすか
*2 世界の金融市場は中東戦争とそれに伴うリスク拡大に直面 IMF
*3 ロシアの復活 IMF
*4 IMF

 Asian Financial Crisis | Federal Reserve History
The Late 1990s Dot-Com Bubble Implodes in 2000 | Goldman Sachs
Gold Price | Trading Economics
BSE SENSEX Stock Market Index | Trading Economics
S&P 500 Returns since 2001 | officialdata.org
日本の将来推計人口(平成24年1月推計)| 国立社会保障・人口問題研究所

 

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松島修

エフピーネット代表取締役

エフピーネット株式会社 代表取締役 投資助言・代理業 関東財務局長(金商)第1898号、インベストメントアドバイザー、経済コンサルタント、ベストセラー作家

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