公開日 2026年8月17日

日本の財政悪化が金利高、円安につながっているのはなぜか?

なぜ日本の金利が上昇しているのに、円安が止まらないのか。財政悪化懸念との関係を理論から考える。
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日本の財政悪化懸念はなぜ日本の金利上昇と円安につながっているのか?

日本の財政悪化懸念は国債利回りなど長期金利を中心に日本の金利を上昇させている。反面、同じ財政悪化懸念は為替市場では円安要因として受け止められている。

財政悪化懸念は日本の金利上昇要因であり、円安要因ともなっているわけだ。

直感的には、日本の金利が上昇すれば、円は高くなると考えるのが普通だが、今はそうなっていない。

金利上昇で高くなるはずの円が下落し続けているのはなぜか、マクロ経済の理論から考えてみよう。

ここでは、貯蓄投資バランスが貿易収支に一致するという実物市場の理屈、為替相場を金利差などによって説明するという為替市場の理屈、から、金利と為替相場の関係について考えていくことにする。

「貯蓄投資バランスが貿易収支に一致する」という実物市場の理屈

まず、前者の「貯蓄投資バランスが貿易収支に一致する」というのは、以下のような考え方だ。

需要面からみたGDP=消費+投資+政府支出+(輸出―輸入)、
所得面からみたGDP=消費+貯蓄+税収、
であり、需要面からみたGDPと所得面からみたGDPは一致するため、
貯蓄―投資+(税収―政府支出)=輸出―輸入、となり
貯蓄-投資+財政収支=輸出-輸入 …(1)、となる。

そこで、この式の両辺をバランスさせる金利と為替相場の組み合わせを考えてみよう。

金利(ここでの「金利」はすべて実質金利のこと)上昇は左辺の投資を減少させ、左辺を増加させるため、それに見合って右辺を増加させるには、為替相場(ここでの「為替相場」はすべて実質為替相場のこと)を為替相場は下落(円安に)しなければならない。

つまり、金利が上昇する場合、円安でなければならない、というのが実物市場の理屈になる。

図1では、金利を横軸に、為替相場を縦軸(円高は上方向)にして、金利と為替相場の組み合わせをプロットしたものだが、金利高は円安、金利安は円高という右下がりの曲線(IS&TB(1))になる。

さらに、ここで財政収支が悪化したとしよう。

左辺の財政収支が減少するため、そこで両辺をバランスさせるためには、金利を上昇させ投資を減少させて、左辺全体が減少しないようにするか、あるいは、円高にして右辺の純輸出(輸出-輸入)も減少させることで、両辺をバランスさせる必要がある。

つまり、財政収支が悪化した場合、IS&TB曲線は、右上にシフトし、IS&TB(1)は、IS&TB(2)にシフトすることになる。

「為替相場を金利差などで説明する」為替市場の理屈

一方、後者の「為替相場を金利差などで説明する」為替市場の理屈は、内外金利(内外実質金利)の格差などによる内外収益率の差は為替相場によって調整され、結果的に内外収益率の格差は同じになる、という理屈であり、以下のようなものだ。

国内金融市場で資産を運用する場合の収益率は国内金利に相当する。

一方、海外金融市場で資産を運用する場合の収益率は、(海外金利―円相場の予想変化率-リスクプレミアム)となる。

両者が等しくなるように調整されたとすれば、
国内金利=海外金利―円相場の予想変化率―リスクプレミアム、となる。
例えば、国内金利が2%、海外金利が4%、リスクプレミアムがゼロだとすると、
円相場の予想変化率はプラス2%(年率2%の円高)となる。

為替相場の予想変化率を、現在の為替相場と購買力平価などの均衡為替相場との乖離度、つまり実質実効円相場、だとすると、
国内金利―海外金利+リスクプレミアム=実質実効円相場 …(2)となる。

これは、通常、我々が直感的に考える金利と為替相場の関係であり、国内金利が高ければ円高、海外金利が高ければ円安という関係になり、日本の金利と円相場の組み合わせをプロットした図1では、右上がりの曲線(r&EX(1))となる。

ここで、海外経済に何らかの問題が生じ、海外での資金運用に対して国内投資家が不安を持つようになったとしよう。

その際、投資家は海外運用のためのリスクプレミアムを要求するようになるだろう。

例えば、リスクプレミアムがゼロからプラス0.5%へと上昇したとする。その際、(2)式をバランスさせるための国内金利と円相場の組み合わせは、国内金利が2%から1.5%に低下して左辺を同等に保つか、あるいは、円相場が円高になって右辺を上昇させて右辺を増加させるか、である。

つまり、海外運用のリスクプレミアムが高まると、r&EX(1)は、左上にシフトするということになる。

ところが、現在起きていることは、日本の財政に対する懸念という、日本での資金運用に対するリスクプレミアムの高まりだ。

そうなると、r&EX(1)は、逆に、右下にシフトし、r&EX(2)となる。

最終的に、日本の財政赤字拡大とそれに伴う財政不安の高まりが金利と為替相場にどういう影響を及ぼすかについては、図の通りだ。

IS&TB曲線は右上にシフトし、r&EX曲線を右下にシフトするため、日本の金利は上昇する可能性が極めて高く、一方、円相場がどうなるかは、IS&TB曲線とr&EX曲線のシフトの度合いなどによって変わってくる。

ただ、実際に、日本の財政悪化懸念が円安につながっているという現状を考えると、日本の財政問題に対する内外投資家の懸念が相当程度高まっており、そのためのリスクプレミアムの大幅上昇がr&EX曲線を大きく、右下方向にシフトさせている可能性が高い。

・・・

では、なぜ1980年代前半の米国では、財政赤字が拡大しても、現在の日本とは異なる為替の動きがみられたのでしょうか。後半では、その違いを日米の事例から考えます。

続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
本記事は、2026/8/17の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。

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新見未来

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エコノミストとして、シンクタンク、投資顧問会社などで経済分析、資金運用とアセットアロケーション業務に携わる。

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