ベーシックインカムの悲劇 天国から地獄へ
ベーシックインカムだけで生活できた国ナウル
ナウル共和国という国があります。
太平洋、オーストラリアの北東に位置し、バチカン市国、モナコ公国に次ぎ、世界で3番目に小さい国であり、島国としては世界最小の国です。
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国土面積は、21平方キロメートルで、東京都の約1/10。
東京都港区区や多摩市くらいの大きさです。
人口は1万人程度しかいません。
島の周りを一周する道路が主要道路で、スクーターでも30分で一周できます。
山も川もありません。
水は電気で海水を真水にして供給します。
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この小さな国が1980年代には一人あたりのGDPでは世界でトップレベルの裕福な国でした。
1980年代の国民1人あたりGDPは
日本が約1万ドル
米国が約1万4千ドルだった時
ナウル共和国は2万ドルでした。
税金はかからず、
国からお金が支給され(ベーシックインカム)
電気・病院など公共サービスは無料
結婚すると、何と2LDKの新築一戸建てが国から支給されます。
個人住宅の片付けや掃除のために国が家政婦をやとってくれるので、自宅のトイレ掃除もしなくて良いのです。
国からお金が支給されるお金(ベーシックインカム)だけで暮らすことができます。
地上の楽園とも言われました。
ちなみに公務員の給料は大統領から家政婦まで、ほぼ同額です。
これを聞いて、そのような国に住みたいと憧れた人も少なくないと思います。
この国が裕福になった理由は、この島国がリン鉱石で形成されていたからです。
国全体が、アホウドリなど海鳥の糞が堆積され、良質なリン鉱石(鳥糞石)となり、リン鉱石は化学肥料の原料となるため高値で輸出できました。
つまり、島全体が鳥の糞が堆積し石化してできた国土であり、それを掘って輸出することで国民を養うことにしたのです。
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当初、漁業で自給自足の生活をしていた彼らはリン鉱石を元に1968年に独立国家となりました。
リン鉱石の採掘作業を行うのは海外からの労働者達であり、レストランや、お店を営むのも外国人となり、国民は見ているだけです。
国民は働くことを忘れ、国が支給するベーシックインカムのお金を消費するだけの生活になりました。
価値を生み出すのではなく、消費するだけの生活です。
国民はどんどん怠惰になり、働かず、外食に頼り、食べては寝る生活をしていたことから国民の90%が食べすぎで肥満、30%が糖尿病、世界一の肥満・糖尿病国になりました。
男性の平均寿命は50歳未満です。
海岸も含めて国全体がリゾート感はなく、国内のレジャーは釣りとドライブで、ベンツやフェラーリを含めて島の一周をグルグル何度も回るのがドライブです。
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無計画に島全体を掘って掘って掘りまくって一時的な繁栄がありましたが、当然、美味しい話は続かず、どんどん衰退してきたのです。
破綻への道
最盛期には年間200万トンの鉱石を輸出していたナウルも資源の枯渇が進み、
2002年時点で数万トン、
2004年時点で数千トン規模にまで採掘量は減少。
かつては森で覆われていた地表は、灰色の大地になってしまいました。
リン鉱石価格も下落したので、世界トップクラクラスの裕福だった国が、あっという間に破綻したのです。
唯一あった銀行(国立銀行)は破綻し、預金の引き出しも出来なくなってしまいました。
個人の銀行口座に1億円という数字があっても引き出すことができないのです。
暗号資産で1億円があることは分かるものの秘密鍵が分からなくなって使うことができない状態と同じです。
ナウル大統領官邸は国民の暴動により焼失。
海外と繋がっていた電話回線が不通になり、国全体が音信不通になってしまいました。
国家破綻となると電気が止まり、水道も止まります。
政府も無策だったわけではなく、海外(オーストラリア、ニュージーランド、ハワイ)の不動産(ホテル・マンション)を買いまくり、1990年頃のバブル絶頂期の日本株でも運用していました。
しかし、リン鉱石輸出から不動産賃貸業や投資に切り替えたものの、保有していた不動産も売却して食いつなぐことになってしまいました。
また、財務大臣でさえ金融知識がほとんどない素人だったゆえ、投資で大損失となったり、詐欺案件に投資して多くの資金が消えてしまいました。
それだけではありません。
「元の漁業中心のナウルに戻す」ことではなく、
「いかに働かなくてお金を得るか」という考え方に陥ったことから、崩壊を加速させました。
wikipedia.org ナウル国際空港
いかに働かなくてお金を得るかが崩壊を加速
お金さえ払えば、簡単に銀行(オフショアバンク)を設立できるようにしたことから、マフィアなどの汚れたお金の洗浄「マネーロンダリング」の場になりました。
お金持ちが自分の名前の銀行設立することもあったことでしょう。
テロリストなど無法者に不法パスポートを発行することもビジネス化しました。
つまり、ナウル共和国の国籍を販売したのです。
テロリスト組織を支援したことから犯罪支援国となり、世界からの信用も失墜してしまいました。
また、日本、オーストラリア、台湾、中国に対して言葉たくみに資金援助を引き出すことにも力を入れました。
乞食のようになってしまったのです。
国は破綻、国民も破綻、失業者だらけ、肥満・糖尿で早死にします。
失業率は9割、残りの1割の95%が公務員。
犯罪も増加しました。
世界で有数の富裕国が、あっという間に、破綻国になってしまいました。
天国から地獄に堕ちたのです。
「いかに働かなくてお金を得るか」という考え方が危険だということが分かります。
仕事の概念も失われた
国が破綻すれば、ベーシックインカムは当然無くなります。
およそ30年間仕事をしなかったことから国家破綻しても彼らは働きません。
「仕事」という概念すら無くなり、働く意味も分かりません。
生まれてから一度も働いたことがない人も多かったのです。
肥満、糖尿病で体が病になっただけではなく自分たちで働いて価値を生み出すという思考も破壊されてしまったのです。
昼は陽射しが強いため外出せず、夜は停電しているので暗くなるとすぐに寝る何もしない生活です。
「働くとはどういうことか」から教育が必要になりました。
ベーシックインカム制度の是非
ベーシックインカムが良いか悪いかの議論があります。
人々のマインドセットが良ければ良い制度ですが、マインドセットが悪いと悪い制度になると思います。
福島原発事故などの被災者に、補助金を給付したら、働かずにパチンコ三昧になった人が多かったそうです。
支給金額にもよりますし、
制度設計にもよりますが、
ベーシックインカムの制度が良いか悪いかではなく、
人によって良かったり、悪かったりするということです。
正しいマインドセットとは
ベーシックインカムは正しいマインドセットでないと問題になります。
正しいマインドセットと間違ったマインドセットを対比しました。
正しいマインドセット
・お金は使命に進むためにある
・仕事とは使命を達成するチームとして自分の役割を全うすること
・仕事は使命であり、世の中を良い方向に本質的に変革すること
間違ったマインドセット
・お金は生活するためのもの
・自由気ままに生きるためにお金は多い方が良い
・生活費を稼ぐために仕事をする
皆が普通に考えていることが間違ったマインドセットなのです。
経済的に自立した早期リタイア「 FIRE」を目指している人が急増していますが、目指すところが間違っているといえるでしょう。
こちらを合わせてお読みください。
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学ぶこと
ここから学ぶことが沢山あります。
・お金は大切だが、お金があれば幸せとは限らない
・仕事や使命が無いと人は堕落する
・働かなくても生きていける状況は人を堕落させる
・働かずに稼ごうとすると危険
・計画性が大事
・資源国だから安心ということはない
・投資するにも知恵を使う必要がある
・ストックを消費するだけの生活は続かない
・仕事には尊い価値がある
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