公開日 2026年8月4日

利上げのペースは速まり、次回利上げは9月の公算

日銀は物価の上振れリスクへの警戒を一段と強めた。展望レポートや植田総裁の発言を踏まえると、利上げのペースは速まり、次回利上げは9月になる可能性が高い。
利上げのペースは速まり、次回利上げは9月の公算のアイキャッチ画像

2026年度後半以降、コア消費者物価の前年比は「2%をはっきりと上回る」というのが日銀の見方

日銀は、7月30~31日の金融政策決定会合で、政策金利である無担保コール翌日物金利を1.0%に据え置くことを決めた。

3か月ごとに発表される「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)によれば、審議委員の2026年度実質GDP成長率の大勢見通し(中央値)は0.6%と、原油高という逆風のなかで、前回4月時点の予想(0.5%)とほぼ変わらない予想値になった。

展望レポートでは、「中東情勢の影響を受けた春先以降の原油価格上昇が下押し要因となるものの、グローバルなAI関連需要の増加に加え、政府による各種施策や緩和的な金融環境等が経済を下支えすると考えられるため、わが国経済は、伸び率を縮小しつつも、緩やかな成長を続けるとみられる」と述べた。

原油高の悪影響をAI関連需要や政府の施策などが相殺したという見方だ。

一方、26年度の消費者物価指数(除く生鮮食品)前年比の大勢見通し(中央値)は2.5%と前回4月時点の予想(2.8%)から幾分下方修正された。

展望レポートによれば「政府による夏場のエネルギー負担緩和策(電気・ガス代)の効果等」が下方修正の理由とされた。

だが、予想値が下方修正されたとはいえ、日銀は物価の見方を楽観視しているわけではない。

展望レポートでは、「物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、賃金上昇を販売価格に転嫁する動きが続くもとで、これまでの原油価格上昇が、エネルギーや財を中心に価格を押し上げるほか、グローバルなAI関連需要の増加に伴う半導体価格等の上昇や最近の為替円安が耐久財等の価格上昇につながることから、2026年度後半以降、2%をはっきりと上回る水準まで伸び率を高めていくと予想される」と述べた。

総務省が発表する6月の生鮮食品を除くコア消費者物価の前年比は1.6%と2%を下回るが、ガソリンや電気・ガス代等の負担緩和策などの特殊要因を除く形で、日銀が発表している「特殊要因を除くコア消費者物価(生鮮食品を除く)」は、6月時点で2.7%と2%超の状態が続いている(図1参照)。


ここまでは前年のガソリン価格が高かったため、ガソリン補助金が前年比の物価上昇率を低下させる効果があったが、7月以降、ガソリン価格は前年水準と近くなり、ガソリン補助金によるコア消費者物価の前年比押し下げ効果は小さくなる。

これに加えて、以下の要因により2%を下回っていたコア消費者物価の前年比は26年度後半以降、はっきりと2%を上回ってくるはず、というのが日銀の認識だ。

(1)原油価格の上昇
(2)AI関連需要の増加に伴う半導体価格等の上昇
(3)円安の影響

基調的な物価上昇率は2%に近づいているため、「これまで以上に物価の上振れリスクを意識する必要がある」というのが日銀の認識

とはいえ、日銀は政策判断を行うにあたって、コア消費者物価など単一の物価指標ではなく、やや概念的な「基調的な物価上昇率」を重視する。

展望レポートでは、この「基調的な物価上昇率」について、「人手不足感の強い状況が続くなかで、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくメカニズムは維持され、中長期的な予想物価上昇率は上昇していくと見込まれる。こうしたもとで、消費者物価の基調的な上昇率は、徐々に高まっていくと予想され、2026年度後半から2027年度にかけて『物価安定の目標』と概ね整合的な水準となり、その後も同程度で推移すると考えられる」「基調的な物価上昇率が目標とされる2%に近づいている」として、2%物価目標の達成が近いとの認識を示した。

また、展望レポートでは、経済・物価予想の上振れ・下振れのリスクについて、「経済見通しについては、概ねバランスしているが、物価の見通しについては、上振れリスクの方が大きい」とした。

物価見通しの上振れリスクが大きい点に関して、展望レポートでは「基調的な物価上昇率については、企業の賃金・価格設定行動が積極化していることや、中長期的な予想物価上昇率が引き続き上昇していることなどを踏まえると、2%の『物価安定の目標』を超えて上振れていくリスクがある。

こうしたリスクが顕在化し、それがその後の経済に悪影響を及ぼすことがないよう、十分に留意する必要がある」と述べた。

つまり、(1)企業の賃金・価格設定行動の積極化、(2)中長期的な予想物価上昇率の上昇が、基調的な物価上昇率の上振れにつながっているとの認識を示した。

ちなみに、前回4月時点の展望レポートでの、経済・物価に関するリスクバランスに関しては、「経済の見通しについては下振れリスク、物価の見通しについては上振れリスクの方が大きい」とされていた。

経済見通しのリスクが、4月時点の「下振れ」から今回「中立」に変わったことで、日銀は、景気の下振れではなく、物価の上振れリスクに注意しなければいけない状況になっている。

しかも、植田総裁は記者会見での「4月や6月と比べ物価の上振れリスクは高まっているのか」との記者からの質問に「中長期の期待インフレ率の指標は底堅く、一部はかなり上昇している」と答えた。

植田総裁が指摘している「中長期の期待インフレ率の指標」は、日銀短観や生活意識に関するアンケート調査などを指すとみられる。

6月調査・日銀短観の「企業の物価見通し」によれば「5年後の販売価格の見通し」は前回3月調査の5.6%上昇から6月調査では6.1%とかなり上方修正された。

また、6月の生活意識に関するアンケート調査によれば「5年後の物価は現在と比べ毎年、平均何%程度変化すると思うか」についての回答は、平均10.8%で、前回3月調査の同10.3%からやはり上方修正された。

こうした植田総裁の記者会見での発言からすれば、日銀の認識として、物価の上振れリスクの程度は、4月時点に比べ高まっており、物価に対する警戒を一段と強める必要がでてきているとみられる。

記者会見で、植田総裁は、「基調的な物価上昇率が2%に近づいている」なか、「基調的な物価上昇率が2%の物価安定の目標を超えて上振れしていくリスクが顕在化し、経済に悪影響を及ぼすことがないよう、2%程度の水準に安定させていく観点が重要で、これまで以上に物価が上振れするリスクを意識する必要がある」と述べた。

植田総裁が記者会見で指摘した「中長期の予想物価上昇率の上昇」に加え、ここへきての飲食料品の値上げ(帝国データバンクによれば、8月の値上げ品目は2,311品目で前年同月比83%増)にみられる「企業の賃金・価格設定行動の積極化」からみると、日銀は利上げによって物価の上振れを防がなければならない状況は高まっている。

・・・

続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。

後半では、植田総裁の記者会見の発言を読み解きながら、次回9月利上げの可能性や、高市政権と日銀の関係に生じつつある変化について解説します。

2026/8/4の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。

関連記事

最新の記事をお届けします

Real Intelligence無料メルマガ

無料メルマガ登録

各講師のオンラインサロンや有料サービスもございます。詳しくは商品一覧ページをご確認ください。

プロフィール

新見未来のプロフィール画像

新見未来

エコノミスト

エコノミストとして、シンクタンク、投資顧問会社などで経済分析、資金運用とアセットアロケーション業務に携わる。

会員サービスに登録して
より有益な情報を手に入れよう

富を拡大するため一流で正統派の金融リテラシー・実践的情報を
元チーフディーラー集団からお届けします

会員サービス紹介
運営会社情報
エフピーネット株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第1898号
金融商品取引業の種別:投資助言・代理業
加入協会:一般社団法人資産運用業協会
よくあるご質問お問い合わせ
Copyright © FPnet Co., Ltd. All rights reserved.