公開日 2026年5月15日

レパトリとは

レパトリは海外資産を売って円に換えることです。結果、円高になります。円キャリートレードの巻き戻しとの違いと共通点を解説します。
レパトリとは

レパトリエーション(レパトリ)とは何か

レパトリ(レパトリエーション)の一般的な定義は、企業や投資家が海外で運用・保有している資金や資産を、自国(日本)に資金還流させることです。
海外子会社の利益を親会社へ送金したり、外貨建て資産を売却して自国通貨に戻す動きを指します。
結果として円高になります。

投資の世界ではレパトリが分かりやすい事例があります。
2011年3月の東日本大震災の時、損害保険会社などが大規模災害の保険金支払いに備えて、海外で運用していた資産を売却し日本に送金すること(=円を買うこと)が意識されて急激に円高になりました。
大規模な自然災害が発生すると、保険会社の保険金支払いが急増します。
その原資を確保するため、保険会社の海外資産を売って円に換えるという行動がレパトリです。

東日本大震災の時の動き

私は東日本大震災(2011年3月11日)の初動から実際にリアルタイムで為替相場(豪ドル/円)を観察していました。
その時の動きは非常に示唆に富んでいました。

豪ドル/日足

チャートの矢印⇩のところが東日本大震災の時です。
①地震発生直後の数十分は少しだけ円安
②その後じりじりと円高
③1週間後には一瞬急激な円高(セリングクライマックス)
④その後急反転、上昇して大きく円安が続きました。

重要なのは、この時の円高は実際にレパトリが発生したからではなく、
「レパトリが起きるだろう」という市場の予測・懸念で円高になったという点です。

相場は実態ではなく、予測で動きます。

地震の場所や震度で変わる

災害の場所や被害の大きさでレパトリの動きは大きく変わります。
①東京都心部で大地震が起きた場合
直接的な経済ダメージが大きいと判断されすぐに大きく円安になるでしょう。
レパトリどころでは無いでしょう。

②主要都から遠いエリアの都市の大地震の場合
大きくないと思いますがレパトリ懸念から最初は円高になり、
その後円安に転じるパターンになる可能性があります。
東日本大震災は①と②の中間なので、その時のレパトリより小さいと思います。

都市部ではないエリアや小さい地震の場合、レパトリは発生しないでしょう。
海外メディアでどのように取り上げられるかで変わります。

有事の円買い

実は「有事の円買い」の背景には2つのメカニズムがあります。
1つ目が「円キャリートレードの巻き戻し」
2つ目が「レパトリエーション(レパトリ)」です。

この2つは違いと共通点があります。

円キャリートレードとレパトリの違いと共通点

円キャリートレードとレパトリは、どちらも「外貨を売って円を買う」という同じ方向の動きをもたらしますが、その性質は異なります。

円キャリーの巻き戻し

投資ポジションの解消。
「借りた円を返す」という行為で発生。
リスクオフ時に投機筋が主導し速度が速い。

レパトリ

資産の本国送金。
「保険金支払い原資の確保」という実需から発生。
保険会社・企業が主導し比較的緩やかに進む。
ただし「レパトリ懸念」だけで相場が動く場合は速い。

円キャリーの書き戻しとレパトリが同時発生

円キャリーの書き戻しとレパトリが同時発生した場合、円高の圧力は倍加します。
大規模災害と金融危機が同時に発生するケースです。
そしてその後、レパトリが一巡し円キャリーの巻き戻しも収束すると、今度は大量の円売り(円安)に転じます。
「最初円高→その後円安」というパターンの正体です。

現在のレパトリ・リスクの変化

日本の対外資産は約1,660兆円に達しています。
これはレパトリの潜在的な規模が過去とは比較にならないほど巨大になっていることを意味します。
かつてのレパトリは主に保険会社の行動でしたが、現在はGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)・生命保険・銀行・個人投資家(新NISA)まで膨大な外貨建て資産を保有しています。
一方で、現在の対外資産の多くは「円に戻すメリットがない」状況にあります。
海外で稼いだ利益を円に換えると円高要因になる上、日本の財政リスクを認識した投資家は円への回帰を避ける傾向があります。
これが「レパトリが起きにくくなった構造」を作り出しており、かつての「有事のレパトリ=円高」というパターンが変質しつつあると思います。

特に2022年以降、この現象が変化しています。
為替の動きを見ている人は認識しているように
リスクが高まっても円が買われず、むしろ売られる局面が増えています。

かつては「スイスフラン高・円高」でしたが、
最近は「スイスフラン高・円安」になっています。

円キャリーの巻き戻しもレパトリも、かつてほど円高をもたらさなくなっています。

世界の投資家が、円を「安全資産」ではなく「リスク資産」として見始めたということです。
これが現在のドル/円を考える上での最重要の前提変化です。

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プロフィール

松島修

松島修

エフピーネット株式会社 代表取締役 投資助言・代理業 関東財務局長(金商)第1898号、インベストメントアドバイザー、経済コンサルタント、ベストセラー作家

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