公開日 2024年5月29日

6~7月はユーロポンドのディールに注目

時系列的に捉えるとBOEは7月中までは利下げなし、ECBは6月6日に利下げし場合によっては7月18日にも追加利下げの可能性という構図になる。となるとユーロ売りポンド買いのディールに軍配が上がる。1ユーロ=0.84ポンド割れに向かうのではあるまいか。ただし、7月中までの狙いとしたい。
6~7月はユーロポンドのディールに注目

英国金融政策と次期労働党政権

スナク英首相が5月22日、「7月4日に総選挙を実施する」と表明した。

来年1月までに実施すればよい決まりの中で、敢えてこのタイミングで表明したことは一応、市場ではサプライズとなった。

もっとも筆者も含め、エコノミストの多くは「そろそろ表明か」と、予測していただけにサプライズの割には、市場は落ち着いている。

ドルポンドは21日の1.2712ドルから直近(24日)に1.2737ドルとほとんど変化がなく、ユーロポンドは0.8518ポンドから0.8539ポンドと、ユーロが強くなっている(本来はユーロはポンドに対し売られるはず)。

しかし、このスナク表明は少なくとも6月6日~8月1日の間はユーロポンドが、
売り込まれる材料となるはずである。

つまり、6月6日のECB政策決定会合で利下げが決定され、6月20日のBOEのMPC(同)で、利下げが見送られ、さらに7月18日のECB会合で追加利下げの可能性が残され、8月1日のBOE会合では利下げが見送られるとの情報が行き交う、という流れが想定されるからだ。

ECBが利下げを先行するなか、BOEが総選挙とサービス分野CPIの粘着性から、利下げのタイミングがズレ込むという構図である。

ただ、間違いなく英国が労働党政権(14年ぶり)にシフトすることに対する評価は、まだ決まっていないゆえ、8月以降のユーロポンド相場、ドルポンド相場の行くえは読めないのも現実だ。

英与党・保守党の支持率が低迷する中で、敢えてスナク首相は賭けに出た。

スナク首相はこれまで、保守党の支持率が上がるまで総選挙の次期を引き延ばすつもりだったが、支持率は一向に上がらず、5月2日のイングランド地方選でも保守党が大敗し、11の市長選でも首都ロンドンを含め10都市で労働党が勝利したのを見て決断したのだろう。

行き詰まっていたスナク首相にとって、数少ない明るい材料がインフレ抑制だった。22日発表の4月CPI上昇率は前年同月比+2.3%と2021年7月以来の低水準にとどまった。「総選挙をするには、目先的にこれ以上のプラス材料はなかろう」と考えたとしか思えない。

では、14年ぶりの政権奪還が確定となった労働党の経済政策はどうなのか。確かに、支持率は保守党の“敵失”によって20%以上の大差をつけている。

2019年の総選挙時は「鉄道国有化」論など社会主義色の濃い政策を主張した党内左派が、主導権のもとで大敗を喫した。

その後、労働党は財界とのパイプも重視するスターマー氏を党首に据え、徐々に中道寄りに修正。スターマー氏も当初は、一部の公共事業の再国有化に賛成する立場だったが、今は民間企業重視にシフトしているとされる。英北部スコットランドでも労働党への「追い風」となっている。

英国からの分離独立を目指し、地元で根強い人気を維持してきたスコットランド民族等(SNP)が、党資金流用疑惑などの不祥事を起こし大きく支持を失っているためだ。

昨年10月のスコットランド最大の都市グラスゴー近郊の選挙区で実施された下院補欠選挙では、4年ぶりに労働党がSNPから議席を奪還した。労働党は今回の選挙で「英国再建」をスローガンに掲げる。

経済や財政運営の安定性重視、公営エネルギー企業の創設、国民医療サービスの待ち時間減少、不法移民の取り締まり強化と国境警備機関の創設、治安強化のための警察官増員と、犯罪者への罰則強化、私立学校への税優遇廃止や教員増員など、保守党と似通った政策に取り組むことを約束している。

だが英国の財政状況は厳しい。財政規律を軽視し、金融市場の混乱を招いたトラス前首相の二の舞いを避ける必要があり、労働党が政権に就いた場合も、財政運営の自由度は低い。

こうしたスターマー氏の現実路線を反映して、金融市場参加者は労働党の政権奪取を好感し始めている。

特に労働党が過半数を大幅に上回る結果となった場合、政策実施への期待感も加わってくるとされていて、強いてはEUの関税同盟や単一市場への再加盟への期待へとつながっていくとの見方もある。

ただ、14年ぶりの政権政党ゆえ、実際の政策能力は未知数に近い。机上の論理に終始することも十分にありうる。

したがって、ユーロポンドでのポンド上昇を狙うにしても、ひとまず7月中に限定した方がよいかも。

英国の景況とインフレ動向

英国の景気動向については、1-3月期の実質GDP成長率が前期比+0.6%と、市場予想(+0.4%)を上回った。景気の改善は広範囲に及んでいて強さはある。

サーベイ(聞き取り調査)に基づくデータも強さを裏付けており、4月には消費者信頼感、総合PMI(購買担当者景気指数)が軒並み改善した。総合PMIは54.1と6ヵ月連続で50(方向性の拡大・縮小の境界)を上回った。

となると英国経済の中期見通しは上方修正されるのは必至であろう。ただ、・・・

続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
2024/5/28の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。

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金森薫

金森薫

国際エコノミスト。元外為・債券・株先ディーラーという実践経験を生かした経済分析、マーケット分析。

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