米経済の不穏な動きが割高な株価を急落させる可能性

インフレが消費マインドを悪化させ、政策の不確実性が企業投資を手控えさせている
事前に予想されたことであるが、トランプ政権下で、米国経済の不穏な動きが強まってきた。
2024年10~12月の米国の成長率は前期比年率2.3%と堅調な数字となった。個人消費は年末商戦が好調で、年率4.2%と増加したことが成長率を押し上げた。
だが、貯蓄率は24年12月時点で3.8%と低下している。貯蓄率低下は、家計の所得に余裕がないこと、そして、消費増加はおそらく、株高などの資産効果によって支えられてること、を示している。
実際、消費者マインドは低迷している。2月のミシガン大消費者信頼感指数は64.7と23年11月以来の水準に低下した。同ミシガン大調査によれば、インフレ抑制の見通しが立たないことから、「5~10年先のインフレ期待」は3.5%と1995年以来の水準に高まった。インフレが消費マインド悪化の一因になっていることは確かだ。
一方、10~12月のGDP統計では、設備投資が年率0.6%減と、22年10~12月以来の減少となった。トランプ大統領の政策が予測不能で、不確実性が高いため、企業は投資を手控え始めている可能性がある。
トランプ大統領の政策はビジネス寄りと言われ、企業活動は盛り上がるはずだという見方が一般的だが、2017年~20年の第一期政権時の経験をみると、決してそうではなかった。
第一期政権時のISM製造業景気指数をみると、確かに、2018年3月以降、米中貿易摩擦が懸念され始めるなかにあって、2018年夏場頃までは上昇傾向で推移した。
2017年末に成立したトランプ減税による内需の盛り上がりに加え、輸入関税が中小企業などの国内産業を保護する役割を果たしたことが、企業の景況感を18年夏場までのしばらくの間、上昇させた。
しかし、その後、同指数は2018年秋頃からは下落傾向を辿り、19年8月には景気悪化を示す50割れとなった。
第一期のトランプ大統領の政策は結局、企業の景況感を悪化させ、企業の設備投資を停滞させた。輸入関税により、米国への輸出に代替する形で、米国への直接投資が増加し、米国内での現地生産が増加するという期待もないわけではない。
だが、米国向け輸出を米国内現地生産に切り替えるという経営判断は、言うまでもなく、米国の労働コストの高さなどをも考慮してなされる必要がある。少なくとも来年の中間選挙で、トランプ政権への信認が確認されるまでは、そうした判断は様子見になるのではないか。
保護主義的な輸入関税は、結局、米国経済を悪化させる
米国経済は事実上、海外からの安価な輸入品に依存している。
輸入関税を好むトランプ氏の考え方は、海外からの安価な輸入品の流入を止めれば、鉄鋼、自動車など衰退産業を含めて、米国の産業が活性化するはず、というものだ。
確かに、鉄鋼など一部の衰退産業だけをみると、海外からの輸入品の値段が輸入関税によって押し上げられれば、これまで価格競争力で負けていた米国の鉄鋼業は価格面で優位に立てるようになり、米国の鉄鋼業は復活するかもしれない。
トランプ氏を支持して投票した「ラストベルト」地域は盛り上がるだろう。
だが、衰退産業を過剰に保護する政策が、経済全体としてマイナスになるというのは、いわゆるゾンビ企業の救済を続けたために、経済成長率が低迷してしまった日本の例からみても明らかだ。
産業構造という面から言えば、輸入品への課税強化は、輸入競合品の価格を不必要に押し上げるため、本来、淘汰されるべき弱い産業を保護することになる。
鉄鋼の国内価格上昇は、場合によっては鉄鋼業の生産活動を必要以上に高め、一時的にしろ、優秀な人材も鉄鋼業に流れる可能性がある。
そうなれば、米国において、もともと競争力の強い産業、例えばITなどの産業では労働力不足になり、それが産業の経済活動を圧迫することになる。
国際経済学では、輸入財の国際価格に対する関税と、輸出財の国内価格に対する同率の輸出税とは、財の生産、消費社会的厚生に対して同じ効果を持つとされ、「ラーナーの対称性定理」と呼ばれる。
輸入関税は、IT産業など米国で比較優位を持つ輸出産業に悪影響を及ぼすことになる。
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2025/2/25の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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