2年後には10年国債利回りは3.5%程度に上昇へ

高市首相の積極財政政策への不安から長期金利が急速に上昇
日本の長期金利が急速に上昇している。高市氏が自民党総裁に選出されたのが10月4日、自民党と日本維新の会との連立によって首相に選出されたのが10月21日だった。
高市首相は「責任ある積極財政」を掲げる。経済財政諮問会議の民間議員に大胆な金融緩和と積極財政を提唱するリフレ派の論客を起用するなど、積極財政策の正当化へと足場を固め、財政再建が必要とするエコノミストや市場関係者の懸念に耳を貸さない。
積極財政政策の第1弾として、11月21日に一般会計で約17.7兆円、減税・特別会計を合わせた国費等で約21.3兆円の大規模経済対策を打ち出した。
高市首相は、14日に、財務省がまとめた当初案の規模(一般会計で14兆円程度、総額で17兆円程度)をみて、「しょぼいどころではない。やり直し」と指示し、結果的に、対策規模が拡大していったようだ。補正予算案では一般会計歳出18.3兆円のうち、11.7兆円を国債の追加発行で賄うことになった。
高市首相は、補正予算で追加されても今年度の国債発行額は40.3兆円にとどまり、前年度の42.1兆円より少額に抑えたことで「財政の持続可能性にも十分配慮した姿を実現することができた」と自賛した。だが、ストックとしての国債残高は増加している。
2023年度末の1,054兆円から24年度末に1,104兆円(前年度比4.7%増)と増加した後、これに補正予算後の国債発行額40.3兆円が追加されるとすれば25年度末の国債残高は1,144兆円(前年度比3.6%増)と累増していく見通しだ。
こうした高市首相の積極財政スタンスで、為替市場では円安が進み、債券市場では債券売り(債券利回り上昇)が進んだ。
一方、高市首相は、マクロ経済政策の「最終責任は政府にある」と述べ、金融政策についても政府が責任を持つのが良いとの考えで、過去、利上げに否定的な発言をしていたこともあって、利上げ時期は先送りされるとみられていたが、11月18日に就任後初めて植田日銀総裁と会談した。
植田総裁は、利上げは金融引き締めではなく「インフレ率が2%で持続的・安定的にうまく着地するように徐々に金融緩和の度合いを調整」するための措置との説明をした模様だ。
就任後の円安が物価上昇を助長するのではないかとの危機感を抱きつつあった高市首相は、利上げ容認の姿勢に傾いたようだ。
12月1日に、植田総裁は「12月会合で利上げの是非を判断したい」と述べた。今年1月会合の直前にも、氷見野副総裁が「来週の金融政策決定会合では、利上げを行うかどうか議論し判断したい」と述べていた。
具体的に会合を特定して、「利上げの是非を判断する」との発言は、利上げの予告をとらえられているようだ。
11月は財政悪化とインフレを懸念し超長期債中心に利回りが上昇、
12月に入ると日銀の早期利上げ観測で中長期債利回りが上昇した
国債市場の動きをみると、10月中は1.65%~1.70%程度のボックス圏で推移していた10年国債利回りは、11月に入ると徐々に上向き始めた。
10年国債利回りは10月末の1.655%から11月末には1.805%へと1か月で0.150%ポイント上昇し、さらに直近12月5日には1.950%へとわずか1週間で0.145%ポイント上昇した。
同様に、5年国債利回りは10月末の1.225%から11月末には1.318%へと1か月で0.093%ポイント上昇し、さらに直近12月5日には1.428%へと1週間で0.110%ポイント上昇した。
一方、超長期債利回りの動きをみると、20年国債利回りは10月末の2.591%から11月末には2.828%へと1か月で0.237%上昇し、その後、直近12月5日には2.911%へと1週間で0.083%ポイント上昇したが、直近1週間の上昇幅は5年国債、10年国債ほど大幅でなかった。
また、30年国債利回りも10月末の3.050%から11月末には3.339%へと1か月で0.289%上昇したが、その後、直近12月5日には3.354%と、1週間での上昇幅は0.015%ポイントにとどまった。
10月末から直近12月5日までの5年国債利回りの上昇幅は0.203%ポイント、10年国債利回りの上昇幅は0.295%ポイント、同20年国債利回りの上昇幅は0.320%ポイント、同30年国債利回りの上昇幅は0.304%ポイントと、5年国債の上昇幅が小さかったほかは、10年・20年・30年国債利回りの上昇幅はそれぞれ0.3%ポイント程度で同程度だった。
こうした中期債、長期債、超長期債利回りのそれぞれの動きをみると、11月中の国債利回りの上昇は20年物、30年物といった超長期国債が中心で、12月に入ってからは利回り上昇は10年物が中心になった。
11月中に大きく上昇していた30年国債利回りは12月に入ると上昇が一服し、逆に、11月中はさほど上昇していなかった5年国債利回りが12月に入ると上昇し始めた。
11月中は高市首相の財政拡張政策が日本の財政状況を一段と悪化させ、円安を伴ったインフレ助長につながるのではないかとの懸念から、国債市場では特に20年物、30年物といった超長期国債が売られ、利回りが上昇していたと考えられる。
その後、12月に入ると、日銀が12月会合での利上げに踏み切る姿勢をみせたことから、円安とそれに伴うインフレ懸念も和らいで、超長期債の利回り上昇にも一定の歯止めがかかったが、利上げに伴う短期金利上昇が5年物、10年物といった中長期債の利回りを押し上げたのではないかと考えられる。
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2025/12/8の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。















