勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし
アマチュアトレーダーに必要なこと
個人投資家でありながら、FX関連の書籍を多数出版している田向宏行が、10年以上前に自分がトレーディングを始めた頃に読んだら、参考になるだろうなというコラムをお届けしていきます。
今年は新型コロナウィルスでストレスが溜まっている方もいらっしゃると思いますが、何かを変える機会かもしれません。私は、相場と同様に柔軟に、ゆったりとした気持ちでいることが大切かなぁ、と思って過ごしています。
投資でも、スポーツや勝負事では「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という格言があります。負けた時にどう分析するか、考えるかが重要だという教えなのだと思います。
最新科学に目を向けると、脳科学者の茂木健一郎さんによれば、「失敗して後悔しているとき、脳が一番働く」とのことです。
格言という古くからの先人の教えでも、脳科学の理論でも、「敗因を把握すること」は成長のために必要なことなのです。
言うは易く行うは難し、と言われるように、これが簡単ではありません。失敗の原因は「自分の考えが相場と違ってた」となるからです。
確かに、結果だけ考えれば、自分の考えと相場の違いですが、これでは敗因の分析になりません。敗因を明らかにするためには、取引の判断基準が明確であることが大前提だからです。この判断基準がないと、すべての取引は結局は思い付き、勘、ということになってしまいます。
トレード経験が10年20年とある人は、当然、相場で勝ち残っている人ですからそうした勘が働くこともあるでしょう。しかし、経験が少ない人に勘は働きません。だから、判断基準が必要です。
トレード記録をつけるとか、取引ルールを作るとか、テクニカルに従う、と言われるのは、すべて「自分の決めた判断基準を明確にする」ための方策なのです。こうして考えた場合、ファンダメンタルズを判断基準にするのは、とても難しいことになります。明確な法則性を判断できないからです。
逆に証券会社や相場を説明する側にとっては好都合です。推奨した銘柄が想定通りに動かなくても、ファンダメンタルズではどのようにでも後講釈できるからです。
一方テクニカルは、そうは行きません。私が使うダウ理論もそうですし、移動平均線を超えるとか、MACDがゼロラインを超えるとか、そうした判断基準は誰の目にも明確です。特に、どのプライスを使うかまで明確にしておくと、後講釈はできません。事実が示されるので。
ということは、相場を始めて最初に自分の判断基準を作るなら、テクニカルをメインにする方が簡単ということになります。
私が2016年に執筆した拙著「臆病な人でも勝てるFX入門」はこれからFXを始める人向けの本ですが、ここでしつこくお伝えしているのは「手法」ではなく、「データの集積」です。
敗因を調べる基準と、分析データの集積が大事だとお伝えしているわけです。
「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし。」
不思議の勝ちに浮かれることなく、負けた原因を真摯に考えることで、自分の取引が見えてくると思います。