オルタナティブ投資の種類と特徴
オルタナティブ投資とは
オルタナティブ投資とは、直訳すると「代替投資」と言われている。
平易に説明をすると、「株、債券以外はオルタナティブ投資に該当する」というものだ。
これまでの資産運用は、伝統的なアセットクラスを中心に行われてきた。しかし、オルタナティブ投資は、運用のパフォーマンスを向上させるために、株や債券以外のものを投資対象として投資を行う。
そのためオルタナティブ投資というのは、かなり広義な範囲を示していると言えるだろう。
コモディティや未公開株、インフラ投資からエネルギー投資等全てオルタナティブ投資の範囲に含まれている。
オルタナティブ投資と聞くと難しく考えそうだが、「ポートフォリオ(資産構成)の多様化」という言葉にすると簡単に理解できるだろう。
大口投資家がリスクヘッジのためにポートフォリオを分散化して安定した運用を行うことを目的とするための投資となっている。
オルタナティブ投資の目的
オルタナティブ投資の目的は、
1.伝統的アセットクラスが値下がりした場合のリスクヘッジ
2.リスク/リターンのパフォーマンスの向上(リスクを軽減しながらパフォーマンスを最大化すること)
3.リスクの軽減(リスク量が調整可能)
の3点が大きな目的として挙げられる。
つまり、全く株や債券と値動きが関係ないものにもポートフォリオの一つとして導入することで、より安定して効率的なパフォーマンスを出すことに寄与する投資対象と言えるだろう。
オルタナティブ投資には、実際にどのような種類があるのか次項から解説したい。
オルタナティブ投資の種類
ここからは、オルタナティブ投資の代表的なものをいくつか紹介していく。
全てをご紹介するのは不可能なので、いくつかに絞って紹介していきたい。
プライベートエクイティファンド
プライベートエクイティファンドには様々な種類があるが、一括りで説明すると「企業に関与して企業価値を上昇させ、キャピタルゲインを得るファンド」を示している。
プライベートエクイティファンドにも、以下のような種類がある。
・ディストレスト:企業業績が悪化した企業の株式や債券を安価に買い入れて企業価値を向上させリターンを得ることを目的とする投資方法
・バイアウト:企業を買収し、企業価値を向上させ、上場や売却等でリターンを得ることを目的とする投資手法
・ベンチャーキャピタル:調達したい若いベンチャー企業に投資を行い、企業価値を上昇させてリターンを得ることを目的する投資手法
プライベートエクイティファンドはある程度大きなリスクを取り、大きなリターンを得ることを目的とするものとして利用されることが多い。
ヘッジファンド
ヘッジファンドは相場の歪みや市場における癖、情報格差による隙を発見しつつ絶対リターンを追求するファンド。
運用手法やリスクの取り方はヘッジファンドによって千差万別であり、ヘッジファンドというのはマーケットで絶対リターンを追求するファンドの総称と考えるべきだろう。
ヘッジファンドの投資手法の種類はいくつかあるが、抜粋して説明する。
・イベントドリブン:イベント時に大きく動くところを利用してリターンを得る手法
・レラティブバリュー:相対的に割高、割安の商品を比較しながら発見してリターンを得る手法
・グローバルマクロ:投資対象は明確に定めておらず、世界中の株式や債券、コモディティ等を投資対象とする手法。大規模なヘッジファンドがこの戦略を取っていることが多く、伝統的なアセットクラスにも投資を行う。
その他にもまだ種類はあるが、共通しているのは基本的にマーケットの値上がり局面でも値下がり局面でも収益を狙いに行くことだ。そのため、伝統的なアセットクラスとの相関関係は低いことから、ポートフォリオの分散化の一つとして大口投資家が利用している。
不動産、コモディティ
不動産やコモディティもオルタナティブ投資の代表的な種類の一つである。株や債券とは相関関係が薄く、大きな金額を運用できるという投資対象となれば不動産という選択肢は運用担当者としては選択しやすい資産だろう。
不動産はオルタナティブ投資という言葉が聞かれ始めた時から代表的なプロダクトである。シャープレシオと呼ばれるファンドのパフォーマンスを安定して向上させるための一つのプロダクトとして利用され続けてきた。
現在でも安定したキャッシュフローが見込めることから、資産全体の一定割合を不動産で運用しているファンドも多く、今後も不動産ニーズがなくなることはないだろう。
また、コモディティと呼ばれる金や銀、原油等資源関連のアセットクラスもオルタナティブ投資の一つの投資対象である。特に金ついては「有事の金」と呼ばれるほど、何かあった場合にはとりあえず金を保有しておけば安全であるという格言があるほどだ。
金の埋蔵量は現在プール4杯分弱と言われており、採掘できる量には限界があると言われている。つまり、需給の関係で考えると供給量に限度がある中、金の需要というのは恒常的に発生するため、価格は上昇しやすいという特性がある。
そのため、インフレヘッジのために金を保有するということで利用されたりもするほど、投資家には人気の投資対象となっている。
インフラ投資
インフラ投資は水道やガス、鉄道、発電所等生活に密接に関連した事業に対しての投資を行うことを意味している。
インフラ投資は生活に必要なものであるため、景気が後退した場合でも資産価値が維持しやすく値崩れしにくいという特徴がある。そのため、ポートフォリオの中に一部安定したキャッシュフローや利回りが出るものを入れておきたいというニーズに対応している投資対象と言えるだろう。
また、長期的な視野で投資をする必要があり、短期売買で行うことはあまりない。
オルタナティブ投資の効果
では、実際にオルタナティブ投資を行うことによって伝統的なアセットクラスとのリスク分散がどの程度図ることができるのかみてみよう。
下記はピクテ投信投資顧問の記事から抜粋
赤丸の「金」と伝統的なアセットクラスの相関をみてみると、ほぼ0.3以下に収まっており、相関関係がほとんど生まれていないことがわかる。
金は通常は「リスク回避資産」として投資家から認識されており、債券価格が上昇する過程で、併せて上昇しやすいと言われている。
そのため、日本国債との相関係数は0.4以上となっていることから、相関関係が計測期間の一部では高まっている局面があることがわかるだろう。
しかし、総じて0.5以下の数値ということを考えると、ある程度独立した動きをしていると考えるべきだ。
また、下記はリスクアセットのリスク値を示したものだが、オルタナティブ投資は伝統的なアセットクラスと比較してもリスク値は小さな値となっている。このリスク値はオルタナティブ投資で種類を変更することによって調整が可能だ。当然ながら、リスク量が大きく期待リターンも大きいものもあるため、一概に下記のリスク値が全てではないことに留意しておきたい。
このようにオルタナティブ投資をポートフォリオに組み入れることによって、ファンドのパフォーマンス指標の一つである「シャープレシオ」の向上、そして安定した利回りを確保することが可能だ。そのため、機関投資家等大口投資家には必須の投資方法となっている。
現在では「仮想通貨」もオルタナティブ投資の対象資産の一つとして考えられており、よりオルタナティブ投資の種類が増加することだろう。