ドルの強弱要因を踏まえての相場予測
早読み先週のドル円相場(寄り付きは東京午前9時の気配値、NY終値は現地午後5時の気配値)
1月11日:寄り付き104.08。
東京:休場。米国の財政出動への期待感の高まりから堅調に推移し、104.22まで上昇。
NY:バイデン次期大統領が早期に追加経済対策を成立させるとの期待感から米長期金利が上昇する中、104.40まで上昇。
NY終値104.24。
12日:寄り付き104.14。
東京:日経平均株価や米株先物が堅調に推移する中104.33を付けるも、値頃感からのドル売りで上値の重たい展開。
NY:米10年債の入札を巡って長期金利が低下する中、徐々に上値が重たくなり、103.72まで下落。
NY終値103.74。
13日:寄り付き103.74。
東京:米金利の低下に連れて103.53まで下落するも、日経平均株価の上昇を受けて103円台後半まで反発。
NY:米長期金利の低下が一巡したこともあり、103円台後半で堅調に推移。
ブレイナードFRB理事の講演があったが、このところ持ち上がっているテーパリングへの言及もなく、相場への影響は限定的だった。
NY終値103.89。
14日:寄り付き103.83。
東京:12月中国貿易収支が良好だったことやバイデン次期米大統領の経済対策が2兆ドルになるとの報で、米長期金利が上昇し、104.20まで上昇。
NY:米長期金利が再び低下を始める中、パルエルFRB議長が
「超緩和的金融政策の出口について語る時期ではない」としたことから、103.53まで下落。
NY終値103.80。
15日:寄り付き103.79。
東京:五・十日のドル買いも入るなどで一時103.85まで上昇するも、パウエルFRB議長が金融緩和の長期化を示唆したことや
失業保険申請件数が急増したことがドルの上値を抑え103.65まで軟化する局面も見られた。
NY:日米金利差拡大から短期で積み上がったドルロングの巻き戻しが進む中、103.64まで下落。
ただ、分断化による混乱や感染拡大に対する懸念が残る中、投資家のリスク選好姿勢が後退し、リスク回避通貨としてドルが買われ103.91まで上昇。
NY終値103.88。
長期相場分析(週足チャートをご参照下さい)
昨年2月にトランプラリーの最高値118.66(2016年12月)近辺を起点とする抵抗線を抜き、一昨年の最高値112.40に迫ったが、112.23に止まった。その後、3月のフラッシュクラッシュで101.18まで下落した後に急伸するも、111.71止まりに終わり、これが昨年の2番天井となった。
111.71を付けて以降、明確な下降チャンネルの中で推移しており、その上値メド線が104円台前半まで切り下がっている。100日移動平均線が強い抵抗線(前週末104.65)となっているため、5円刻みの節目105円は近くて遠い存在となっている。
2018年以降のドルの支持水準(除くフラッシュクラッシュ)となってきた104円台が既に抵抗水準となっていることも上の見方を支持する。ドルの上値が切り下がる中、既に102円台を侵食しつつあり、100円割れを試す可能性が相当に高くなった。当面の目標値は2016年の99.00だが、そこを示現したとしても、ドルの下落が緩慢なだけに、達成感が出るとは思われない。
**中期予測レンジ:99.00~105.00
**上値メド水準
104円台後半(100日MA、TR1)
105.00(心理的節目)
106.11(10月7日高値)
107.05(8月13日高値)
108.16(7月1日高値)
109.85(6月5日高値)
110.00(サイコロジカル)
**下値メド水準
101.18(3月9日安値)
100.00(サイコロジカル)
99.00(2016年安値)
Ⅲ.今週のドル円相場テクニカル分析
前週の相場に思う
テーパリング観測で一時的にドルが買われたが、そうは甘くない。ブレイナード理事は講演でもその点に言及しなかったし、パウエル議長はむしろテーパリング観測熱を冷ます様なコメントを行っている。前週は誰が104円台でドルを積極的に買うのかという提起をしたが、やはりそうなのだろう。
最後のひと踏ん張りが効かずに、テクニカルポイントの集中した104円半ばを前にしてドルの上伸は頓挫し、その後は103.53までの反落した。他方、103円台半ばでドルを積極的に売る向きもいなかった。
前週の予測は「ドル強含み揉み合い」とまとめ、ストラテジーでは104.25前後からの戻り売りを推奨し、最初のディップにおいてのみ103円半ばでの買いを推奨した。短期では双方とも奏功し、また戻りのショートポジションは根っこのポジションとしてより長めに使える可能性がある。そうした中、以前から気に掛けてきたユーロ円の動きがおかしくなっている。
ユーロ円の調整(下落)と共にドル円が下振れする可能性がある。
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以下ではドルの強弱要因を指摘した上で、上で述べた点を軸に今週の予測をまとめた。
ドルの弱気要因
- 111.71(3月24日高値)と109.85(6月5日高値)とを結んで引ける長期抵抗線TR1(日足チャート)が前週末に104.35前後へと下降してきた。抵抗線TR1と下方に平行に引くことのできるTR2とで下降チャンネルTR1-TR2が形成されている。上値メドであるTR1を上抜くまで、「長期トレンド」は下向きと見る。
- 25日MA(前週末103.58)・100日MA(同104.65)・200日MA(同105.84)の関係において、期間の短い線と長い線とが順番にデッドクロスしている。・・・25日MAと100日MAとのデッドクロスの関係が根強く続いている。
- 4月以降(除く6月初旬の約1週間)では完全に100日MAが抵抗線として機能している。
- 複数の強い抵抗水準が104円台に集中している。前述TR1が104.35前後にあり、そして100日MA(前週末104.65)と重なる。それらと重なる様に雲(同104.31~104.64)が存在する。
- 一目の雲関連では、前週はザラ場で雲に入ったものの、簡単に押し戻された感が強い。この間、基準線方向に向かっていた転換線が、上抜けずに(クロス出来ずに)再び両者がパラレルな関係となっている。また遅行線も26日前の実勢水準を下回っており、再び三役逆転状態に陥っている。
- 前週の展開で2018年以降の支持水準であった104円台(フラッシュクラッシュ時は除く)が抵抗水準となっている。
ドルの強気要因
- 7月1日の高値108.16を起点とする抵抗線RR(前週末104.25前後)が一時、終値でブレイクされている。抵抗線RRと下方に平行に引けるPRRとで下降チャンネルRR-PRRが中期メインストリームとなってだけに、注目すべき点である。但し、RRの起点と結ぶポイントを引き上げてファンラインを引くことも可能なので、軽々に重要な抵抗線がブレイクされたと判断しない方が良い。(注:今週のチャートからはRRを外しているため、必要のある方は前週のチャートをご参照ください。)
- 昨年11月中旬以降では、ほぼ抵抗線と化していた25日MA(同103.58)の上で相場が展開している。
- 2018年以降の支持となっていた104円台が抵抗水準となりつつあるが、前週では終値が104円台となった日もある。
以上の強弱要因に照らして、以下の様に今週の予測をまとめた。
今週のまとめ
長期の強い抵抗線となっているTR1(前週末104.35前後)、長期抵抗線となっている100日MA(同104.65)、一目の雲(同104.31~104.64)の存在はやはりドルの重い足枷である。直近最安値102.60を付けた局面での中期ウェーブは105.68(11月11日高値)を起点とするが、その下降ウェーブの調整は前週に104.40を付けたことで終了したと見る。
前週の当欄では、戻り高値は「102.60との61.8%戻しが104.50であることを考慮すると、上振れたとしても104円台半ばが一杯」と推計しているが、それが調整終了の判断基準である。
フィボナッチ比の61.8%はリトレースメント値を推計する上で、信頼度の高い比である。(目先でもう一度その近辺まで上昇する可能性はあるが、ほぼ同値近辺と予測する)
確かに104.95[76.4%戻し、105.68(11月11日)→102.60(1月6日)]という可能性もあるため、104.40で調整が完全に終了したとは言い切れないが、冒頭で述べた抵抗水準の存在を考慮するとその可能性が高い。従って、調整後の今週は下方バイアスがかかる展開を予測する。
焦点はザックリと言えば103円半ば(前週の安値は103.53)を下抜くかどうかにあるが、抜ければ、直近最安値102.60が試される局面があっても不自然ではない。
予測レンジ:102.00~104.40
メルマガ&掲示板「イーグルフライ」に掲載の記事より一部抜粋しています。
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