公開日 2026年8月31日

米国のインフレは輸入インフレではなく、ホームメイドインフレ

米国のインフレは、原油高などによる輸入インフレではありません。GDPデフレーターの上昇が示す「ホームメイドインフレ」から、FRBの利上げの必要性が見えてきます。
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名目GDPと実質GDPの動きが大きく乖離している

4~6月の米国の実質GDP成長率は前期比年率1.5%となり、1~3月の同2.1%から伸びが鈍化した。実質GDPを需要項目別にみると、個人消費は前期比年率3.4%増と前期(同0.5%増)に比べ伸びが加速した。

一方、以下の要因などが実質GDPの伸びを鈍化させた。

  1. (1)1~3月まで急速に増加していた「コンピューター及び周辺設備」の設備投資(狭義のAI関連投資とみられる)が、
    前期比年率8.4%減と頭打ちになり、設備投資全体でみても同8.5%増と前期(同10.6%増)に比べ伸びが鈍ったこと、

  2. (2)政府支出が同1.0%減と前期(同4.4%増)から減少に転じたこと、

  3. (3)在庫投資の減少幅が拡大したこと、

  4. (4)輸入の大幅増加で純輸出が減少したこと、

GDPから在庫投資と純輸出を差し引いた実質国内最終需要は前期比年率3.3%増と、1~3月(同2.2%増)に比べ、伸びは逆に加速した。

在庫投資の減少は今後の生産を増加させる要因になることや輸入増加は国内需要の堅調さを示すこと、などからすると、4~6月の実質GDP成長率の鈍化は、景気減速を示す指標とは言いにくい。

一方、通常は話題に上ることは少ないが、4~6月の名目GDP成長率は前期比年率8.0%増と、極めて高い成長になった。

名目GDPを需要項目別にみると、値上がりしたガソリンが購入されたほか、自動車など耐久消費財の購入も増加し、名目個人消費は前期比年率8.9%増と高い伸びとなった。

また、名目設備投資については、実質GDPの足を引っ張った「コンピューター及び周辺設備」の名目設備投資が同18.3%増と増加傾向を維持し、設備投資全体では同12.4%増と前期(同12.1%増)の伸びをわずかに上回る2桁増となった。

さらに、名目政府支出は前期比年率9.7%増と1~3月(同5.6%増)を上回る伸びとなり、実質政府支出が減少したのとは対照的な動きとなった。

在庫投資の減少幅拡大や輸入の大幅増加がGDPの足を引っ張ったのは、実質GDP、名目GDPのどちらも同じだ。

名目GDPから名目在庫投資と名目純輸出を差し引いた名目国内最終需要は前期比年率9.3%増と、1~3月(同5.8%増)から伸びは一段と加速し、2桁に迫る伸びとなった。

GDPデフレーターの大幅上昇は米国のホームメイドインフレを示唆

実質GDPと名目GDPの動きに、このような大きな乖離が生じているのは、物価に相当するデフレーターが上昇しているためだ。

GDPデフレーター(名目GDP÷実質GDP)は4~6月に前期比年率6.4%上昇と1~3月(同3.6%上昇)に比べ伸びが加速した。

コロナショックによる供給制約に加え、ロシアのウクライナ侵攻による原油高でインフレが加速した、2022年4~6月(同9.4%上昇)以来の大幅な上昇になった。

需要項目別のデフレーターの内訳をみてみよう。

まず、FRBが物価目標の指標として注目する個人消費支出デフレーターは、昨年10~12月に前期比年率2.9%上昇とすでに目標の2%を上回る上昇だったが、3月以降のガソリン高により、1~3月に同4.6%上昇、4~6月に同5.3%上昇と、伸び率は加速し続いている。

また、設備投資デフレーターは1~3月に前期比年率1.3%上昇したあと、4~6月に同3.6%上昇した。

うち、AI投資に関連する「機器」のデフレーターは昨年10~12月に前期比年率3.4%上昇したあと、1~3月に同4.2%上昇、4~6月5.2%上昇と、上昇テンポが徐々に加速している。

さらに、政府支出デフレーターは1~3月に前期比年率1.1%上昇と低水準な伸びだったが、4~6月は「国家防衛」や「州・地方自治体」を中心に同10.8%上昇した。

「州・地方自治体」のデフレーター上昇は、人手不足による地方政府職員の給与増加や医療保険給付の増加によるものとみられる。

デフレーターは物価指標の一つであり、それが上昇していることは、言うまでもなく、物価が上昇していることを示す。

消費デフレーターの上昇は消費財・サービスの物価上昇、設備投資デフレーターの上昇は投資財の物価上昇を表し、広範囲に財・サービス価格の上昇が進んでいることを示す。

一方、GDPは付加価値であり、産出から投入を差し引いたものであり、また、GDP=消費+投資+政府支出+(輸出―輸入)であるため、輸入は控除項目になる。

同じ物価指標でも、消費者物価は原材料品(投入品)や輸入品の上昇によるものであっても物価上昇の要因になるが、GDPデフレータ―の場合、原材料や輸入品の価格が上昇してもGDPデフレーターを上昇させることはない。

そのため、GDPデフレーターは輸入インフレなど、外部的な要因によるインフレではなく、ホームメードインフレ(内生インフレ)の指標とされる。

・・・

ここまでみてきたように、現在の米国では、実質GDPの伸びが鈍化する一方で、物価上昇はむしろ加速しています。

では、このホームメイドインフレは、現在の企業利益にどのような影響を与えているのでしょうか。そして、FRBはこのインフレをどのように捉え、9月のFOMCでどのような判断を下すのでしょうか。

続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
本記事は、2026/8/31の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。

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