政治的な利下げ圧力強まるなかFRBはどう動く?

FRBは関税の影響を見極めるため早急な利下げに慎重な構え
6月17~18日のFOMCはFF金利を4.25~4.5%に据え置いた。
FOMC声明では、米経済・物価動向について、「純輸出の変動がデータに影響を及ぼしているものの、最近の複数の指標は経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆する。失業率は低いままで、労働市場の状況は堅調を維持している。インフレは幾分高止まりしている」と述べた。
前回5月FOMCでは「経済見通しに関する不確実性が一段と上昇した」と書かれたが、今回は「景気見通しに関する不確実性は低下したが、依然として高い」となった。また、前回5月FOMC声明では「失業増加とインフレ加速のリスクがある」との文言があったが、削除された。
記者会見で、パウエルFRB議長は、「利上げが基本シナリオでないことに間違いない」「利下げが適切になる状況に到達する可能性は高い」と、先行きの利下げを暗示しながらも、「関税がインフレに及ぼす影響については、より根強い可能性もある」「労働市場は利下げ求めて叫んではいない」として、早急な利下げには慎重な構えをみせた。
現時点では「政策スタンスの調整を検討する前に、経済の見通しについてより多くの情報を待てる状況にある」とし、様子見の姿勢をみせている。
物価が落ち着いているのは駆け込み輸入分の安価な在庫のせいなのか?
FRBは、関税の影響によって物価が上昇し、その物価上昇が景気を悪化させるというシナリオと想定しているようだ。だが、5月までの物価指標をみる限りでは、物価はむしろ沈静化の度合いを強めている。
コア消費者物価は25年1月に前月比0.4%上昇とやや高めだったが、その後は、2月同0.2%上昇、3月同0.1%上昇、4月0.2%上昇、5月0.1%上昇となった。関税が発動された4月以降も前月比0.1~0.2%という低い伸びにとどまっている。
この数値をみると、トランプ大統領が主張するように、関税の物価に対する影響は限定的とみることもできる。では、関税でも物価が落ち着いたままなのはなぜか。
関税引き上げ前に、米国の輸入・小売業者は駆け込み的な輸入を増やした。そのため、小売業者には関税引き上げ前の安値の商品の在庫がなお残っているとみられる。
仮に、駆け込み輸入した分の在庫が残っているだけであれば、FRBが想定するように、今後、安値製品の在庫がなくなり次第、関税分の物価上昇が始まるだろう。
以下のような調査報告が、そうしたFRBの予想を証拠づけるものとなっている。
6月4日に発表された地区連銀経済報告(ベージュ・ブック)によれば、物価は「緩やかな」ペースで上昇したと記され、先行きについても、コストや価格は今後さらに速いペースで上昇するとの見通しが、広く報告され、こうした物価上昇が「強くて大幅、あるいは著しい」ものになると予想した地区が複数あった。
同じ日に公表された、ニューヨーク連銀の調査(5月2日~9日実施)でも、コストを消費者に転嫁しようとする企業の姿勢が示された。
同調査は、同連銀管轄地区の製造業およびサービス業企業を対象としたものだが、全体のおよそ4分の3が関税によるコスト上昇の少なくとも一部を消費者に転嫁したと答えた。
同調査の担当者は「関税の影響を受けていない財やサービスについても販売価格を引き上げたと報告した企業が相当の比率で存在した」と述べた。
また、同担当者によれば、企業は賃金や保険料の上昇分を補うために価格を引き上げており、「価格上昇が続く環境を利用して、便乗値上げを行ったというケースもあり得る」と指摘した。
こうした調査報告が本当だとすれば、関税分の物価上昇が今後表面化することになり、FRBとしては、その動きを見極めるまでは、早期の利下げに慎重になる必要がある。
・・・
続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
2025/6/30の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
関連記事
https://real-int.jp/articles/2875/
https://real-int.jp/articles/2874/