公開日 2026年8月12日

親イラン組織が生み出すイラン戦争の新局面

ホルムズ海峡の再開に向けた動きの裏で、親イラン組織を巻き込んだ戦闘拡大のリスクが高まっている。
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8月5日付けロイター通信が、イランとオマーンによるホルムズ海峡に関する協議が進展しているとのイラン政府高官の話を報じた。

ロイター通信によると、協議ではホルムズ海峡の新航路が設定され、海峡への入出時はイラン領海を通行することで合意し、船舶の通航管理について詳細を詰めているとされる。

この協議に米国がどのように関与しているかは不明であるが、トランプ大統領は訪問先のラスベガスでインタビューに応えて、「非常にうまくいっていると聞いている」(5日、現地時間)と述べた。

こうしたホルムズ海峡封鎖の解除の話題に原油価格は敏感に反応し、この週の前半は売り圧力で価格は下落した。

しかし、6日、イランが米国とイスラエルの船舶の海峡通航を禁止することを検討していると報じられると、北海ブレント先物は1バレル当たり3ドル以上上昇し、80ドル台を回復して取引を終えた。

このような原油価格の乱高下は、仮にホルムズ海峡の封鎖が解除され、流通が徐々に回復しはじめたとしても起きると考えられる。

それは、第1に、米国とイラン間の交渉ではイランの核開発問題という難題が残されており、同問題で交渉が進展しなければ、交戦と戦闘停止の繰り返しが継続する蓋然性が高いからである。

また、第2に、米国・イスラエルの対イラン攻撃からはじまった現在の戦いが、親イラン組織を巻き込んだ戦闘へと拡大するリスクが高まっているからでもある。

以下では、7月27日にトランプ大統領がイランのエネルギー網やインフラを対象とする大規模攻撃を中止すると発表した経緯を振り返った上で、後者について、親イラン組織のイエメンのフーシ派およびイラクの民兵組織の動向を整理する。

そのことで、イランに交渉での妥協を迫る手段としてのトランプ政権の武力行使のリスクについて検討する。

トランプ大統領に自制を促した湾岸アラブ諸国が抱く脅威

トランプ大統領が7月27日に対イラン攻撃を自制すると表明したことについて、米国メディアは翌28日、同大統領が大統領専用機内で「彼らは攻撃をやめて会談したい」と求めてきたと語ったことを紹介するとともに、防空システム「パトリオット」ミサイルの備蓄減少を考慮して攻撃を延期したと報じた。

これを受け、米国ではメディアや議会がミサイルの備蓄減少について追及を強め、トランプ政権の対イラン軍事作戦の効果に関する議論が高まった。

その後、8月6日の朝にロイター通信がトランプ大統領の攻撃自制の経緯についての新たな情報を流している。

同報道によると、イランのアラグチ外相がサウジアラビア、トルコ、カタールなどの外相、パキスタン軍最高司令官などに連絡をとり、トランプ大統領に攻撃を思いとどまらせるよう促す一方、イランへのいかなる攻撃も湾岸全域の米国資産や重要インフラへの報復を招くと警告した。

また、ロイターは、イラン高官が報復の対象はエネルギー施設、製油所、送電網、水道インフラ、輸送網、油田だと述べたと伝えている。

このイランの警告を受け、サウジアラビアのムハンマド皇太子は、トランプ大統領と電話会談を行い、攻撃の延期、交渉再開、停戦確保を促した。さらに、カタールとオマーンも米国に攻撃回避の働きかけを行っている。

このような外交努力もあり、8月2日、トランプ大統領は迅速に合意をまとめることを条件に、イラン攻撃の中止に同意した。

この出来事は、トランプ政権がイラン攻撃を再開した場合、湾岸地域全体で予想を超える損害が広がる蓋然性が高いと湾岸アラブ諸国が認識していることを示している。

湾岸アラブ諸国にとってエネルギー関連施設やインフラへの攻撃は死活的問題といえる。

サウジアラビアには、2019年9月に東部のアブカイク、クライス(英語名はフライス)の油田にあるサウジアラムコの石油生産プラントへの攻撃で大規模火災が発生し、復旧までの数日間、原油生産の約半分の一時停止を余儀なくされたという苦い経験がある。

この攻撃を実施したのは、イエメンのフーシ派であった。現在、サウジアラビアは、イランだけでなく、イエメンのフーシ派やイラクの親イラン民兵からの攻撃の脅威にさらされている。

こうした戦線の拡大により、米軍も情報収集や戦力をイラン戦線から分散せざるをえない状況が生まれている。

フーシ派とイラクのシーア派民兵の動向

イランは、反イスラエル戦線(抵抗の枢軸)としてパレスチナのハマス、レバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派、イラクのシーア派民兵、シリアのアサド政権との連帯を深めてきたが、2023年10月のハマスによるイスラエル攻撃後、イスラエルの激烈な軍事行動やシリアでのアサド政権の崩壊などにより、この戦線の力は弱まっている。

しかし、今回の米国・イスラエルによる対イラン攻撃においても、イエメンのフーシ派とイラクのシーア派民兵によるイラン支援の動きがみられている。

ただし、反イスラエル戦線を構成する非国家主体の組織は「イランの代理勢力」ではなく、それぞれ独自のアイデンティティと利害を有している。

イランとは、あくまで地政学、思想(反イスラエルやイスラム)、共通の利害などに基づく結びつきといえる。

フーシ派への関心の高まり

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続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。

ここから先では、フーシ派とイラクのシーア派民兵の連携に注目し、親イラン組織が戦争に及ぼす影響について詳しく分析します。

本記事は、メルマガ&掲示板「イーグルフライ」より一部抜粋しています。
(この記事は2026年8月11日に書かれたものです)

水口氏 寄稿記事

笹川平和財団のIINAに寄稿した記事をご紹介します。
今回の記事とあわせて、ご参考ください。

「アメリカとイランの戦争終結への道――ホルムズ海峡問題から見えてくる多国間協力枠組みの必要性」
https://www.spf.org/iina/articles/mizuguchi_33.html

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水口章

中東専門家

外務省主管財団法人中東調査会上席研究員などを経て、敬愛大学国際学部教授。同大学総合地域研究所所長。法務省難民審査参与員。 湾岸戦争、米国同時多発テロ、イラク戦争、「イスラム国」(IS)問題など、中東地域関連問題についてマスメディアで解説してきた。

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