値動きが究極の事実
アマチュアトレーダーに必要なこと
個人投資家でありながら、FX関連の書籍を多数出版している田向宏行が、10年以上前に自分がトレーディングを始めた頃に読んだら、参考になるだろうなというコラムをお届けしていきます。
今回はマーケットに関するコラムです。マーケットで流通している情報は、大きく2つに分けられます。それは「事実」と「思惑」です。
相場格言に「噂で買って事実で売れ」というのがあるように、マーケットにはいつも「噂や思惑」といった情報と、「事実」の情報が錯そうしています。これらの判断を間違えると、トレード方向を間違えて大きな損に繋がることがあり、この区別は注意しています。
マーケットは多数派が動かすので、その情報が事実だろうと噂だろうと関係ありません。相場の動きに乗って利益を得るためには、どちらに動いているかが、一番重要です。つまり、拙著でご紹介のように、値動きが究極の事実ということです。
FRBが金融緩和をする、という思惑が主流となるとマーケットは先回りしてドル売りになり、実際に緩和策が発動されると今度はその先回りの利確や巻き戻しで逆にドルが買われる動きが起こります。
まさに「噂で買って事実で売る」になってしまうわけで、ファンダメンタルズだけでトレード戦略を考えていた場合はこうした場面で大きく損をしかねません。
ただ、マーケットはこうした噂や思惑で動いたり動かなかったりするので、何が動く情報なのか、という判断はアマチュアには難しいのが現実ではないでしょうか。だから私はこうした判断は他の市場参加者に任せ、多数派に乗ることにしています。
つまり、私はアマチュアですし、噂や思惑そのものでマーケットの動きを予想したり判断することはできないと思っていますし、意味がないとさえ思っています。
私たちは収益を上げるためにトレードするのであって、エコノミストのように指標結果を予想するのが仕事ではありません。収益を得るためには「思惑」ではなく、マーケットの値動きという「事実」に注目しなければなりません。
先ほどの例で言えば、金融緩和をやるかどうかがわからなくても、市場の思惑がどうであっても、事実としてマーケットがドル売りになっていればドルを売り、ドルが買い戻されればドルを買うことが利益につながります。
噂や思惑という主観的な判断は自分自身のなかの価値観とも関連し、自分の中の思惑も育ててしまいます。
客観的なテクニカルの判断基準があればそれに従えますが、自分の判断ツールを持たず思惑に従ってポジションを取ると、結果として大きな損になってしまう可能性があります。
会社経営でも、学業でも、事実の結果つまり数字がすべてです。この現実を受け入れ、事実を見ることが、時には自分にとって不都合だったり心地よくなかったとしても、それを無視した判断は、結局「運」になってしまうのだと思います。