公開日 2026年8月24日

米国の財政赤字問題が注目され始めた

米国の財政赤字問題が、いよいよ市場の注目を集め始めています。金利上昇と財政悪化の悪循環は、ドル相場をも動揺させる可能性があります。
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日本の財政問題が米国に伝染か?

日本の財政悪化問題が米国に伝染し始めた。7月31日、為替市場で日米協調介入が実施された。

8月4日の日本経済新聞によるベッセント米財務長官へのインタビュー(8月6日朝刊掲載)によれば、米国が協調介入に踏み切った理由について、同氏は「アジア通貨危機への波及懸念」だったと述べている。

同氏は「アベノミクスの時代は終わった」と述べ、高市政権がインフレ下でも依然として拡張的な財政政策を続けていることに懸念を示した。

米国が協調介入に踏み切ったのは、日本の財政問題を発端とした世界的金融危機を回避するためであり、日本が財政政策を見直すことを暗に期待して協調介入実施に踏み切ったとも言っていい。

ところが、投資家は、日本と同じく、米国の財政状況も相当悪い点に注目し始めた。

協調介入によって収まると思っていた、財政問題を発端とする金融市場の動揺が、米国自身に降りかかってきたのは、ベッセント財務長官にとって大きな誤算だったに違いない。

米10年国債利回りは4.7%台に上昇し、また、30年国債利回りも、一気に5.3%台へと、2007年6月以来の水準に上昇した。

リーマンショック以降の米国経済の停滞とFRBの量的金融緩和により低下していた米長期金利は、今やリーマンショック以前の水準に戻った。

国債利回りを予想短期金利とタームプレミアム(投資家が長期投資に際して、価格変動のリスクに対応して求めるプレミアム部分)に分解すると(ニューヨーク連銀の試算)、8月21日時点の10年国債利回り4.7%に対して、予想短期金利が3.9%、タームプレミアムが0.8%という内訳になっている。

タームプレミアムは、FRBの量的金融緩和停止や財政への懸念などにより上昇しつつあるが、リーマンショック以前の水準(2000~08年の平均値が1.4%)に比べるとなお低水準であり、一段と上昇する可能性がある(図1参照)。

国債利回りの高騰を受け、ベッセント財務長官は、8月19日に、通常、四半期定例入札の場で示される1回あたりの国債買い入れ消却(バイバック)を、20億ドルから40億ドルへと倍増することを発表した。

この発表で、この日、米国債利回りは一時、4.6%台に低下したが、翌日には、もう利回りは反転上昇し、4.7%台に戻った。

日本の財政悪化懸念が解消されない限り、日本の国債利回りの上昇は続くだろう。

米国でも、ここまでAIブームの陰に隠れていた財政赤字問題に投資家が注目し始めたようだ。

こうなってくると、小手先の弥縫策では、米国債利回りの上昇は止められない。

米国では利払い費の動向が財政赤字全体に影響しやすくなっている

では、米国の財政は本当に危ない状況なのか?

実は、今、最も大きな問題は、財政赤字が金利の影響を受けやすくなっているという点だ。

前述した通り、米債券市場は米国の財政赤字問題に着目して、債券売りに走り、債券利回りは上昇しており、財政悪化が金利を上昇させている。

反面、米国の政府債務残高累増によって、国債利回りの上昇が国債利払い費を増加させるという形で、金利上昇が財政赤字を拡大させやすい構造になっている。

この結果、いったん金利が上昇し始めると、金利上昇が財政赤字を拡大させ、その財政赤字拡大が金利を一段と上昇させる、という悪循環に陥ることになる。

ここまでの米国の財政赤字動向を振り返っておこう。

米国の財政収支(対GDP比)は、2000年代初めには黒字に転換する局面があったが、リーマンショック、コロナショックという、2つの大きな経済ショックに対応した財政支出急拡大により、2009年度にマイナス9.8%、2020年度にマイナス14.7%と赤字幅が膨れ上がった。

その結果、2007年度まで30%台で推移していた政府債務残高(対GDP比)は、2012年度には70%に乗せ、2020年度には98%台に上昇した。

2025年度の財政赤字(対GDP比)は6.1%とコロナショック時に比べると縮小したが、赤字比率が4%未満にとどまっていた、リーマンショック以前に比べると高水準な赤字になっている。

いったん、膨れ上がった赤字を削減することが、いかに難しいかを物語っている。

そして、今年2月に発表されたCBO(Congressional Budget Office、米議会予算局)の予算・経済見通しによれば、財政赤字の対GDP比は今後10年間、緩やかに拡大傾向を続け、2036年度には6.7%になるという予想だ。

その結果、政府債務残高の対GDP比は、直近2025年度の99.4%から、2030年度には107.7%へと上昇が続き、第二次世界大戦後のピーク(1946年度の106.1%)を上回ることになる。

「政府債務残高の対GDP比」という指標からみた場合、米国の財政の悪化は続く見通しだが、CBOの見通しは必ずしも拡張的な財政政策を前提としているわけではない。

CBOの見通しによれば、歳出のうち、国防費など裁量的支出(対GDP比)は2026年度の5.9%から36年度には4.8%へ削減されることになっている。

これに対して、社会保障費などの義務的支出は、高齢化の進展などにより、2026年度の14.2%から36年度には15.0%へと増えていく。

また、財政赤字が続くことで政府債務残高が累増していくため、利払い費も増加し、2026年度の3.3%から36年度には4.6%に高まる。

つまり、このCBOの見通しは、社会保障費などの義務的支出の自然増のなか、裁量的支出を極力削減することで、プライマリーバランス(利払い費を除く財政収支、対GDP比)の赤字幅を2026年度の2.6%から36年度に2.1%へと、いくらかは、削減しようというものになっている。

ところが、利払い費の増加(26年度3.3%→36年度4.6%)が、プライマリーバランスの赤字削減幅を上回り、財政赤字全体としては、2026年度の5.8%から36年度には6.7%と赤字幅は拡大する。

利払い費の動向が財政赤字拡大の主因になっているというわけだ。

ちなみに、CBOの見通しは、2036年度にかけてFF金利は3.3%に低下し、米10年国債利回りは2036年度にかけて4.4%程度で推移するという前提で、利払い費などの計算を行っている。

だが、FF金利は現在の3.625%から来年にかけ4%台への利上げが予想されており、10年国債利回りはすでに4.7%台に上昇している。

図2は、利払い費以外の歳出、歳入などの前提条件がCBOの見通しと同じであるとしたうえで、国債利回りがCBO予想の前提となっている4.4%から現状に合わせた4.7%程度に上方修正されるとして、財政赤字(利払い費)や政府債務残高を改めて試算したものだ。

それによれば、2036年度の利払い費の対GDP比は、CBO予想の4.6%から5.4%へと上方修正になる。

同財政赤字の対GDP比はCBO予想の6.7%から7.5%に上方修正される。

そして、同政府債務残高の対GDP比はCBO予想の120%から128%に上方修正されることになる。

財政状況は、前提となる金利水準が少し上昇するだけでも、かなり悪化する計算だ。

過去二度のショックに対応した財政支出で政府債務残高が膨れ上がっている。

・・・

では、米国の財政赤字がさらに拡大した場合、国債市場やドル相場にはどのような影響が及ぶのでしょうか。後半では、財政赤字と貿易赤字という「双子の赤字」に注目し、今後のドル相場について考えます。

続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
本記事は、2026/8/24の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。

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