ドルの強弱要因に照らしての相場予測
メルマガ&掲示板「イーグルフライ」に掲載の記事を、1週間遅れて掲載しています。
Ⅰ.早読み先週のドル円相場(寄り付きは東京午前9時の気配値、NY終値は現地午後5時の気配値)
週初7日:寄り付き106.31。
東京:前週末に公表された米8月雇用統計がやや好感されたこともあり、仲値にかけて106.39まで上昇。
ただ、その後は日経平均が軟調となる中、NY休場を控えてポジション調整のドル売りで106.22まで下落。
NY:休場。現地午後5時時点の気配は106.30前後。
8日:寄り付き106.30。
東京:堅調な日経平均株価を背景に106.38を付けるも、同水準での上値は重く、106.22まで小反落。
NY:米株・原油・金がいずれも下落する動きにリスク回避の円買い優勢となり、105.87まで下落。
NY終値106.02。
9日:寄り付き105.97。
前日に米株が大幅下落したことを受けて、上値の重たい展開となり、105.79まで下落。
英国がブレグジット協定を変更する案を議会が提出したことや米株や原油が上昇したことを受けてドル買い優勢の展開となり、106.27まで上昇。
NY終値106.19。
10日:寄り付き106.24。
東京:前日のNY市場でドルが堅調となった地合いを受け継ぐ形で、106.30まで上昇するも、その後は材料難の中、模様眺めの展開。
NY:理事会後の定例記者会見でラガルドECB総裁が「ユーロ高に過剰に反応する必要はない」と発言したことを受けて、
ユーロ買いドル売りの動きとなり、これにドル円も連れる形で105.99まで下落。
ただその後、「為替相場は(ECBの)目標ではない」とする発言に、ユーロ円が上昇し、
これに連れる形でドル円は106.14まで上昇、NY終値106.12。
11日:寄り付き106.12。
東京:ブレグジットを巡る交渉の行き詰まりからドルが対ポンドで上昇。
これに連れる形で106.25まで上昇。日経平均の上昇も、リスクオンの動きを誘い、ドル買いを誘発した面もある。
NY:ナスダック不調の中、リスク回避の円買いとなり、一時106.06まで下落。
ただ、その後は来週のFOMCを控えてポジション調整のドル買いが入り、小反発。NY終値106.14。
Ⅱ.長期相場分析(週足チャートをご参照下さい)
2017年のドル最高値は114.73(11月6日)、そして2018年の同最高値も114.55(10月4日)に止まり、115円が超長期のドルの抵抗水準になっている。
2月17日週にトランプラリーの最高値118.66(2016年12月)近辺を起点とする抵抗線を抜き、昨年の最高値112.40に迫ったが、高値は112.23に止まった。
ここ数年の高値圏である114円台では上値が重たいという値覚えがあるため、112円台を超えての積極的なドル買いは見られず、長期的に112円台前半が強い抵抗水準との認識が生まれた。
3月下旬に年初来高値112.23(2月20日)を試したが、結果は111.71(3月24日高値)止まりと、
111円台後半でもドルの上値の重さが確認されている。
111.71を付けて以降、下降チャンネルの中で推移しており、ドルの軟調地合いが継続している。
7月下旬には3月中旬以来の安値水準となる104円台前半まで下落しており、
年末に向けては大きな節目の100円を目指す展開もあり得るか。
**中期予測レンジ:101.00~111.00
**上値メド水準
110.00(サイコロジカル)
112.23(年初来高値)~112.40(2019年最高値)
114.55(2018年10月4日高値)
114.73(201711月6日高値)
115.00(2017年11月以降の展開で意識された強い心理的水準)
**下値メド水準
105.00(サイコロジカル)
104.20(7月31日安値)
101.18(3月9日安値)
100.00(サイコロジカル)
99.00(2016年安値)
Ⅲ.今週のドル円相場テクニカル分析
○前回予測のポイント
・チャンネルTR1-TR2が機能しているため、依然としてこの先の中期見通しではドルが緩やかに下降するとの見方を踏襲する。
・8月中旬から転換線(前週末106.07)が基準線(同105.61)の上で推移していることや終値が雲の中に入り込んでいることから、ややドルの地合いが好転している印象を受ける。
・雲の上限(前週末107.01)を上抜くことができるかどうかが注目されるが、同水準近辺には100MAやチャートポイントの107.01~05などがあるため、相当に難しい。
・106円台後半で上値が限定される様であれば、105円台前半までの反落は十分考えられる。
下値圏については、8月3日以降で105円が強く意識されていることから、105円台前半では有象無象の買いが入りやすい。
・今週(前週のこと)は105円半ば~106円半ばを中心とした強含み保ち合いの展開を予測する。
予測レンジ:104.75~107.70
○前週の印象
前週の105.79~106.39という狭いレンジ内での動きに終始した。
前週は105円半ば~106円半ばを中心とした強含み保ち合いの展開を予測したが、ほぼそうした展開となった。
相場は終値ベースで一目の雲の中に入っており、一段と保ち合い相場の様相を深めつつある。
前週末時点の雲の上限は107.01だが、今週を通して上限水準は同じであるため、上値が伸びたとしても同水準が精一杯か。
雲の下限は105.65から106円前後に切り上がってくるが、終値が下限以上を維持する様であれば、ドルにやや強気なバイアスがかかりやすくなるか。
*********************
以下ではドルの強弱要因を指摘した上で、上で述べた点を軸に今週の予測をまとめた。
ドルの弱気要因
(1)2月下旬の相場でも112円台でドルの上値の重さが再認識されているが、
そこから反落した後の戻り高値が111.71(3月24日高値)止まりとなっている。
(2)111.71と109.85(6月5日)とで抵抗線TR1(日足チャート)を引くことができるが、
同線が前週末に107円台半ば近辺へと下降してきたため、一段とドルへのプレッシャーが強まりつつある。
(3)(2)との関連で抵抗線TR1と下方に平行に引くことのできるTR2とで下降チャンネルTR1-TR2が形成されている。
上値メドであるTR1を上抜くまで、トレンドは下向き。
(4)25日MA(前週末106.15)・100日MA(同106.84)・200日MA(同107.84)の関係において、
順番に期間の短い線が長い線とデッドクロスしている。
・・・25日MAと100日MAとの関係が逆転(ゴールデンクロス:GX)する方向に動きつつあるが、
25日MAの上昇が緩くなっているため、GXは難しいか。
(5)4月以降(除く6月初旬の約1週間)では完全に100日MAが抵抗線として機能している。
(6)200日MA(前週末107.84)がTR1(前週末107円半ば)の上にあるため、
107円台後半は強いドルの抵抗水準となっている。
・・・日足チャートのドット・グリーンの楕円。
(7)チャートポイント(107.01~05)と100日MA(前週末106.84)とがほぼ重なっている。
107.05を付けて以降の最高値は106.94(8月24日)ということを考慮すると、
106円台後半ではドルの上値は重苦しい。
ドルの強気要因
(1) 直近最安値は104.20(7月31日)と、下値が2018年12月の安値104.10によって支持された。
・・・(3月のフラッシュクラッシュ相場は考慮していない)
(2)(1)との関連では、2018年以降のドル下落局面(4回)での最安値はいずれも104円台止まりである。
・・・(3月のフラッシュクラッシュ相場は考慮していない)
この点、104円台で売っても、ショートが機能していないため、
テクニカル・ポイントである105.00直前で買戻しが入りやすいことを示している。
・・・ストラテジー・アイディア参考図
(3)(2)との関連で、相場は下降チャンネルTR1-TR2のセンターラインCL(前週末105.15前後)から着かず離れずの関係を維持している。
(4)スポット終値が雲(前週末下限は105.97)の中に入り込んだ。
以上の強弱要因に照らして、以下の様に今週の予測をまとめた。
今週のまとめ
下降チャンネルTR1-TR2の中で相場は推移しているが、105円台ではドルが底堅さを示している。
8月下旬以降ではセンターラインCL(前週末105.15近辺)の上で推移していることを考慮すると、この先の下押し局面では105円台前半で有象無象のドル買いが入りやすいと見られる。
こうした状況で、肝水準の105円を割り込むとすれば、105円台でのロングが投げさせられる展開となった場合か。
他方、上値の肝である107円前後をブレイクするとすれば、106円台半ばからのショートが踏まれる展開となった場合か。
こうした中、105円半ば~106円半ばが居心地の良い水準になりつつあるため、前週同様に同レンジを中心とした保ち合いが続くと見る。
ただし、冒頭の下降チャンネルTR1-TR2に揺るぎが見られていないため、中期的にドルの下落リスクが強い状況が続いていることに著変はない。
予測レンジ:104.85~107.45
Ⅳ.チャートポイント
**レジスタンス
106.39(9月7日の高値)
*106.84(前週末100日MA)
106.94(8月28日の高値)
107.01(前週末一目の雲の上限)
*107.02~107.05[(50%戻し、109.85→104.20)~(8月13日の高値)]
**107.45(前週末のトレンド線TR1)
107.69(61.8%戻し、109.85→104.20)
107.84(前週末200日MA)
*108.16(7月1日高値)
109.85(6月5日高値)
110.00(心理的節目)
*111.71(3月24日高値)
**112.23(2月20日高値)
**112.40(昨年最高値)
**サポート
105.79(9月10日安値)
105.10~105.20(8月19日安値、8月28日の安値)
*105.00(サイコロジカル)
104.87(76.4%戻し、104.20→107.05)
*104.10~104.20(2018年12月安値、7月31日安値)
**101.18(フラッシュクラッシュ時3月9日の安値)
Ⅴ.今週のポイントとストラテジー・アイディア
●今週の注目材料
*米国
・FRB関連
9月15~16日:FOMC
パウエル議長は8月末に「平均インフレ目標」を導入することで2%超のインフレ率を容認している。
今回のFOMCではフォワードガイダンスの強化や具体的な量的緩和策の拡大が打ち出されるかどうかが注目される。
・米経済統計等
9月15日:8月鉱工業生産指数
16日:8月小売売上高
17日:フィラデルフィア連銀景況指数
・他
公表が遅れている財務省の「為替報告書」で中国が再び為替操作国に認定される可能性がある。(米中対立が本格化・・ドル売り)
米中関連の激化懸念。
ナスダックが本格的調整に入る様であれば、米株全体も揺れる。(ドル安)
*日本
14日の自民総裁選では菅氏が選出され、アベノミクス(=円安)が継承される見通しだが、新味はない。
日銀金融政策決定会合(16~17日)のタイミングを捉えて、干からびた政府・日銀のアコードを囃し、株高・円安を煽っても限界的か。
*ユーロ圏
前週にラガルドECB総裁は「ユーロ高に過剰に反応する必要はない」としているが、
ユーロ高は外需頼みの主軸国ドイツなどにとっては好ましくないのは事実。
他のECB要人からのユーロ高牽制に要注意。
今週のストラテジー
ストラテジー
*基本ストラテジー:下降トレンドが継続しているため、依然として基本ストラテジーはドルの戻り売りに置く。
1.106円台後半から107.05までは浅目にストップを入れながらの売り上がり(短期日計り戦略だが、奏功する様であれば、ある程度長目のポジションとしてキープ。浅目のストップ要)。
2.長めのポジションとして107円台前半でのショート(但し、107円半ばがブレイクされ
た場合はポジションを整理し、様子見へ)
・理由
(1)下降チャンネルTR1-TR2(日足チャート)が機能している。
(2)ドル需給の緩み
上値の重たい展開が続いているため、徐々に実需の売り水準が切り下がる可能性がある。
(3)25日MA(前週末106.15)・100日MA(同106.84)・200日(同107.84)の関係で、期間の短い線(含むスポット)が順番に長い線とデッドクロスしている。
25日MAと100MAとのクロス関係は信頼性が高い。
デッドクロス中の25日MAと100日MAとの関係が逆転するまでは、ドルの中期的軟調地合いに著変はないと見ている。
・・・関連の注目点は前週の参考図で詳述した。
(4)一目の雲の上限が前週末時点で107.01だが、100日MA(前週末106.84)と重なる。
・・・107.01~05がチャートポイントでもある。
(5)4月以降、終値(除く6月上旬の一時期)が100日MAを上回っていない。
*暫定ストラテジー
105円半ば近辺での試し買い(短期日計り戦略、105.00ブレイクでは撤退)
・理由
8月以降の安値は105.10(8月19日)や105.20(8月28日)だが、5円刻みの節目105円が支持水準として存在感を示している証左である。
2018年以降のドル下落局面(4回)での最安値はいずれも104円台止まりである
(3月のフラッシュクラッシュ相場は考慮していない)ため、105円を試す前にドル買い(買戻し、ロングメイク)が入りやすいと見る。
従って、105円台前半はドルの試し買いとしては面白い水準と言える。
・・・参考図
注)利食い・損切りは個人のトレーディング・スタイルやトレーディング・スパンが異なるため、特に推奨水準はありません。
コメントや推奨水準は単なる筆者の分析結果であり、その水準での取引を勧めるものではありません。
投資の最終判断は自己責任で行ってください。
メルマガ&掲示板「イーグルフライ」に掲載の記事を、1週間遅れて掲載しています。
リアルタイムで読みたい方は、イーグルフライをご購読ください。