公開日 2026年5月12日

原油高でも好調にみえる米国経済の現状は?

原油高とインフレ圧力が続くなか、好調にみえる米国経済。その裏で進む雇用抑制と家計悪化の実態を読み解く。
原油高でも好調にみえる米国経済の現状は?

利益増加を背景に米S&P500株価指数は高値を更新

原油高の供給ショックは、物価を押し上げると同時に景気を悪化させる。エネルギーを自給できている米国であっても、その影響を免れない。

また、ガソリン価格高騰は、消費者の購買力を削ぐ形になり、米国経済の7割を占める個人消費に悪影響を及ぼしているはずだが、現状では企業利益の大幅増勢が目立つ。

ブルームバーグによれば、S&P500株価指数ベースの1株当たり利益の前年比増加率は、昨年7~9月の11%増、10~12月12%増のあと、今年1~3月は14%増と伸びが加速した模様だ。

さらに、4~6月はアナリストの楽観的な予想ながら27%増と増勢持続が見込まれている。企業利益増加に伴って株価(S&P500株価指数)も高値を更新している。

マクロ経済の動きを測るうえで注目されていた4月の雇用統計では、3月に続き雇用者数が堅調に増加し、2月まで低調だった雇用が増勢を取り戻したような数値となった。

原油高の米国経済への影響はほとんどないかのようにみえるが、いったいどうなっているのか?

利益増加の背景には企業の雇用抑制による労働分配率の低下がある

まず、GDP統計で、イラン戦争前の米国の経済状況がどうだったかを振り返っておく必要がある。

米国、イスラエルによるイラン攻撃は2月末に始まったため、1~3月のGDP統計には部分的にしか、原油高の影響が反映されていない。

1~3月の実質GDP成長率は前期比年率2.0%と昨年10~12月の同0.5%から伸びが加速し、潜在成長率並みの、いわば巡航速度での成長だった。

ただ、GDPの約7割を占める個人消費は、物価高止まりの影響から、中低所得層を中心に低調で、昨年10~12月の年率1.9%増のあと、1~3月は1.6%増と伸びがやや鈍化した。

これに対して、成長率を押し上げたのが企業の設備投資であり、特にAI関連投資の急増が目立った。

設備投資のなかの、「情報処理機器」投資の規模はGDPの約3%に過ぎないが、昨年10~12月に年率37.4%増、1~3月に同43.4%増と高水準の伸びを続けた。

「情報処理機器」投資のGDP増加寄与度は昨年10~12月が0.7%、1~3月が0.8%だった。

GDPの約3%に過ぎないAI関連投資が、成長全体の約4割を占めるという局所的な経済拡大になっていることがわかる。AI関連投資に偏った局所的な経済成長については、その持続性に不安がある。

米IT企業は競ってAI投資を進めるが、膨大な投資に見合う利益を生み出せるかが今後の課題で、利益が見込めなければ投資は冷え込むおそれがある。

また、労働生産性を上昇させるとみられるAIの労働代替効果が大きくなれば、すでに伸び悩んでいる雇用を減少させる可能性があるためだ。

家計部門の不調と企業部門の好調の背景には、所得分配面からみた労働分配率の低下がある。

労働分配率(雇用者報酬÷名目GDP)は、図1で示す通り、歴史的な低水準にあり、しかも直近の動きをみると、2025年1~3月の51.6をピークに26年1~3月は50.8に低下した。

実質GDPは2%程度の増勢だが、物価上昇率(GDPデフレータ)が3%台で高止まりが続いているため、26年1~3月の名目GDPは前年比6.0%と増加している。

これに対して、名目雇用者報酬については、トランプ政権の関税政策の不確実性などにより、企業が雇用を抑制し、2025年以降、雇用者数がほとんど増加していなかったため、1~3月の前年比増加率は4.3%と名目GDPの伸びを大きく下回る状況だ。

結局、物価上昇率の高止まりが名目GDPを押し上げ、一方で、雇用が抑制されたことが、名目GDPに比べた雇用者報酬を小さくし、逆に、企業利益を大きくしたことになる。

原油高で消費者信頼感指数が過去最低水準に下落

とはいえ、3月以降の原油高の影響は徐々に顕在化し始めている。特に、その悪影響が明らかになっているのが、家計部門だ。

ミシガン大消費者信頼感指数は、もともとの物価の高止まりを反映して、イラン戦争以前から低水準で推移していた(1977年統計開始以来の平均値は83.8に対して今年2月は56.6)が、3月以降、5月にかけて3か月連続で下落し、4月に49.8と統計開始以来の最低値に下落した後、5月は48.2と最低値を更新した(図2参照)。

ガソリン高とインフレ懸念の高まりが消費者心理を悪化させていることは明らかだ。

ガソリン価格は3月初めまで1ガロン当たり3.0ドルだったが、5月7日時点で4.5ドルと5割値上がりした。

これに対して、企業景況感を示す指標はさほど悪くなっていないようにみえる。

ISM製造業景況感指数は、2月の52.4から3月52.7、4月も52.7と景況感の分かれ目である50ラインを上回り、しかもイラン戦争以前に比べわずかではあるが上昇して、製造業景気の拡大テンポが加速して様子が示されている。

だが、・・・

続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
2026/5/11の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。

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新見未来

エコノミストとして、シンクタンク、投資顧問会社などで経済分析、資金運用とアセットアロケーション業務に携わる。

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