公開日 2026年5月18日

米イラン交渉妥結でも原油不足は10~12月頃まで続く

ホルムズ海峡封鎖で世界の原油在庫は急減。米イラン交渉が妥結しても、年末頃まで供給不足と価格高騰が続く可能性がある。
米イラン交渉妥結でも原油不足は10~12月頃まで続く

世界の原油需給は、現在、日量400~600万バレルの供給不足。原油在庫は月間1.2~1.8億バレルのペースで減少している

ホルムズ海峡封鎖の影響は世界の原油在庫の急速な減少という形で表れ始めた。

5月のIEA(国際エネルギー機関)“Oil Market Report”によれば、世界の原油在庫は3月、4月の2か月間で約2.5億バレル(日量換算で約400万バレル)減少し、4月末時点の在庫水準は79億バレルとなった。

IEAによれば、この在庫減少を「記録的ペースでの減少」と述べ、「この急速な在庫枯渇が原油価格の急騰を招く可能性がある」と警告した。

また、「ホルムズ海峡を通る石油の流れが2026年7~9月から徐々に再開されれば、年末にかけて需要は増加に転ずる可能性があるものの、供給の回復はより緩やかになる見込みで、石油市場は年末まで供給不足の状態が続く」「夏の需要ピーク期を前に、さらなる価格変動が予想される」と述べている。

原油在庫の減少は、言うまでもなく、ホルムズ海峡封鎖による湾岸諸国の生産量の急速な減少が原因だ。

昨2025年の世界の原油需給については、生産が需要を日量180万バレル上回る供給過剰状態だった。このため、原油在庫は2025年に日量180万バレル(年間6億5,700万バレル)増加した。

だが、イラン戦争により、原油生産は急減し、大幅な供給不足状態に転じた。

イラン戦争前、ホルムズ海峡を通過する原油は、世界の原油生産の約2割に相当する、日量約2,000万バレルと言われた。そのホルムズ海峡が封鎖されたことで、4月の湾岸諸国の原油生産量は戦前に比べ日量1,440万バレル減少したようだ。

北米、ロシアなどの生産は増加しているが、4月の世界の原油生産量は日量9,510万バレルと、2025年の水準(同1億620万バレル)を1,110万バレル下回った。

一方、IEAは、原油価格上昇の影響で、石油化学や航空部門を中心に、世界の原油需要も減少し、2026年4~6月に日量1億130万バレルと2025年の同1億440万バレルを310万バレル下回る水準になると見込んでいる。

仮に、5、6月の世界の原油生産が4月並みの日量9,510万バレルとなり、一方、世界の原油需要がIEAの見込み通り、同1億130万バレルになるとすれば、4~6月の供給不足幅は同620万バレルとなる。

その際、4~6月の3か月間(3月末→6月末)での在庫減少幅は、5億6,420万バレルと昨年1年間での在庫増加に近い減少になる見込みだ。

IEAは6月から海峡を巡る原油の流れが徐々に再開するとの前提で予想しているが、もし、現在の封鎖状態が続けば、日量600万バレル(月間1.8億バレル)程度の在庫減少が続く計算になる。

世界の原油在庫は6月にも「運用上のストレス水準」に相当する76億バレルに減少する見込み

世界の原油在庫の多くは政府が管理する戦略備蓄で、このなかには、政府が直接保有するものと、必要時に放出できるよう産業界に一定水準の備蓄維持を義務付けているものがある。

この戦略備蓄のほかに、通常の事業活動の一環として保有される商業在庫もあり、石油生産者や精製業者、トレーダー、流通業者などが保有している。

商業在庫については、米EIA(Energy Information Administration、米エネルギー省・エネルギー情報局)の資料によれば、先進国の商業在庫は今年2月末の28.2億バレルから、3月末27.8億バレル(前月比0.5億バレル減、日量換算で150万バレル減)、4月末26.7億バレル(前月比1.1億バレル減、日量換算350万バレル減)と減少ペースが加速している。

原油在庫の減少は、ホルムズ海峡封鎖による原油供給の急激な減少が、直接、原油価格に影響しないための緩衝材になっていた。

だが、これはあくまでも一時的な「緩衝材」であり、戦略備蓄を含めて79億バレルの在庫があると言っても、さほど余裕があるわけではない。

パイプラインや貯蔵タンク、輸出ターミナルが正常に機能するためには、ある程度の在庫が確保されていることが必要であり、世界の原油在庫の「運用上のストレス水準」は約76億バレル、「運用上の最低水準」は約68億バレルと言われている。

原油在庫は現在、月間1.2~1.8億バレルのペースで減少している計算だが、4月末時点の79億バレルから、仮に月1.5億バレルのペースで、世界の原油在庫が減少し続けるとすれば、6月末には76億バレルと「運用上のストレス水準」に達し、時間的な猶予はあと1か月半程度しかない。

そして、年末には67億バレルと「運用上の最低水準」を下回る計算だ。さらに、長期的にみると、ここまでの在庫減少・備蓄放出分はイラン戦争後、元に戻す必要がある。

仮に、ホルムズ海峡通航が正常化したとしても、在庫回復のための需要増が原油価格の長期的に押し上げ要因になる。

・・・

続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
2026/5/18の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。

関連記事

最新の記事をお届けします

Real Intelligence無料メルマガ

無料メルマガ登録

各講師のオンラインサロンや有料サービスもございます。詳しくは商品一覧ページをご確認ください。

プロフィール

新見未来

新見未来

エコノミストとして、シンクタンク、投資顧問会社などで経済分析、資金運用とアセットアロケーション業務に携わる。

会員サービスに登録して
より有益な情報を手に入れよう

富を拡大するため一流で正統派の金融リテラシー・実践的情報を
元チーフディーラー集団からお届けします

会員サービス紹介
運営会社情報
エフピーネット株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第1898号
金融商品取引業の種別:投資助言・代理業
加入協会:一般社団法人資産運用業協会
よくあるご質問お問い合わせ
Copyright © FPnet Co., Ltd. All rights reserved.