単一共通通貨ユーロの考え方
ユーロ圏のマクロ経済政策とユーロ相場
ユーロはEU(加盟国:27カ国)に加盟する19カ国(ユーロ圏:EA)の単一共通通貨であるため、ユーロ圏加盟国の経済政策は日米などの様に自国通貨を有している諸国と相当に異なります【注】。
そこで今回から数回に亘ってユーロ相場に関係するEAのマクロ経済政策について解説していきます。
為替政策
EA加盟国(ユーロ導入国)はレガシー・カレンシー(例えば、西ドイツの場合は西独マルク:DM)を放棄すると同時に自国の為替政策を失うことになり、一元的にECBに委ねることになります。
金融政策
一元的にECB(欧州中央銀行)により決定・運営されています。(これらの点については、「国際金融のトリレンマ問題」として別途解説することとします)。
つまり、EA加盟国は共通通貨を導入することで、三つのマクロ経済政策(金融・為替・財政政策)のうち二つを失ってしまうことになるのです(図1)。
EUとしては、マクロ経済政策の決定・運営をすべて一元化したいところなのですが、それでは、EA加盟国は独自の経済運営が困難になってしまうため、EUは財政政策だけは各国に残し、多元的としました。
ただ、各国が財政政策を勝手に運営してしまうと、ECBの一元的な金融政策の効果が薄れてしまいます。
そこでEUは財政政策について、「安定成長協定(SGP)」という頸木を課しています。簡単に言えば、各国は政府債務残高を対GDP比60%以下、財政赤字を対GDP比3%以下に収めるというものです。
上のことだけでも、ユーロが日本円や米ドルと大きく性質が異なっていることが分かりますね。次回からは上の点について、具体的に解説を深めていきます。
【注】:通貨を統一しても、経済政策が多元的(ばらばら)では通貨(ユーロ)の安定を維持できません
【 関 連 記 事 】
https://real-int.jp/articles/1694/
https://real-int.jp/articles/1693/