ドルの強弱要因を照らした相場予測
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Ⅰ.早読み先週のドル円相場(寄り付きは東京午前9時の気配値、NY終値は現地午後5時の気配値)
週初9月28日:寄り付き105.59。
東京:仲値にかけての実需のドル売りで105.36を付けた後に小反発するも、戻りは売られ105.26まで下落。
NY:海外でもリスク回避の円買いが後退する中、105.67まで強含むも、上値は重く105円半ばへと反落。
NY終値105.54。
29日:寄り付き105.45。
東京:朝方からドル売り優勢の展開となり仲値直後に105.35まで下落するも、
その後は日経平均の堅調な動きに連れて105.64まで上昇。
NY:欧州時間にクロス円の買いに支えられる格好で105.74を付けるたが、
その後はトランプ・バイデン討論会を控えて高値近辺で模様眺めの展開。
NY終値105.69。
30日:寄り付き105.67。
東京:前日のNYに発表された米7月住宅関連指数や米9月消費者信頼感指数が良好だったことを受けて、ドル買いが先行する展開に105.80を示現するも、トランプ・バイデン討論会では建設的な議論がなされなかったことに嫌気したドル売りで105.41まで反落。
NY:9月ADP雇用統計が予想を上回ったことや9月シカゴPMIも予想を上回ったことから
105.74まで上昇するも、同水準近辺では上値が重く105.41まで反落。
NY終値105.44。
10月1日:寄り付き105.45。
東京:東証がシステム障害で売買停止になったものの、為替相場への影響はなく105円半ば近辺で動意薄の展開となった。
NY:8月PCEデフレーターが前年比で1.6%まで上昇したことを受けて、105.73まで上昇。
しかしながら、その後に公表された9月ISM製造業景況指数が予想を下回ったことから、105.53まで反落。
NY終値105.56。
2日:寄り付き105.50。
東京:午前中は105.50~65でやや堅調に推移していたが、午後に入るとトランプ大統領がコロナに感染したとの報が流れると、米政局への不安が広がり低リスク通貨の円が買われ、104.94まで急落した。ただ、同水準近辺では底堅く、その後は米9月雇用統計を控えてのポジション調整で105円台へと小反発。
NY:トランプ大統領の感染を受けて米株が軟調となり、リスク回避の円買いでドル円の上値は重く、105円台前半での推移。
ただ、米雇用統計はNFPが予想を下回ったものの、失業率が予想よりも低かったことから、市場への影響は軽微。
NY終値105.34。
Ⅱ.長期相場分析(週足チャートをご参照下さい)
2017年のドル最高値は114.73(11月6日)、そして2018年の同最高値も114.55(10月4日)に止まり、115円が超長期のドルの抵抗水準になっている。2月17日週にトランプラリーの最高値118.66(2016年12月)近辺を起点とする抵抗線を抜き、
昨年の最高値112.40に迫ったが、高値は112.23に止まった。
ここ数年の高値圏である114円台では上値が重たいという値覚えがあるため、112円台を超えての積極的なドル買いは見られず、長期的に112円台前半が強い抵抗水準との認識が生まれた。
3月下旬に年初来高値112.23(2月20日)を試したが、結果は111.71(3月24日高値)止まりと、
111円台後半でもドルの上値の重さが確認されている。111.71を付けて以降、下降チャンネルの中で推移しており、ドルの軟調地合いが継続している。ドルの上値が切り下がる展開が続く中、9月には7月の安値104.20を下回る104円丁度まで下落しているため、年末に向けては大きな節目の100円を目指す可能性もあるか。
**中期予測レンジ:101.00~111.00
**上値メド水準
110.00(サイコロジカル)
112.23(年初来高値)~112.40(2019年最高値)
114.55(2018年10月4日高値)
114.73(201711月6日高値)
115.00(2017年11月以降の展開で意識された強い心理的水準)
**下値メド水準
104.00(9月21日安値)
101.18(3月9日安値)
100.00(サイコロジカル)
99.00(2016年安値)
Ⅲ.今週のドル円相場テクニカル分析
○前回予測のポイント
- 三役逆転が出現中であることや、長期抵抗水準となっているTR1(前週末107円前後)や100日MA(同106.68)が存在していることから、「106円台でのドルの上値は重い」と見られる。
- 雲が薄くなる(前週末106.17~105.96))ため、雲の上に出るチャンスもあり、
上抜けでは100日MA手前まで上昇する可能性あり。 - 長期抵抗線のTR1や100日MAの存在を考慮すると、106円台後半はロングの利食い場か有象無象の売りが出やすいと見られ、高値は同水準が精一杯。
- なだらかにドルが降下しているため、常に下値リスクが残り、25日MA(前の週末105.72)や前述の雲に上値を抑え込まれる様であれば、再び104円が試される展開も。
予測レンジ:103.70~106.70
○前週の相場に思う
トランプ米大統領のコロナ感染で104.94を付けるも、それ時以外は105円半ばを挟んでの保ち合い状態に陥った。一時105.80まで強含んだものの、25日MA(前週末105.61)や一目の雲(前週末の下限105.82)によって上値を押さえつけられたというイメージの強い週だった。
またトランプ騒動で104.94を付けた後の戻りも弱く、全体感としては上値が重たい印象が強かった。直近最安値104.00を付けた日から数えてフィボナッチ数の8日目に戻り高値105.80(9月30日)を付けたが、そこから上値が下がり始めているのも気に懸かる。
狭いレンジ内での保ち合い後に変化が起きやすく、前週の安値104.94を下回る様であれば、下方に動意づく可能性がある。
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以下ではドルの強弱要因を指摘した上で、上で述べた点を軸に今週の予測をまとめた。
ドルの弱気要因
- 111.71(3月24日高値)と109.85(6月5日高値)とを結んで引ける
抵抗線TR1(日足チャート)が前週末に106円台後半へと下降してきた。 - (1)との関連で抵抗線TR1と下方に平行に引くことのできる
TR2とで下降チャンネルTR1-TR2が形成されている。
上値メドであるTR1を上抜くまで、トレンドは下向き。 - 25日MA(前週末105.61)・100日MA(同106.60)・200日MA(同107.54)
の関係において、順番に期間の短い線が長い線とデッドクロスしている。
・・・25日MAと100日MAとのデッドクロスの関係が根強く続いている。 - 4月以降(除く6月初旬の約1週間)では完全に100日MAが抵抗線として機能している。
- 106円台後半に複数のテクニカル・ポイントが集中。
チャートポイントの106.94(8月28)と同水準が「111.71→104.00」の38.2%戻しに当たる。前述TR1が106.85前後にあり、そして100日MA(前週末106.60)がその直下に位置する。 - 転換線(前週末105.10)<基準線(同105.47)・終値(同105.34)<雲の下限(同105.82)
・遅行線<26日前の実勢相場となっており、三役逆転が出現している。
ドルの強気要因
- 9月21日に104.00を付けたものの、104円を割り込んでいないため、改めて104円台ではドルが底堅を示した。
・・・2018年以降では、104円を割り込んでいない(3月のフラッシュクラッシュ相場は考慮していない)。 - 転換線がやや上向く中、前週末の下髭が多少長い。
以上の強弱要因に照らして、以下の様に今週の予測をまとめた。
今週のまとめ
ドルの弱気要因(5)で述べた様に、複数のテクニカル・ポイントが106円台後半に集中している。
そして106円台前半には一目の雲の上限(今週中は106.17)の存在もあるため、相場が上に放れる可能性は相当に小さくなった。
さらには前週の高値は105.80と雲の下限(前週末105.82)に上値を完璧に抑えられた一方で、
25日MAも抵抗線化しつつあるため、ドルに対するセンチメントが弱気に傾いている。9月23日以降の保ち合いは下放れの可能性が高いか。チャートポイントの104.90を割り込む様であれば、104円台前半、さらには103円台後半もありえよう。
逆に104.85~90を攻め切れない場合は、ショートカットからの反発には注意しておきたい。
予測レンジ:103.70~106.20
Ⅳ.チャートポイント
**レジスタンス
105.61~80(25日MA、9月30日の高値)
105.82(23.6%戻し、111.71→104.00)
105.82~106.17(前週末雲の上下限)
*106.60(前週末100日MA)
**106.85前後(前週末のトレンド線TR1)
106.94[8月28日の高値、(38.2%戻し、111.71→104.00)]
*107.05(8月13日の高値)
107.54(前週末200日MA)
107.85(50%戻し、111.71→104.00)
*108.16(7月1日高値)
108.76(61.8%戻し、111.71→104.00)
109.85(6月5日高値)
110.00(心理的節目)
**サポート
104.90~94(9月23日安値、10月2日安値)
104.00(9月21日安値)
103.67[76.4%戻し、101.18(3月9日)→111.71(3月24日)]
102.65前後~102.40前後(今週中のTR2)
**101.18(フラッシュクラッシュ時3月9日の安値)
Ⅴ.今週のポイントとストラテジー・アイディア
今週の注目材料
*米国
- FRB関連
7日:FOMC(9月開催分)の議事要旨発表 - 米経済統計等
5日:9月ISM非製造業景況指数
6日:8月貿易収支
8日:卸売売上高(確報) - 他
トランプ大統領のコロナ感染・・・悪化懸念でドルショート(円ロング)が溜まったところに、早期回復ニュースでショートカットで反発も。
トランプ大統領自身が感染したことで、感染源とされる中国への圧力が増す可能性も。過去最悪となる米財政赤字と米国債格下げ懸念(ドル売り)。
新型コロナ景気対策法案で民主党・共和党が合意の可能性(リスク・オフとしてのドル買い)
副大統領候補による討論会・・・過去に副大統領候補の失言が敗北要因になったことから注目。
*日本
- 学術会議候補者外し問題が、菅首相にとって予想外に大きな汚点となる可能性。
- 10月1日に発表された日銀短観(9月調査)では大企業の下期(ドル円)想定レートが107.30まで引き下げられた。
ドルの上値が切り下がる中、輸出関連企業のドル売り水準が下がる可能性が高い
*ユーロ圏
5日:ユーロ圏8月小売売上高
今週のストラテジー
ストラテジー
*基本ストラテジー:下降トレンドが継続しているため、依然として基本ストラテジーはドルの戻り売りに置くが、ドルの戻りが弱くなり始めているため、売り水準を低めに構えている。
- 105円半ばからの売り上がり(短期日計り戦略だが、奏功する様であれば、
ある程度長目のポジションとしてキープ。浅目のストップ要)。 - 長目のポジションとして106円前後~106円半ばでの戻り売り
・理由
(1)106円台後半に複数のテクニカル・ポイントが集中。
111.71(3月24日高値)を起点とする抵抗線TR1が106.85前後まで降りてきた一方で、
強い抵抗線の100日MAが前週末に106.60まで降下してきた。
その上には、重要なチャートポイントである106.94(8月24日高値)と
フィボナッチ水準の[8月28日の高値、(38.2%戻し、111.71→104.00)]の存在がある。
・・・参考図
これらの存在を考慮すると、その手前の106円台前半は売りが集中しやすい。
前週に僅かながら104円台を覗いていることと合わせ見ると、早めに売り仕掛けが出やすい状況にある。
(2)一目関連では三役逆転が生じているため、ドルの地合いがそれ程良くない。
転換線(前週末105.10)が基準線(同105.47)方向に向かい出しているが、
この状況の中で「好転」しない様であれば、ドルの地合いは一段と悪化するか。
注)利食い・損切りは個人のトレーディング・スタイルやトレーディング・スパンが異なるため、特に推奨水準はありません。
コメントや推奨水準は単なる筆者の分析結果であり、その水準での取引を勧めるものではありません。
投資の最終判断は自己責任で行ってください。
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