米国株下落と米個人消費減少のスパイラルに注意

トランプ大統領は関税による軽い景気後退の可能性に言及
米国株(S&P500株価指数)は3月13日時点で5521と高値(2月19日の6144)から10.1%下落し、いわゆる弱気相場入りした。
翌14日の相場は反発したが、米国株が米国経済リセッション入りの可能性を織り込んだ展開になり始めているとすれば、14日の反発は、信用取引の買戻しなどによる、一時的な「中間反騰」にすぎないだろう。
トランプ大統領は、テレビ番組のインタビューで関税政策などの影響で「今年は景気が後退すると思うか」と問われ、「多少の移行期間はある」と述べ、景気後退の可能性を否定しなかった。
また、FOXニュースのインタビューでは、関税政策をめぐる経済の先行きへの懸念を指摘されたうえで「今年は景気が後退すると思うか」と認識を問われ、「われわれがしていることはとても大がかりなものだ。当然、移行期間はある。少し時間はかかるが、すばらしい結果になるだろう」「株式市場を見ていてはいけない。中国は100年先を見据えている」と述べ、一時的な株式市場の変動にとらわれるべきではないという認識を強調した。
トランプ大統領は関税政策の影響で、株価が幾分調整し、それに伴って軽微な景気調整があるかもしれないとみているようだが、景気の調整が軽微なものになるか、深刻なものになるかは全く読めない。
1990年代末のITバブル並みになった、今の割高な株価水準からいえば、株価の大幅な調整によって、景気が深刻な後退局面に陥る可能性は、トランプ大統領が予想している以上に大きいのではないか。
トランプ大統領の関税についての発言が金融市場の不透明感を高めている
金融市場では当初、トランプ大統領の関税政策は、他の面での外国との交渉を進めるための手段で、実際に関税が課されることはないだろうから、気にする必要はない、という見方が多かった。
だが、そうした見方が楽観的にすぎなかったことは、今となっては明らかだ。しかも、トランプ大統領の口から、毎日のように、関税引き上げやその延期が発表されることで、先行きに対する不透明感は著しく高まっている。
筆者が2月24日付レポートでも指摘している通り、保護主義的な輸入関税は、一時的に鉄鋼などの衰退産業の経済活動を押し上げることはあっても、結局、米国経済を悪化させる。
https://real-int.jp/articles/2774/
トランプ政権第一期時には、2018年3月以降、米中貿易摩擦が懸念され始め、同年夏場頃までは関税で保護を受ける中小企業などの景況感が高まったが、同年秋頃から、米企業の景況感は全体的に悪化していった。
確かに、輸入関税により、企業が対米輸出に代替する形で、米国への直接投資を増やし、米国内での現地生産を拡大するという期待もある。トランプ大統領もそれを期待しているようだ。
だが、トランプ大統領の関税政策が、もし外国との交渉を進める手段として行われているのであれば、トランプ大統領はいったん口にした関税をいつ止めるかわからない、という不確実性もある。
そうした「不確実性」は、高い労働コストなどを考慮した上で、対米輸出を米国での現地生産に切り替えるという企業の経営判断を躊躇させる。しかも、来年11月の中間選挙で、議会共和党が過半数割れとなれば、トランプ政権はレームダックとなるだろう。
重要な経営判断は、トランプ大統領の政策の持続性を見極めてからでも遅くない。
輸入関税は米物価上昇を通じて、外国よりも米国により悪い影響を及ぼす
米国が輸入関税をかければ、外国からの対米輸出が減少するため、輸入関税は、米国より外国の経済に、より大きな悪影響を及ぼすという見方もあるが、疑問だ。
日本の対米輸出
日本製品は品質の高さなど非価格競争力の強さにより、関税がかけられても輸出数量が減少しないものが多い。
中国の対米輸出
中国製品はもともと極めて低価格であるため、10~20%程度の関税がかけられても、米国内での価格競争力が失われることにはならないだろう。
当初言われていた60%の関税なら別だが、10~20%程度の関税では、中国の対米輸出数量がトランプ大統領の期待通りに減少することはないだろう。
カナダやメキシコの対米輸出
カナダやメキシコとの貿易取引は、サプライチェーンの一環とみた方がいい。そうした取引にいちいち関税がかけられれば、確かに、そのサプライチェーンを形作る企業群のコストが増加する。
カナダやメキシコだけでなく、米国企業のコストが増加することは間違いない。
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2025/3/17の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。