中国経済の日本化は進んでいるのか?
日本の長期経済停滞の原因は「デフレ」ではない
中国の7月の消費者物価が前年比0.3%下落した。消費者物価の前年割れは21年2月以来のことだ。
「デフレ」に陥った中国経済に「日本化」の兆しが出てきたという指摘がある。
日本経済新聞は「企業や家計は先行き不安を拭えず、需要不足によるデフレ懸念が台頭する。投資効率が低い公共事業に依存し、投資を増やしても経済成長に結びつきにくい。人口減少という構造問題を抱え、低成長が長引く懸念がある」と指摘する。
日本経済は1990年代以降、30年余の停滞を経験したが、中国も今後、その日本と同様の経済停滞を辿るのではないかとの見方だろう。
だとすれば、まず、日本経済がなぜ30年以上にわたって停滞したのかをはっきりさせなければなるまい。
「需要不足によるデフレ懸念」が重視されているところをみると、デフレが経済の長期停滞をもたらしたと言いたいのかもしれないが、筆者の考えによれば、デフレは経済停滞の結果であり、デフレが経済停滞の原因ではない。
黒田前日銀総裁はデフレが経済停滞の原因と考えて、10年間にわたって、デフレをインフレにするために強力な金融緩和を行なってきた。
しかし、日本の経済停滞は変わっていない。
労働力、資本、生産性を加味して供給面からどの程度の成長が可能かをみた指標である潜在成長率は、1980年代の4%台からリーマンショック後にゼロ%程度まで低下したあと、2014年度にかけ一時1%近くまで上昇したが、現状は再び0.3%(内閣府、日銀ともに潜在成長率の推計値は0.3%)に低下している(図1参照)。
日本経済はゼロ成長軌道を脱していない。では、日本経済の長期停滞の原因は何なのか。
原因は日本の少子・高齢化に伴う労働力人口減少にあるといわれることが多いが、労働力人口が減少しても設備投資を増やし資本装備率を上げることによって労働生産性が高まれば、経済が長期停滞に陥ることは避けられたはずだ。
だが、実際のところは、残念ながら設備投資も長期にわたって伸び悩んだ。設備投資がこの30年間伸び悩んだ理由としては以下の3つの要因があった。
国内での増産投資の必要性が低下
第1に、人口減少で日本経済が長期的に縮小していくという予想のもとで、国内での増産投資の必要性が低下した。
企業はパイの縮小が見込まれる国内での増産投資を抑制する一方で、生き残りのために海外進出を加速した。
現地法人による設備投資を拡充し、また、迅速な事業再構築のために海外企業に対するM&Aを実施するなど、海外での事業活動を増やしていった。
この結果、日本国内の空洞化が進んだ。
企業経営者の保守的な姿勢
設備投資伸び悩みの第2の要因は、企業経営者の保守的な姿勢だった。
バブル崩壊後、多くの企業は無借金経営にこだわり、さらに2008~09年のリーマンショック時に流動性危機に陥ったこともあって内部留保の確保を重視する傾向が高まった。
これが設備投資を低迷させた。・・・
2023/08/16の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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