ドルの強気・弱気要因を踏まえての相場予測
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Ⅰ.早読み先週のドル円相場(寄り付きは東京午前9時の気配値、NY終値は現地午後5時の気配値)
週初12日:寄り付き105.63。
東京:オセアニア市場で105.82を付けた後の東京では、日経平均株価の下落に連れて105.44まで下落したが、その後は米国休日を控えて105円半ば近辺で模様眺めの展開。
その後の海外では、米追加経済対策の協議難航から105.25まで下落。
NY午後5時気配値105.34。
13日:寄り付き105.35。
東京:中国がオーストラリアからの石炭輸入を止めていたとの報でリスク回避の地合いとなり、105.29まで下落し、その後も上値の重たい展開が続いた。
NY:米株が軟調に推移する中、最近の風潮となっているリスク回避のドル買いとなり、
105.62まで上昇するも上値は重く、105.45まで反落。
NY終値105.48。
14日:寄り付き105.48。
東京:仲値にかけてのドル売りで105.31まで下落するも、その後は軟調だった日経平均株価がプラスに転じたことから105円半ばまで反発。
NY:対欧州通貨でドルが売られたことや米株が軟調となったことから、ドル円は軟化。
その後、ムニュシン財務長官による「米大統領選までに追加経済対策の合意は難しい」との発言が報じられると、105.04まで下落。
NY終値105.16。
15日:寄り付き105.14。
東京:仲値にかけてのドル買いで105.30まで上昇するも、その後の伸びはなく、同水準近辺で膠着。
NY:欧州時間ではブレグジット交渉の膠着や欧州での新型コロナ感染拡大への懸念から、ドル買い・円買いとなり、105円台前半で揉み合う展開となった。
こうした展開を受け継いだNYでは、対欧州通貨でドルが堅調となる一方で、米金利が上昇したことを受けて、ドル円は一時105.50まで上昇。
NY終値105.42。
16日:寄り付き105.36。
東京:一時105.19まで下落するも、対ユーロでドルが堅調となっていることがドル円にも影響し、105.30台へと小反発。
NY:英仏などでコロナ感染拡大による行動規制が強化されていることや、
9月小売売上高が予想を上回ったことから、ドルが対ユーロで堅調。
こうした中、米長期金利が上昇したこともあり、ドル円は105.44まで上昇。
NY終値105.40。
Ⅱ.長期相場分析(週足チャートをご参照下さい)
2017年のドル最高値は114.73(11月6日)、そして2018年の同最高値も114.55(10月4日)に止まり、115円が超長期のドルの抵抗水準になっている。
2月17日週にトランプラリーの最高値118.66(2016年12月)近辺を起点とする抵抗線を抜き、昨年の最高値112.40に迫ったが、高値は112.23に止まった。
ここ数年の高値圏である114円台では上値が重たいという値覚えがあるため、112円台を超えての積極的なドル買いは見られず、長期的に112円台前半が強い抵抗水準との認識が生まれた。
3月下旬に年初来高値112.23(2月20日)を試したが、結果は111.71(3月24日高値)止まりと、111円台後半でもドルの上値の重さが確認されている。
111.71を付けて以降、下降チャンネルの中で推移しており、ドルの軟調地合いが継続している。ドルの上値が切り下がる展開が続く中、9月には7月の安値104.20を下回る104円丁度まで下落しているため、年末に向けては大きな節目の100円を目指す可能性もあるか。
**中期予測レンジ:101.00~111.00
**上値メド水準
108.16(7月1日高値)
109.85(6月5日高値)
110.00(サイコロジカル)
111.71(3月24日高値)~112.23(年初来高値)
**下値メド水準
104.00(9月21日安値)
101.18(3月9日安値)
100.00(サイコロジカル)
99.00(2016年安値)
Ⅲ.今週のドル円相場テクニカル分析
前回予測のポイント
- ドルの上値を抑える複数のテクニカル・ポイントが106円台後半に集中しているため、
今週も106円台前半で上値が重たい展開が続くとみる。 - 転換線が基準線を上抜いていることやスポットが25日MAを上抜いているため、
短期的にはドルが強含む可能性もあるが、106円台前半で上値は限定されよう。 - 直近最安値104.00を起点とする暫定支持線TSを引くことも可能だが、
これが機能する様であれば、雲の上に出る可能性もあり得るか。 - 直近最安値104.00を起点とする暫定支持線TSが下抜ける様であれば、105円割れもあり得る。
予測レンジ:104.00~106.50
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前週の相場に思う
値幅105.04~105.82の週となり、週終値は概ねその中間値となる105.40前後となった。前々週も同じ状況である。
ストラテジー・アイディアの一つとして「打診的に日計りディールとして105.80前後からの売り」を挙げているが、前週の戻りもそのレベルである。なかなかグッド・ポジションを持てる水準(106円前後~半ば)までは戻ってくれない相場展開が続いている。所謂「戻り待ちに戻りなし」状態である。
他方、ロングするのであれば、売りに過熱感が生じた時以外は難しい状況が続く。ただ、ドル売りに過熱感が生じているというサインもオシレーター系チャート(特に短期RSI)に見られず、値幅の取れるロングのタイミングも出現していない。
総じて言えば、ショートポジションはテクニカル・ポイントの集中している水準で作り、ロングポジションはオシレーター系チャートが過熱感を示すまで待って作る、そうした状況を待つことに徹するしかないのかもしれない。
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以下ではドルの強弱要因を指摘した上で、上で述べた点を軸に今週の予測をまとめた。
ドルの弱気要因
- 111.71(3月24日高値)と109.85(6月5日高値)とを結んで引ける抵抗線TR1(日足チャート)が前週末に106.60前後へと下降してきた。
- (1)との関連で抵抗線TR1と下方に平行に引くことのできるTR2とで
下降チャンネルTR1-TR2が形成されている。
上値メドであるTR1を上抜くまで、トレンドは下向き。 - 25日MA(前週末105.39)・100日MA(同106.39)・200日MA(同107.38)の関係において、順番に期間の短い線が長い線とデッドクロスしている。
・・・25日MAと100日MAとのデッドクロスの関係が根強く続いている。 - 4月以降(除く6月初旬の約1週間)では完全に100日MAが抵抗線として機能している。
- 106円台前半~後半に複数のテクニカル・ポイントが集中。チャートポイントの106.94(8月28)と同水準が「111.71→104.00」の38.2%戻しに当たる。
前述TR1が106.60前後にあり、そして100日MA(前週末106.39)がその直下に位置する。 - 前週は雲に捻じれが生じ、雲が薄くなった(前週末105.98~106.07)にも関わらず、
スポットがその上に出ることができなかった。 - 直近最安値104.00(9月21日)を起点とする支持線TSが壊れた。
- 7月1日高値108.16を起点とする新たな抵抗線RR(前週末105.95前後)が機能する可能性が出てきた。
ドルの強気要因
- 9月21日に104.00を付けたものの、104円を割り込んでいないため、改めて104円台ではドルが底堅を示した格好となっている。
・・・2018年以降では、104円を割り込んでいない(3月のフラッシュクラッシュ相場は考慮していない)。 - 緩やかに上昇しながら転換線(前週末105.57)が基準線(同105.12)の上で推移している。
- 105円が5円刻みの節目として意識されている。
以上の強弱要因に照らして、以下の様に今週の予測をまとめた。
今週のまとめ
週間値幅は3週連続で1円以内に止まっているため、強い方向性は出ていない。
ただ、長期抵抗線TRが確実に機能しつつ106.60前後まで降りる中、確実に106円近辺で上値が重たくなっているため、依然として下方リスクが高い状況が続いている。こうした状況下、より現実的な抵抗線として7月1日の高値108.16を起点とするトレンド線RR(前週末105.95)が出現しているため、一段と下値リスクが高まる可能性が高い(ストラテジー・アイディア参考図)。
既に直近最安値104.00(9月21日)を起点とする支持線TSは壊れており、トレンドとしてのドル上昇は難しいと見られる。
足下の相場ではドルが小反発するのは、そこそこ売りに過熱感が生じた時だけである。大きな反発が出るとすれば、少なくても9日間RSIが30%を切る様な状況と見る。同RSIは前週末時点で46%台とまだ低下余地を残す。
今週は、ドル弱含み保ち合いと見るが、104.95(10月2日安値)~105.00(5円刻みの節目)を
割り込む様な展開では、104円台前半までは比較的早く下落する可能性が高いと予測する。104円台水準にはチャートポイントがあることや、9日間RSIが30%以下に低下する可能性があることから、一度下げ渋ると見るが、戻りが弱い様であれば、104円割れもあり得よう。
予測レンジ:103.70~106.50
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Ⅳ.チャートポイント
**レジスタンス
106円前後~106.11(RR、10月7・8日の高値、雲の上限)
*106.39(前週末100日MA)
**106.60前後(前週末のトレンド線TR1)
106.94[8月28日の高値、(38.2%戻し、111.71→104.00)]
*107.05(8月13日の高値)
107.38(前週末200日MA)
107.85(50%戻し、111.71→104.00)
*108.16(7月1日高値)
108.76(61.8%戻し、111.71→104.00)
*109.85(6月5日高値)
110.00(心理的節目)
**サポート
105.04(10月7日安値)
*104.95(10月2日安値)~105.00
**104.00(9月21日安値)
103.67[76.4%戻し、101.18(3月9日)→111.71(3月24日)]
102.65前後~102.40前後(今週中のTR2)
**101.18(フラッシュクラッシュ時3月9日の安値)
Ⅴ.今週のポイントとストラテジー・アイディア
今週の注目材料
*米国
・FRB要人講演
19日:パウエル議長、クラリダ副議長
20日:ブレイナード理事
21日:ブレイナード理事
・経済統計他
20日:9月住宅着工件数
21日:ベージュブック公表
22日:9月中古住宅販売件数
大統領選討論会
23日:10月製造業・サービス業PMI
・他
過去最悪となる米財政赤字と米国債格下げ懸念(ドル売り)。
追加経済対策論議は食傷気味。英仏など欧州主要国において新型コロナ感染拡大が深刻化しているため、対欧州通貨でドルをサポート。
これに関しては、リスク回避通貨としてドル買い・円買いとなっているが、相対的にはドル買いに強く反応している感あり。
*ユーロ圏
22日:ユーロ圏10月消費者信頼感指数
23日:ユーロ圏10月製造業・サービス業PMI
今週のストラテジー
ストラテジー
*基本ストラテジー:下降トレンドが継続しているため、依然として基本ストラテジーはドルの戻り売りに置く。
推奨水準:106円前後~106円半ばでの戻り売り
・理由
- 106円台に複数のテクニカル・ポイントが集中。111.71(3月24日高値)を起点とする抵抗線TR1が106.60前後まで降りてきた一方で、強い抵抗線の100日MAが前週末に106円前半(前週末106.39)まで降下してきた。
その上には、重要なチャートポイントである106.94(8月24日高値)とフィボナッチ水準の[8月28日の高値、(38.2%戻し、111.71→104.00)]の存在がある。
これらの存在を考慮すると、その手前の「106円台前半」は売りが集中しやすい。 - 7月1日高値108.16を起点とするトレンド線RR(前週末105.95前後)がより
現実的な抵抗線(参考図を参照)となりつつあり、早い時期にドルが崩れる可能性が出てきた。
・・・参考図
この点では前週に引き続き、105.80近辺での試し売りも一手か。
注)利食い・損切りは個人のトレーディング・スタイルやトレーディング・スパンが異なるため、特に推奨水準はありません。
コメントや推奨水準は単なる筆者の分析結果であり、その水準での取引を勧めるものではありません。
投資の最終判断は自己責任で行ってください。
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