なぜ投資のプロが詰むのか 今すぐやるべきこと5つ・やってはいけないこと5つ

プロが危機を認識できない
リーマンショック前に多くの投資のプロたちが金融危機の到来を認識できませんでした。
リーマンブラザーズが破綻したニュースが流れた後でさえ、
「米国の問題だから日本は大丈夫」
というコメントをする人たちもいたくらいです。
なぜ投資のプロが詰むのか
投資のプロの多くは、金融危機のたびに大きな損失を出します。
その理由は学んできた知識がアダになっているからです。
異常値や史上初が多発する現在の相場では従来の投資理論が通用しないことが多くなるのです。
今回、ポートフォリオを主な題材として解説します。
私は、2001年から「金融資産の半分をゴールドに」するように、お伝えしてきました。
2001年は1990年からスタートしたバブル崩壊の途中で日経225が長期下落を続けてきた時です。
その時、ゴールドは、ほとんど全ての投資家が「ゴールドは死んだ」として見放していた時です。
「金融資産の半分をゴールドに」と聞くと、かなり片寄っていると思われる人も多いでしょう。
1年前までは「金融資産の半分をゴールドに」なんて「あり得ない」と感じる人も多かったでしょう。
しかし、今は次のように2分されます。
「金融資産の半分をゴールド」にしておいて良かった。資産が大きく増えた。
「金融資産の半分をゴールド」にしておけば良かった。
今でも、専門家の多くは「ゴールドのポートフォリオは5%~20%」と言っています。
世界中のアドバイザーが同じことを言う理由
今でも、世界中の投資アドバイザーのほぼ全員が、次のように同じことを言います。
・分散投資が大切です
・株と債券をバランスよく持ちましょう
・通貨も分散しましょう
・インフレだから株を買いましょう
なぜ、ほぼ全員が同じことを言うのでしょうか。
答えは単純です。
全員が同じことを学んできたからです。
・投資の教科書
・大学の金融工学
・MBA
あらゆる金融、投資の専門教育が、同じ理論を学びます。
モダンポートフォリオ理論、リスク分散の原則などを深く学び、試験で高得点を取り、資格を取得した人が「専門家」と呼ばれます。
投資教育は実践が抜ける
しかしここに、根本的な問題があります。
AIの世界で使われる言葉を借りると
専門家ほど「教師あり学習」に特化しているということです。
「教師あり学習」は簡単に言えば
前例のパターンを学習して模倣することです。
受験勉強などは、まさに教師あり学習に該当します。
投資において、教師あり学習が有利なときは
前例通りのパターンのとき、つまり平時です。
一方で前例のない局面(金融危機など)には極めて相性が悪いです。
「教師あり学習」は
平時には良いですが、
金融危機などの局面では通用しなくなるということです。
AIの思考の視点で見ると、
今の相場のような、過去に前例のない局面、異常値が多発している時において有利なのは「強化学習」のほうです。
「強化学習」は前例のない事を実践、試行錯誤する場合には向いていて、0→1をする起業家などに見られる思考です。
つまり、今の相場局面で求められているのは、専門家的な「教師あり学習」ではなく、不規則な事態に対処する、実践的、起業家的な思考と言えます。
また、多くの専門家、特に若手は、そもそもリーマンショックなどを経験していないため、金融危機の場面で、実践経験が足りていないという問題もあります。
なぜ「教師あり学習」ばかりなのか
基本的に専門家とは、過去の事例を多く知っていることが強みです。
すなわち専門家とは教師あり学習のエキスパートとも言えます。また、「専門家を信頼する」という心理も教師あり学習的です。
専門家が言うから正しい、模倣する、という考え方がまさに教師あり学習的なのです。
日本の場合は、受験偏差値が高いタイプが、そのまま専門家になり、専門家が言うことを素人は鵜呑みにする、というパターンが多いと思います。
ただしそれは、金融危機のような不測の局面では、かなりのリスクがあるということです。
AIの思考の視点で見ると、現在の例外が多発する相場では本来は起業家タイプのアナリストを含め色々な意見を聞きつつ、自分で考える必要がある局面です。
ポートフォリオ理論が崩れて久しい
従来型ポートフォリオ理論が機能しにくい局面が増えているのは次の頃からです。
・1998年、LTCM(ロング・ターム・キャピタル・マネジメント)の破綻
・2008年、リーマンショック
これらの危機の時に異なる資産を組み合わせてリスクを減らす分散投資の前提が機能しないことが表面化しました。
「普段は機能する数学モデルが、非常時(危機時)には全く役に立たなくなる」ことが明らかになったため、現在では、過去のデータだけでなく最悪の事態を想定するリスク管理が追加で用いられるようになっています。*1
ブラックロックなどの大手運用会社も、理論を過信して放置するのではなく、環境に合わせてアロケーションを見直すことの重要性を指摘しています。
権威ある学者たちが集まって運用したLTCM(ロング・ターム・キャピタル・マネジメント)の大失敗こそが理論だけで投資してきた結果です。
今も続く古い考え方
ポートフォリオ理論が実質的に機能しなくなることが発覚してから17年~28年もの年月が経ちますが今でも「インフレだからポートフォリオを組んで積極的に投資しましょう」と言い続けている投資アドバイザーがほとんどです。
投資させることが仕事の人も多いのでなおさらです。
ポートフォリオを組む上で大切な基本は
「相関性がない投資先を分散する 」
ということです。
しかし、今は多くの相場が連動して動くことが多いので分散する意味が薄れています。
環境の変化に対応する必要があります。
さらに金融危機となれば、株も債券も全て相関が高まり、同時下落するケースがあるので
「投資を止める選択」も考慮すべきですが、反対に
「ポートフォリオを組んでいれば大丈夫」となります。
現実
2022年以降、株安と債券安が同時進行することも多くなりました。
それまでは株と債券は逆相関(負の相関)が多かったのですが現在は、株と債券は相関(正の相関)が多くなりました。
先日、2026年5月15日には日本と米国で、同時に国債が下落しています。
過去と現在の違いは次の通りです。
従来 最近の現実
分散投資が機能する 分散投資が機能しない
株安→債券高 逃避買い 株安・債券安が同時進行するリスク
国を分散 国を分散する意味が薄れた
国の中に逃げ場がある 国に依存しないことが逃げ場
株安・債券安が同時進行するのが、金融危機の本質です。
通貨安も加わると「トリプル安」です。
株や債券を分散して保有することは、この構造の前では意味をなしません。
嵐の中で傘を複数持っているだけで、どれも役に立たないのです。
「考えているつもり」が最も危険
ここで、もっと根本的な問題を指摘しなければなりません。
多くの人は、自分の頭で考えているつもりで考えていません。
多くの人が次のように思っています。
「分散投資が大切だと思います」
「ポートフォリオが重要だと思います」
この「思います」は本当に自分で考えた結論でしょうか。
ほとんどの場合、それは専門家や権威が言ったことを、自分の考えだと信じ込んでいるだけです。
模倣です。
そして専門家自身も同じなのです。
教師が言う理論、教科書に書かれた理論を習得し、それを「自分の専門知識」だと無意識に信じています。
無意識なので更新することが難しいのです。
リテラシーの基本は自分の頭で考えること
権威が言うから正しい
多くの専門家が言うから正しい
この思考回路こそが、危機の時に資産を守れない最大の原因です。
リテラシーの基本は、自分の頭で考えることです。
やってはいけないこと5つ
①「分散すれば安全」を信じ続ける
今回の危機では従来型の分散が機能しません。
株と債券を分散しても、同時に下落するリスクがあります。
「分散している」という安心感そのものが、最大のリスクです。
② 株高に乗って投資する
現在、株式市場はリーマンショック前以上の過熱感が一部指摘されています。
急角度に株価上昇している相場は熱狂状態といえるでしょう。
しかしこの株高は、AIバブルと長年の緩和マネーが生み出した虚構の上に成り立っています。
熱狂の頂点で買うことは、最も高値で掴むことを意味します。
バブルの頂点に近づくほど上昇は急角度になります。
ストップロスを入れず(=下落時の逃げ場を考えず)投資することは致命的です。
③ インフレだから株を買う
多くの専門家が
「今は、インフレだから、ポートフォリオを組んで株を積極的に買いましょう」などといい、
それを鵜呑みにして実行している人が多いです。
そもそも景気が良くてインフレであれば正しいですが、今はコストプッシュ型の悪いインフレ(スタグフレーション)なのでインフレの状態が異なります。
④「政府・日銀が何とかする」と信頼する
過去の危機では、政府と日銀が救済に動きました。
しかし今回は、政府・中央銀行自身の課題も意識され始めています。
政治家、政府、日銀、学者、知識人たちが財政問題について一部正しくても一部間違っている混乱状態です。
救済する側が、救済を必要とする状況に近づいています。
こちらの記事を合わせてお読みください。
よくある政治家や学者の間違いも指摘しています。
⑤専門家・権威の言葉を鵜呑みにする
「有名なアナリストが言っているから」
「大手証券会社の推奨だから」
「テレビの専門家が言っているから」
この思考回路を今すぐ疑ってください。
ほとんどの投資アドバイザー自身が、今回の危機で詰む可能性があります。
専門家も同じ「教師あり学習」の産物であり、前例のない局面では機能しません。
今すぐやるべき5つ
①ゴールドへの分散(最優先)
円にもドルにも国にも依存しない唯一の国際通貨・実物資産がゴールドです。
資産防衛で一番大切なことは国に依存しない資産を持つことであり、その筆頭がゴールドです。
但し、すでに昨年から急騰しているので買い方はこちらを参考にしてください。
②エネルギー・食料の自衛を始める
地政学的リスクが高くなっている今、エネルギーと食料の価格は今後さらに上昇する可能性があります。
食料の備蓄だけではなく自給自足を目指すと良いでしょう。
国に依存しない自給自足は、今後の一番のテーマになるでしょう。
③自分の頭で考える力を鍛える
最大の武器は本質的な金融リテラシーです。
ここで言うリテラシーとは、専門知識を増やすことではありません。(教師あり学習ではない)
構造を自分で理解し、自分の頭で判断する力です。(教師なし学習と強化学習)
5つの危機パターン、円キャリートレードの巻き戻しの仕組み、財政の問題などを「誰かが言っていた」ではなく「なぜそうなるのか」を自分で説明できるレベルまで理解することが重要です。
こちらの記事を参照ください。
④情報源を根本から見直す
マスコミ、政府発表、楽観論を語る専門家
これらは、むしろノイズになります。
一次情報(日銀のデータ、財務省の統計、実際の国債利回り)を自分で確認し、構造的な分析と照らし合わせて判断する習慣を今すぐ始めてください。
⑤サバイバル意識を持つ
今は、激動の時代は金融危機、想定外の災害、戦争が多発する時です。
このような時代はサバイバル意識が大切です。
最後に
準備している人と、していない人では、同じ危機に直面した時に
大きな損失となる人と
大きく富を拡大する人に
分かれます。
そして今後、多くの投資アドバイザー自身が詰む可能性があります。
専門家を信じるのではなく、構造を自分で理解することが最大で唯一の武器です。
リーマンショックの前も、皆が熱狂していました。
気づいた時には手遅れだった人が大勢いました。
今回の株高の熱狂は、リーマンショック前以上です。
しかも次の危機は100年に一度と言われたリーマンショック以上だと判断しています。
自分の頭で考えることが求められるのが激動の時代です。
参考資料
*1 現代投資理論 野村証券
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