英国を揺るがす「マンチェスター主義」

水道の蛇口をひねる、部屋の明かりを灯す、バスや電車で職場へと向かう。私たちが現代社会を生きる上で、これらは一瞬たりとも欠かすことのできない「生活の土台」です。
英国では過去40年間にわたり聖域とされてきた「民営化」の歴史に真っ向から挑む、極めて野心的な経済思想が産声を上げようとしています。
その名も「マンチェスター主義(Manchesterism)」と呼ばれるものです。
民営化の終焉と「見えざる重税」
事の発端は、英労働党次期首相となるであろうバーナム下院議員の周辺から発表された一冊の政策提言書『生産的国家(The Productive State)』でした。
著者はバーナム氏の知恵袋であり、シンクタンク「コモン・ウェルス」の代表を務めるマシュー・ローレンス氏。
この論文が提起しているのは、1980年代サッチャー政権以来の公共インフラの民営化路線を、根本から逆転させようという大胆な処方箋です。
現在の英国経済は、深刻な生産性の低迷と物価高騰にあえいでおり、ローレンス氏らは、その元凶こそが「行き過ぎたインフラの民営化」にあると断言しています。
民間企業に委ねられた水道、電力、ガス、公共交通機関は、サービスの向上や公共の利益よりも株主への配当や投資家への富の移転を最優先してきた結果、国民が毎月支払う公共料金には、本来不要なはずの「民営化プレミアム」という名の上乗せ金、いわば構造的な「隠れた増税」が組み込まれてしまっているという考えです。
私も初めて耳にする言葉ですが、民営化賛成の人にしてみれば、民営化に踏み切らなかったら効率化も進まず、「むしろ料金はもっと高かったかもしれない」という主張が出てくるでしょう。
ですので、「民営化プレミアム」とは客観的な経済指標というより、かなり政治色の強い言葉だと私は理解しました。
「マンチェスター主義」が描く国家像
それでは、彼らが目指す「マンチェスター主義」とは、どういうものでしょう?
数百億、数千億ポンドという天文学的な国費を投じて、あらゆるインフラを一斉に力ずくでお上が買い戻すような、かつての硬直した社会主義的アプローチとは違い、市場を混乱させることなく、戦略的かつ現実的に「公的コントロール」を取り戻すための巧妙なスキームが、用意されているそうです。
提言では、大きく分けて3つの具体的アプローチが示されているようです。
(1)特別管理制度(SAR)の適用
すでに経営破綻の危機に瀕している「テムズ・ウォーター」のような問題企業に対しては、政府が臨時の法的管理下に置き、実質的な公的管理下へ移行させる。
(2)株式交換型国債(Bonds-for-shares)の発行
健全経営を続けているインフラ企業に対しては、巨額の現金を支払う代わりに、将来の株式と交換する国債を発行し、財政への直接的な負担を抑えながら公有化を進める。
(3)公的商業法人の新設
国家が自ら競争力のある新たな「公的商業法人」を設立し、民間市場に直接ライバルとして参入していく。
この戦略は、「公共インフラの再構築こそが、最大の財政規律(フィスカル・プルーデンス)である」という逆転の発想と言われ、国家が生活の基礎を握ることは、単なる福祉ではなく、長期的な国家投資なのだという論理でもあります。
生活の基盤を国民の手に
もちろん、この大胆な構想に対して市場や保守派からの警戒感は根強く、法的な抵抗や、国債発行に伴う金利上昇リスクを懸念する声も当然上がっています。
しかし、・・・
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2026/6/23の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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