米国の対日・独貿易赤字に要注意
米貿易収支
最近では多く議論されなくなった米貿易赤字だが、2020年の922,026(百万ドル)を考慮すれば、当の米国だけでなく対米黒字国にとっても無視できる額ではなくなった。
ここ半年のドル高は米金融政策の転換という米国自らの要因が発端だが、それが輸出競争力の減退を招いている現実に照らせば、ご都合主義の米国のこと、この先日独の通貨当局の無策を問題視する発言を出しかねない。
こうした趣旨の発言が僅かでも出れば、ドルは急落するに違いない。日米通商交渉が佳境に入った1990年代前半、当時のクリントン政権は「日本の(米国からの)輸入増と円高ドル安を天秤にかけ、貿易収支不均衡の是正を日本に促した」。
当時の細川政権は輸入増の要求を蹴ったが、これで円高ドル安が昂進したのは言うまでもない。日本政府が日夜円高恐怖に脅える中、95年にドル円相場は当時の歴史的円高となる「1ドル=79円75銭」を記録した。
為替関連本では名を残した『良い円高、悪い円高』( 著 :リチャード・クー)が飛ぶ様に売れたのは、この頃である。翻って足下の円安は、「日本の貿易構造が変化したことから日本の輸出増につながらない一方で、国内の物価高を招くために『悪い円安』と揶揄される。皮肉なことである。
半年先に米大統領の中間選挙が迫る。ロシア・ウクライナ戦争に時間と金をつぎ込んできたバイデン大統領は国内景気にも真剣に取り組まざるを得なくなった。物価高と金融引締めで先々の内需が懸念され出した米国にとって、外需増が求められるのは当然だ。
強いドルを気にし出す日はそう遠くないと思われる。そろそろ、米要人から日米不均衡に何らかの言及があっても不自然でない。月々の米貿易収支と対日赤字額にも目を向けておきたい。さらには間もなく発表されるであろう『為替政策報告書』(例年は米財務省が4月に公表)にも要注意である。
対ドルでユーロ安が昂進しているが、ドイツも対米黒字の大きい国だ。米サイドが対独貿易不均衡を懸念し出せば、ユーロ安ドル高の巻き戻しが一斉に起きるため、要注意である。
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