最強の投資家レイダリオの真意を探る
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レイ・ダリオの警告は大事
レイ・ダリオの相場観は、私、松島修とかなり似ていて大事なことを警告しているので2回に分けて記事にしました。
まだ読んでない方は、こちらからお読みください。
https://real-int.jp/articles/2359/
レイ・ダリオの予測は
「今生きている私たちが経験したことがない衝撃的なことが起きる」
つまり、
「米国覇権の終焉」と
「大きな金融危機が起きる」
という内容です。
今迄、レイ・ダリオの考え方を聞いても、その重要さを理解する人は少ない様子でした。
レイ・ダリオの警告を紹介している人でさえ、警告と同時に自分は米国株買い継続を表明する人までいるのです。
前記事で紹介したレイ・ダリオの予測を再掲します。
米国覇権終焉の予測
①信用支出が拡大しすぎてバブルが発生
②バブルが弾けて金融危機
③米国が多額の軍事費を払う余裕がない時に戦争になる
④ドルと米国債に不信感
⑤ドルと米国債を持つ者が売却
⑥米国覇権の終了
米国金融政策の予測
①再び、金融緩和(利下げ)
金融危機
②ゼロ金利にしても間に合わない
③量的緩和開始(中央銀行が国債購入)
④スタグフレーション・悪性インフレが加速
⑤ドル安に向かう
⑥中央銀行破綻
⑦米国の覇権の終焉
中央銀行が破綻するくらいの巨大な金融危機が来るという意味です。
レイ・ダリオの警告が理解されない理由
レイ・ダリオの警告を理解できない理由の根源は認知バイアスです。
投資で常に問題になるのが認知バイアスです。
現在は
教科書的知識が役に立たない時代
過去の延長線上に未来がない時代
だと認識して、頭の中をリセットすることが大事です。
https://real-int.jp/articles/2260/
その他にもいくつか理解されない要素があります。
①巨大な金融危機がくると表現していない
レイ・ダリオは
「今、生きている私たちが経験したことがない衝撃」
「中央銀行が破綻する」
と表現していますが、
「巨大な金融危機が来る」
という表現をしていないのです。
経験したことがない衝撃が来ると聞いても
中央銀行が破綻すると聞いても、
その危機感はイメージできない人が多いのかもしれません。
また、レイダリオは立場上「金融危機」という言葉を使わないのかもしれません。
②その時々の相場に合わせて語るため
レイダリオは
「現金はゴミだ」発言と、
「現金は良いもの」発言と
全く反対の表現をすることがあります。
これは、その時によって相場・環境が変化するということです。
「現金はゴミ」
現金は今のインフレを穴埋めするだけの金利を得ることができないからです。
それを聞いた人は、やっぱり株が良いのだと勘違いして株を買ってしまいます。
レイ・ダリオが株買い推奨していないのにです。
「株は現金よりゴミだ」
株を買う人を見て、レイダリオは「株は現金よりゴミだ」と言います。
株は下落トレンドだからです。
「現金は良い」
そして最近、レイダリオは「現金は良い」と発言しました。
備考参照
これは株の暴落が近いという意味です。
多くの人が混乱しましたが、それに対してレイ・ダリオは、現金は良いものにも悪いものにもなるという表現をしました。
これは、それぞれ市況で次のように変わるという意味です。
インフレ時は「現金はゴミ」
株下落トレンド時は「株は現金よりゴミ」
金融危機・株暴落前は「現金は良いもの」
ということになります。
多くの人はその時々の状況を把握せず、自分の都合の良いように言葉を切り取って解釈するので、間違った行動に向かいます。
③経験したことがないものをイメージできない
運用のプロでも、リーマンショックを経験したことがない人の方が多いです。
リーマンショック以降、押し目を買えば儲かるという体験しかない人は、株を買うと儲かるというロジックしかイメージできません。
たとえば、実際に日本株が20年以上の下落トレンドが続いた相場を理解できないですし、今後の米国で長期低迷が起きるはずがないと信じているのです。
④ ゴールドの意味と価値を分かっていない
プロも含めゴールドの真の意味と価値を理解していません。
投資教育ではゴールドは常に脇役だったからです。
金融危機時にゴールドは光を放つことになります。
ゴールド関連の実践的記事は、こちらにまとめました。
https://real-int.jp/articles/2219/
覇権のビッグサイクルとは
レイダリオが、今後、今まで経験した時代と大きく変わると判断したのは、同じパターンが過去何度も起きていたからです。
覇権の推移はローマ時代から同じパターンです。
巨大債務危機が一定の期間で発生し、覇権が移動します。
これから何が起きるのかを理解するために過去に毎回何が起きたのかを知ることが大事です。
250年周期 10~20年移行期間
ビッグサイクル 国内で起きること
戦争の後に始まり、新しい世界秩序を確立
↓
新しい秩序に挑戦する者はいないので平和と繁栄
↓
平和と繁栄に慣れてくると平和と繁栄の継続に人々が依存
↓
繁栄継続のために資金を借りること
↓
資金を借りることがバブルになる
↓
ほとんどの取引きが準備通貨となる
↓
さらに多くの借金につながる
↓
富が不均衡に増幅
↓
富の格差が広がる
↓
金融バブルが弾ける
↓
内戦
↓
外部紛争・戦争
覇権の終焉です。
ビッグサイクル 金融で起きること
基軸通貨となると世界中で通貨を貯蔵
↓
多くの資金を借りることになる
↓
自国通貨が無くなると、さらに多くの通貨を発行
↓
ゴールドの兌換停止
↓
金融バブルが始まる
↓
国債を発行し資金を提供するが国債を買うのは中央銀行
↓
株上昇ではなく通貨下落
↓
全ての通貨(ドル、ユーロ、円)の価値が下落していく
↓
通貨価値が下落とはゴールドが上昇ということ
最近のビッグサイクル
最近の世界のビッグサイクルは、
オランダが世界の覇権を取り
英国が次、
米国と続き
次の覇権国は中国の可能性が高い
というのがレイダリオの判断です。
世界の覇権のサイクルは毎回、巨額な債務危機と戦争によって終焉となります。
債務危機を解消するために戦争をするともいえますし、次の覇権を狙う国が、巨大な債務危機を狙って戦争するともいえます。
このサイクルは250年間の重なり合うサイクルで10~20年の移行期間があります。
この移行期間が大きな紛争・戦争の期間です。
帝国の権力の比較
覇権国になるためには8つの評価基準があります。
①教育
②独創性と技術開発
③世界市場における競争力
④経済生産高
⑤世界貿易に占める比率
⑥軍事力
⑦資本市場のための金融センターの力
⑧準備通貨としてのその通貨の力
これを満たす国が覇権を握ります。
金融の末期
レイ・ダリオは語ります。
bloomberg.co.jp
お金の価値について、ほとんど考えている人はいない。
多くの投資家が現金はもっとも安全だと思っているが、私は最悪な投資だとみなしている。
お金の購買力が下がっていくからだ。
株を買えという意味ではない。
相関性がないものにポートフォリオを組むことが大事だ。
インターナショナルに分散が必要で
資産の種類だけではなく国も分散する必要がある。
中央銀行がお金を刷っても何も生み出していない。
景気が悪いと、お金を刷り経済を刺激するのは手っ取り早く一番効果があるが、長期的に深刻な問題を起こす。
スタグフレーションに直面し、中央銀行の破綻をもたらす。
暗号資産は少しだけ
レイ・ダリオは、暗号資産・仮想通貨も分散・ポートフォリオの一つとして少し持っているだけで推奨しているわけではありません。
暗号資産を売るためのトークにレイ・ダリオの発言が使われていることもあるので、ご注意ください。
バフェットが米国債を買っている?
レイ・ダリオは国債も持ちたくないと語っていますが、投資の神様ともいわれるウォーレン・バフェットも同じです。
バフェットは長期国債を買いたくないから現金に限りなく近い3ケ月短期国債を買っています。
しかし、バフェットが3ケ月米国債を買っていたことから、バフェットも米国債を買っているというロジックで米国債を推奨している人もいます。
事実で嘘を伝えています。
投資情報は混乱、ポジショントーク・プロパガンダだらけです。
次回は、ウォーレン・バフェットやジョージ・ソロスについても解説したいと思います。
金融危機に対処する
これから来る金融危機に対処するには次の3つの視点が大切です。
①惑わしを避ける
ポジショントーク・プロパガンダを見抜き、正しい情報を得ることが大事です。
②その時々の変化に乗る
相場や状況は短期間で大きく変化するので、それに乗っていくことが大事です。
教科書が役立たない時なので理想の投資教育は、その時々の相場で解説と助言を受けて実践していくことです。
・正しい実践的知識
・その時々の正しい情報
・その時々の適切な助言を受ける
https://real-int.jp/articles/2152/
③ゴールドを理解する
ゴールドの価値はこれらの記事で理解することができます。
関連記事
https://real-int.jp/articles/2359/
https://real-int.jp/articles/2189/
備考
レイ・ダリオ氏、債券は保有したくない-「現金が良い」と語る。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-09-14/S0YTUQDWRGG001
2023年9月14日 ダリオ氏はシンガポールで開催された第10回ミルケン研究所アジアサミットで「債券やそういったものを所有したくない。今は一時的に現金が良いと思う」と語った。
世界的に莫大(ばくだい)な債務をどう減らすかという質問に対しては、債務が経済に占める割合が大きくなると、利払いも増大するため、状況は「複雑化し、加速する傾向がある」と説明。「私たちは今、その加速の転換点にいる」との見方を示した。
写真はbusinessinsider.jpより