相場の思考法
1.短期市場心理を読む
為替市場の一日は、オセアニアから始まり東京・ロンドン・ニューヨーク、そして再びオセアニアという流れでメインの市場が移っていきます。
次のチャートは金曜日の朝、つまり翌日が休日となる朝から、翌日土曜日の朝までのチャートです。
背景
米金利上昇局面でドル堅調地合いが継続中という背景がある中、市場オープン直後に発表された米CPI(景気指数)が予想を大きく下回ったためドルが大きく売られてからスタートし、このような動きになりました。この市場心理を推測してみます。
短期市場心理推測
①米CPIが予想を大きく下回ったため市場が驚いてドルが大きく売られたが押し目で買われた。
米金利上昇局面が続く中、ドルを買いそびれていた参加者のドル買い。
②予想外の指標結果でもドルが、あまり売られなかったことから
ドル高基調が続くと見た東京勢の短期試し買い。
③水準的に、事業の採算が合うと判断した輸出企業がドル売りに出るなどで、
上値が重いと判断した日計りディーラーのロングの落とし。
④ドル高基調の中で朝方ドルを買いそびれた有象無象の参加者のドル買いが押し目で入った。
⑤やや上値の重い展開の中、日計りディーラーなどが翌日に休場を控えて、
ポジション調整でドルを売った。
市場心理を推測していくことで相場の本質を理解していくことになります。
2. イベントとポジション
一般的に投機筋は週の初めからドルロングのポジションを取ると考えられるが、公表前のロングの落としに注意が必要です。
背景
基調ドル高の中、良好な予測の米雇用統計が週末に控えている。
1週間の市場心理
統計発表週の相場の流れは「①~④」ですが、時系列を追いながら市場の心理を考えてみました。
①基調ドル堅調地合いが継続する中、週末に公表される米雇用統計の予測が良好なため、投機筋がドル買いに動いた。
②予測が良くても結果は別であり、ドルロングの投機筋は不安を抱えている。
週初からのドル買いに過熱感が強まるに連れて、不安を抱えた投機筋のポジション調整(ドル売り)が徐々に出始め、市場の大勢もロングを投げに出た。
③ドルを買いそびれていた向きが押し目で買いに出た。
②のポジション調整に乗じたショートが踏まれた。
④元々基調ドル高の中良好な統計を控えている状況下、ロングの投げが出た後だけに市場全体に買い安心感が広まった。
なお、予測が悪い場合は、上の逆(ショートの踏み上げ・・・ドル反発)に要注意となります。
3. 投機取引と実需取引の違い
以下項目の3.1~3.3を見た後にお読みいただくことをお勧めします。
投機的為替取引は為替を売買するので利益(P)を上げようとする取引です。(※図1)
分かりやすくドル買い円売りを例に取れば、ドルを買った水準(レート)よりドル高水準で売れば、Pを得ることができます。反対にドルを買った水準よりもドル安水準で売れば、損失(L)が出ます。
Pを確定する際にも、Lを確定する際にも、当初の取引(ポジション・テイキング)と反対の取引(この例ではドル売り)を行う必要があるということです。「当然」と言ってしまえばそれまでですが、この点は実需の為替取引と大きく違うという点は相場を理解する上で重要なことです。
投機取引では「昨日の買い手は今日の売り手」となる一方で、実需(一般に輸出入)の為替取引では、反対取引がでません。
具体例では、ドル建て輸入を行う本邦企業の為替取引はドル買い円売りですが、これは単純に輸入代金(ドル)を支払うための取引ですから、その先の為替動向に関わらず反対取引はでません。(※図2)
3.1 投機取引の為替需給への影響
投機
ドルの上昇狙い
1.投機家 ドル買い円売り(ロングポジション発生)
2.利益(P)確定:買値よりもドル上昇→ドル売り円買い(反対取引)
3.損失(L)確定:買値よりもドル下落→ドル売り円買い(反対取引)
重要:投機のドルの買い手(ドル需要増)は将来のドル売り手(ドル供給増)となる
・・・ドルの下落局面ではロングの損切りが続出するため、ドルの下落を加速。→【※図3】
「昨日の買い手は今日の売り手」ということです。
3.2 実需(輸出入)取引の為替需給への影響
実需(輸出入)
米国からのドル建て輸入
財(モノ)の輸入→ドルの支払→ドル買い円売り→米輸出者にドルの支払(輸入取引は完結)→反対取引は発生しない
重要:実需のドル買いは一時的にドルの需要を高めるだけ
3.3 ドルロングの反対取引がドル下落を加速
①:ドルが伸びない・・・少しロング派が懸念
②:ロング勢の戻り売り(赤線が上値をキャップ)
③:徐々にロングの切りが出始める
④:耐えきれなくなったロングの投げ