12月の日米欧金融政策の変更はあるのか?
FOMCの利下げは当面ない
ECB理事会(12月12日)、FOMC会合(同17~18日)、日銀金融政策決定会合(同19日)が相次いで開かれる。
金融市場(米国はFF金利先物市場、日本、欧州はオーバーナイト・インデックス・スワップ市場)の動きをみると、11月22日時点で、ECBの0.25%利下げを100%以上織り込み、FOMCの0.25%利下げを6割程度織り込み、日銀の0.25%利上げを6割程度織り込んだ相場推移となっている。
一方、エコノミストのコンセンサス予想は、金融市場の見方とやや異なる。ECBとFOMCが0.25%利下げする、というのは同じだが、日銀は金利据え置きの予想となっている。ただ、こうした予想は外れる可能性は高まっている。
まず、先週のレポートで述べた通り、米国では成長ペースが速すぎ、景気が過熱気味になっており、インフレが再加速し始めた。
米国の成長率は、24年1~3月に年率1.6%と鈍化したものの、4~6月3.0%、7~9月2.8%と潜在成長率(2%程度)を上回った。多くの経済指標はまだ10月分までしか発表されていないが、アトランタ連銀のGDPナウによれば、続く10~12月の成長率は年率2.6%と予想されている。10月も潜在成長率を上回る、スピード違反気味の成長が続いていることを示す。
FOMCメンバーの予想によれば、失業率は24年末に4.4%に上昇すると予想されていたが、実際には、7月の4.3%をピークに10月は4.1%と低下した。
失業率低下(=労働需給逼迫)と、その結果として、賃金、物価の上昇率が高まってきていることは、景気が過熱し始めたことを示す。雇用統計によれば、平均時給の3か月前比上昇率は、4月の2.8%を底に、10月には4.5%と加速した。
また、コア消費者物価の3か月前年率上昇率も、7月の1.6%を底に、10月には3.6%と加速した。労働需給の逼迫状況は11月に入っても続いている。
失業保険新規申請件数は、7~9月(平均値)の23.1万人から、10月にはハリケーンの影響などで23.7万人に増加したが、11月に入ってからの動きをみると、11月2日に終わる週が22.1万人、9日に終わる週が21.9万人、16日に終わる週が21.3万人と減少している。
パウエル議長は11月14日の講演で、物価について「インフレ率は時に起伏のある道をたどりながらも、2%の目標に向かって引き続き低下していくと予想している」としながらも、「インフレ率は、われわれの長期目標である2%にかなり近づいているが、まだそこには至っていない」と述べた。
そのうえで、金融政策については「現在、われわれが目にしている経済の強さにより、
慎重な決定を行うことが可能になっている」「中立水準の範囲に到達、またはそのように考えられる範囲に近づく状況で、正しい判断を下す可能性を高めるために足元のペースを落とすことはあり得る」と述べた。
パウエル議長は「インフレ率が2%に向けて鈍化している」との見方は変えておらず、インフレを前提に、政策金利であるFF金利を中立金利である3%程度に向けて下げていこうという意向だ。
実際、FEDは、5.25~5.5%だったFF金利を、9月に0.5%ポイント、10月に0.25%ポイント引き下げ、4.5~4.75%とした。足元の米国経済は強すぎるため、当面は、利下げのペースを落としていこうとしているようだ。
しかし、今の賃金・物価動向をみると、そもそも「インフレ率が2%に向けて鈍化している」という大前提に疑問が生じ始めていると言わざるを得ない。だとすれば、「中立金利である3%程度に向けて利下げを続けていく」ことはできない。
12月のFOMCの前には、10月のPCE価格指数(11月28日発表)、11月の雇用統計(12月6日発表)、11月の消費者物価(12月11日発表)などの発表があり、FOMCで利下げが実施されるかどうかは、これらの指標をみたうえでの判断になることは言うまでもない。
だが、雇用者数はハリケーンの影響で落ち込んだ10月(前月比1.2万人増)の反動で、大幅に増加する可能性があり、失業保険申請件数の動きからみて失業率は一段と低下する可能性がある。
物価や賃金も、この数か月の傾向通り、高めの上昇率が続く可能性がある。予想通りの0.25%利下げになる可能性は低下している。
むしろ、賃金や物価の鈍化が再びはっきりするまで、FF金利が据え置かれる可能性が高い。
賃金上昇率加速で、確実視されているECBの利下げも疑問に
ECBの利下げについては、金融市場もエコノミストの予想をみても、ほぼ100%織り込まれているようだ。
だが、ここへきて問題もでてきている
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2024/11/25の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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