公開日 2025年6月26日

イスラエル・イラン間の停戦と今後のシナリオ

今後のシナリオについて考察し、注目すべき点を考える。
イスラエル・イラン間の停戦と今後のシナリオ

イスラエルとイランの戦闘が続く中、トランプ大統領が6月21日、SNSのトゥルース・ソーシャルで、イランの3つの核施設(フォルドゥ、ナタンズ、イスファハン)への空爆を発表し、衝撃が世界をかけめぐった。

イランとイスラエル間の戦闘は、6月16日付の拙稿「イスラエルによるイランへの先制攻撃と今後のシナリオ」で示した「シナリオ4:イスラエルを支援する米国が戦闘への関与を深める」で述べた経緯をたどった。

このシナリオは、米国にトランプ政権が誕生したことで、イスラエルのネタニヤフ首相が、イラン攻撃計画を提案し、米中央情報局(CIA)や米軍と協議を重ね、武器支援や情報を得ていることを踏まえ、米国が戦闘に直接関与すると想定したものである。

この分析で、言及していなかった点を補足しておく。

  1. ヘグセス米国防長官が6月15日、議会証言で、
    米国は中東に対無人機関連の防衛支援(ミサイル2万発)を行っていると述べた。
  2. 米中央軍(CENTCOM)の司令官エリック・クリラ大将(59歳)は、
    国防関係者の中でもトランプ大統領と対面で中東政策を助言している重要人物であり、
    イランの核問題への対応について、大統領、国防長官に提言を行ったとされている。
    同司令官は6月初旬の議会証言で、イランが核開発でプログラムを放棄しない場合は、
    中央軍が軍事力で応じる意思を示していた。

以上の2点も、6月21日にトランプ大統領による戦略爆撃機B2でGBU-57を投下してのイランの3つの核施設爆撃命令に結びつく。

つまり、トランプ大統領とネタニヤフ首相の間では、イランの核兵器保有阻止についての政策協調がなされていたと考えられる。この点に関する政策協調は、今後も変わらない。

イラン・イスラエル間の停戦合意へ

23日午後6時(日本時間24日午前7時)、同大統領は、同じSNSで、イスラエルとイランが完全かつ全面的停戦で合意できたと表明した。これに合わせて、イランのアラグチ外相は、SNSで、イスラエルが日本時間の24日午前9時30分までに攻撃を停止すれば、反撃を続けるつもりはないと述べた。

トランプ大統領の発表は、すぐに経済分野に影響を及ぼした。

SNSでのトランプ大統領による停戦合意発表後、(1)原油価格はニューヨーク先物市場で1バレル当たり64ドルまで下落し(23日午前に1バレル78ドル台半ばまで上昇していた)、(2)株式市場ではダウ平均が先週末に比べ374ドル96セント高となり、(3)円相場も、有事のドル買いで一時1ドル148円から、危機は限定的との判断で146円前後に買い戻されている。

その後、日本時間24日午後、イスラエル首相府はトランプ大統領のイランとの停戦提案に同意したと発表し、これに先立ち、イラン国営テレビは「停戦がはじまったと」報じた。

トランプ政権の迅速な外交

米国によるイランへの空爆直後からの目まぐるしい情勢の変化は、トランプ政権の外交アプローチによって生まれたといえる。

ロイター通信によると、23日にトランプ大統領自身がイスラエルのネタニヤフ首相と電話会談を行い、イスラエルを説得した。さらに、バンス副大統領、ルビオ国務長官、ウィトコフ中東担当特使がアラブ諸国を通じ、イランと協議を行っている。また、ルビオ国務長官は、中国にイランによるホルムズ海峡封鎖の阻止を要請した。

こうした外交の背景には、米国の対外軍事関与を嫌うトランプ大統領の支持基盤からの批判が強まったことや、米国議会内でのイラン攻撃の法的権限を疑問視する動きがあることもある。

ネタニヤフ首相の停戦同意の背景

ネタニヤフ首相が停戦受け入れに同意した要因として、次のような点が挙げられる。

  1. トランプ政権が対イランに直接的軍事力行使を実施し、
    イスラエルの安全保障を高めた。
  2. イランによる弾道ミサイル攻撃で人的、物的被害が拡大している。
  3. イランのハッカー集団によるサイバー攻撃が
    イスラエル経済に悪影響を与える恐れがある。
  4. 軍事作戦の目標としていたイランの核開発プログラムの阻止、
    長距離ミサイル開発の阻止をほぼ達成できた上、
    軍事産業部門、石油・天然ガス施設の一部も破壊できた。
  5. イラン国内で治安機関による工作員の摘発が活発化している。
  6. パレスチナのガザ地区での戦闘の長期化とも重なり、
    戦費拡大で経済負担が増している。

イラン側の停戦受け入れ要因

一方、イラン側が停戦を受け入れる要因としては、次のような点が指摘できる。

  1. 民間人の被害拡大がイスラム体制打倒への抗議運動の要因となることへの懸念。
  2. イスラエルに制空権を握られており、今後、空爆で、
    エネルギー施設、軍事関連施設がさらに被害を受けることへの懸念。

懸念は残る

ネタニャフ政権の停戦同意発表後も、イランからイスラエルへのミサイル攻撃が行われ、イスラエルもイランを攻撃する姿勢を示しており、停戦は不安定な状況にある。さらに、次のような点も懸念される。

  1. イラン側の戦闘停止の判断に、ハーメネイ最高指導者の関与があったのか。
  2. イスラエルによる攻撃で、イランの革命防衛隊の多数の中心的幹部が殺害されており、
    後任に就任した幹部たちが、停戦プロセスをコントロールできるか。
  3. イスラエルの極右勢力は、イランの濃縮ウラン(60%濃度)が行方不明であり、
    核開発施設の破壊状況も未検証である中、
    イランのミサイル能力を低下させるための攻撃の中止に同意するか。

イランに関する今後のシナリオ

イランは、軍事的には、ガザ紛争を通じ、親イラン武装組織(ハマス、ヒズボラ、フーシ派、イラクの民兵)の弱体化、強い同盟関係にあったシリアのアサド政権の崩壊という打撃を味わっている。

また、・・・

全文を読みたい方は「イーグルフライ」をご覧ください。
メルマガ&掲示板「イーグルフライ」より一部抜粋しています。
(この記事は2025年6月24日に書かれたものです)

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プロフィール

水口章

水口章

外務省主管財団法人中東調査会上席研究員などを経て、敬愛大学国際学部教授。同大学総合地域研究所所長。法務省難民審査参与員。 湾岸戦争、米国同時多発テロ、イラク戦争、「イスラム国」(IS)問題など、中東地域関連問題についてマスメディアで解説してきた。

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