公開日 2023年2月9日

2月3日-6日のドル円乱高下を読む

雇用統計で大きく下げた円相場は、6日早朝の日経電子版「政府は日銀総裁後任人事について、雨宮副総裁に就任を打診したことが5日わかった」とのテロップに大きく反応した。
2月3日-6日のドル円乱高下を読む

1月雇用統計の解釈

2月FOMCでは予想通り、25bpの利上げが実施された。

声明文では金融政策の先行きについて、ガイダンスの主要部分である「利上げ継続が適切になる」との表現は維持されたが、「将来の利上げに関し、程度を検討」とこれまでの「ペース」から「程度」へと変更された。

利上げペース再加速シナリオが無くなったことを明示するとともに、利上げありきの姿勢からハト派方向に変化した印象を与えた。

インフレについても、「インフレはいくらか和らいだ」との文言が追加され、ウクライナ紛争によるインフレ圧力への言及も単に「不透明感」へと簡略化された。

「インフレはなおも高い」との見方は維持されたが、インフレへの警戒が若干低下した可能性が示唆された。

記者会見においてパウエル議長は景気抑制水準へ、あと2回ほどの利上げを協議中とし、12月のドットチャート(FOMCメンバーの政策金利見通し)中央値に沿った引締め継続姿勢を維持した。

引き続き5%強のターミナルレート(政策金利の到達点)がFRB内では、意識されていると見られ、予測通りの経済動向ならという条件付きで、23年中の利下げは想定しないとの姿勢を維持した点も、市場織り込みとの比較ではタカ派的と言える。

一方、金融環境については「持続的な変化が起きるかどうかが焦点」と、現時点では金融環境の緩みを問題視していない可能性が示唆された。

一部で警戒されたほどには楽観的な見方を強める市場への牽制に動かなかった印象を与えた。

インフレについても、財のディスインフレ過程は始まっているなど、ディスインフレに複数回言及したことは印象的であり、FRBのインフレ懸念後退が示されたと言えよう。

パウエル議長が市場への牽制を強めなかったことを受け、金融市場は株高・金利低下・ドル安で反応、ドル円も128円39銭へと円高が進行した。

ところが、3日発表の米国1月雇用統計発表で市場の見方は一変した。発表後、様々な見方が出回ったが大勢の見解は次の如くである。

1月の雇用統計をまとめると、雇用者数に関しては市場予想を大幅に上回り、既に低水準にあった失業率もさらに低下するという堅調な結果になったといえる。

また、人材派遣の雇用者数の増加や、非自発的失業者数の減少など、これまで景気減速に伴う影響が見られてきた項目に関しても改善しており、雇用環境の堅調さが際立っている。

新規失業保険申請件数から足下までの雇用環境を見ても、直近週(1月22~28日)は、18.3万人となり、3週連続で20万人を下回っていることから雇用環境は堅調さを維持しているといえる。

こうした雇用環境の堅調さは、労働需要の強さに裏付けられている。

2022年12月の求人件数は前月比+57.2万件となり、水準は1101.2万件。2023年1月の失業者数569.4万人と比べると求人件数は約2倍程度の高水準にある。

12月に50%を下回ったISM非製造業景況感指数(1月6日発表)も前月比6%ポイント上昇し、55.2%と概ね回復した。

雇用者数は、この指数と連動する傾向があり、今回の雇用統計の堅調さは企業マインドの好調さにも裏付けられたことになる。

確かに、注目の賃金上昇率は前月比及び前年比で減速した。

労働供給が拡大しない点は引き続き課題だが、雇用環境が堅調でありながら賃金上昇率で測るインフレ上昇圧力が低下した点は、米国経済がソフトランディングへと向かうことを期待させる結果であったといえる。

こうした見方から、市場では大幅な金利上昇とそれに伴う株安となり、ドル円は金利差拡大から一気に132円20銭(6日NY市場)まで円安となった。

だが、例年1月は季節調整値が修正され、雇用者数(季節調整済)が22年12月分と不連続になりやすい。

また昨年末に年末消費の不振を反映して雇用者数が大幅に減少した小売業や人材派遣業では、その反動増が1月に集中的に表れた面もある。

さらには1月の雇用統計に1月分の大幅な人員削減の影響が表れていない。

人員削減計画の発表と実際の削減との間にタイムラグがあると思われ、今後、IT産業を中心とする大幅人員削減の影響が雇用統計2月~3月分)にも表れてくるだろう。

1月分雇用者には昨年12月に賃上げストに参加していた7万人のカリフォルニア州大学職員の職場復帰分も入っている。

FRBが注目する雇用コスト指数(前期比)は既に上昇の勢いを失っている。

アトランタ連銀のGDPNOWは、第1四半期のGDP成長率を0.7%と急減速を示している。製造業が在庫投資を抑えていることが主因だ。製造業の雇用が急激に鈍化することが予測できる。

ようするに、この1月の不連続的雇用統計でFRBが5月も利上げするとか、年内の利下げは、あり得ないとする見方は尚早であり、少なくとも2月・3月の統計を見定める事が必要。

したがって「雇用統計サプライズ」は長続きしまい。

・・・

2023/02/08の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
続きは「イーグルフライ」の掲示板でお読みいただけます。

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金森薫

金森薫

国際エコノミスト。元外為・債券・株先ディーラーという実践経験を生かした経済分析、マーケット分析。

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