公開日 2024年2月26日

1989年当時に比べ現在の日本の株価は割安か?

1989年当時と比較すると、現在の株高が異常に低い実質金利によって支えられていることは明らかだ。だが、金融政策が徐々に正常化されていくにつれ、株価は調整を余儀なくされる可能性が高い。
1989年当時に比べ現在の日本の株価は割安か?

1989年バブルを生んだ日本の経済環境はどうだったのか?

日経平均株価が1989年末に記録した3万8,915円を上回った。

株価は1989年の水準に戻ったが、当時と現在の経済環境は全く異なる。現在の株価が当時に比べてどうなのかを評価するためには、まず、1989年当時の経済環境と現在の経済環境を比べる必要がある。

まず、当時の経済状況を振り返ってみよう。

1989年当時はいわゆる「バブル経済」の時代だった。不動産価格の上昇とともに株価が上昇し、1985年まで1万2,000円程度で推移していた株価は1989年末までの約5年間で約3倍に上昇した。

1989年末にかけ急騰していた株価が反転し、下落する直接的なきっかけになったのが、いわゆる「総量規制」と金融引き締めだった。

異常な不動産投機熱を冷ますため、1990年3月に、不動産向け融資の伸び率を総貸出の伸び率以下に抑える「不動産融資総量規制」の通達が大蔵省から出された。

それが不動産向け融資減少につながり、不動産価格を下落させ、不動産価格下落が不良債権問題を誘発した。

為替市場では、1985年9月のプラザ合意以降の急速な円高(1985年2月の262円から1988年11月に121円へ)が一服し、1989年末に143円、1990年4月に159円と円安が進んだ。

金融政策は、1985年以降の急速な円高に対応して緩和政策が続けられていたが、1989年以降、政策は転換された。

政策金利である公定歩合は、金融緩和下にあった1987年2月以降の2.5%から、1989年5月に3.25%、10月3.75%、12月4.25%、90年3月5.25%、8月6.0%と引き上げられていった。

実体経済については、少なくともバブルが崩壊するまでの日本経済は力強い成長が続いた。景気循環からみても1986年11月を底にした長期の景気拡大局面が1991年2月まで続いた。

実質GDP成長率は1987年(10~12月期の前年比)6.4%、88年5.5%、1989年6.0%と、6%程度の高成長が続いた。

だが、株価が下落に転ずるや、成長は下方屈折し、実質GDP成長率は、1990年4.0%、91年2.3%と鈍化していった。

インフレ率は1986年から87年にかけて円高と原油価格下落によりマイナスに転ずる局面があったが、その後、次第に上向いた。消費者物価前年比は、1987年末0.8%、88年末1.0%から、89年末2.6%に加速した。

1989年のインフレ加速は、89年4月に消費税率がゼロから3%に引き上げられたことが影響していた。

ただ、消費税率引き上げの直接的な影響がなくなったとみられる、1990年4~6月の消費者物価前年比は2.5%で、1989年末当時のインフレ率の実勢は2%台半ばだったと推測できる。

その後も消費者物価前年比は1990年末3.8%、91年末2.7%と、概ね2~4%程度のレンジで推移した。

金利や期待成長率なども加味した株価の割高度合いをみるには?

株価が割高か割安かをみる場合、まず、株価収益率(株価÷1株当たり利益)でみることが多い。

単純に、1株当たり利益の水準に対して株価が高ければ、株価収益率は高くなり、株価は割高と言える。逆に、1株当たり利益の水準に対して株価が低ければ、株価収益率は低くなり、株価は割安と言える。

ただ、株価(株価収益率)は、金利や利益成長期待によっても左右される。金利が低ければ株価収益率が高くても許容できるし、また、利益の成長期待が高ければ株価収益率が高くても許容できる。

つまり、株価を評価する場合には、少なくとも株価収益率金利期待利益成長率という3つの要素をみる必要がある。

1989年末の株価収益率は約70倍で、この数値だけをみると、株価は極めて割高でバブル的だったと言える。

ただ、株価が本当に割高だったかどうかは、前述した通り、金利や期待利益成長率も加味して判断しなければならない。

実際、当時は高い利益成長期待が高い株価収益率を容認していた。

株価=企業の当期利益÷(割引率-予想利益成長率)、
とする利益還元モデルから、最終的に次のような式が求められる。

株式益回り(株価収益率の逆数)=実質金利-実質期待利益成長率+リスクプレミアム

つまり、株価収益率のほか、金利や成長期待を加味して株価が割高かどうかを判断するには、同式のうち「リスクプレミアム」がどの程度だったかをみれば良いということになる。

上の式を書き換えると、
リスクプレミアム=株式益回り-実質金利+実質期待利益成長率、となる。

株式益回り、実質金利と実質期待利益成長率を反映した「リスクプレミアム」が高ければ、株価は割安だったと言えるし、逆に、リスクプレミアムが低ければ、株価は割高だったと言える。

1989年当時のリスクプレミアムはどうだったのか、そして現在の同数値はどうなのか。まず、1989年末についてみていこう。

株価収益率は、予想利益ベースで約70倍だった。その逆数である株式益回りは1.4%だったことになる。

次に、実質金利については、公定歩合が1987年から89年4月までの2.5%から、89年5月以降、徐々に引き上げられ、89年末は4.25%になった。

実勢として2.5%程度で推移していたと考えられる消費者物価前年比を差し引いて実質金利を計算すると、1989年初めまでゼロだった実質金利は、89年末には1.75%に上昇したことになる。

最後に、実質期待利益成長率は、1989年までの実質GDP成長率が6%であったことからすると、それとほぼ同等の6%程度だったとみていいだろう。

以上の、株式益回り、実質金利、期待成長率からみたリスクプレミアムは、1987年当時の低い実質金利で評価すると7.4%と高く、もし、金融緩和政策が続けれれていたとすれば、株価の割高感は少なかったと言える。

しかし、実際には89年にかけての利上げが実施され、金融緩和策は転換された。

実際に上昇した実質金利水準を前提とすると、1989年末のリスクプレミアムは5.6%と投資家にとっては容認できない水準に低下していたと言える。

その後も、1990年以降、一段の利上げが実施されたことによって、リスクプレミアムは一段と低下していった。

1987年~89年初めまでの公定歩合である2.5%から計算された7.4%のリスクプレミアムは、低いわけではない。

例えば、リーマンショック後、米国で、リスクプレミアムが比較的安定していた2015~19年の平均的なリスクプレミアムの平均値は約6.8%だった。

だが、それが1989年末時点で5.6%へ、その後も一段と低下したとすれば、投資家にとっては許容できず、より株価が低い水準にならなければ割に合わないことになった。

結局、それが株価下落につながったと解釈することができる。

要約すると、・・・

続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
2024/2/26の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。

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新見未来

エコノミストとして、シンクタンク、投資顧問会社などで経済分析、資金運用とアセットアロケーション業務に携わる。

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