ドル売りが先行しやすい状況が続くか
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Ⅰ.早読み先週のドル円相場(寄り付きは東京午前9時の気配値、NY終値は現地午後5時の気配値)
週初24日:寄り付き105.88。
東京:仲値にかけてドル売り優勢の展開となり、105.69まで下落。
しかし、その後は材料難の中、買戻し中心に小反発し105.90前後まで上昇。
NY:7月シカゴ連銀全米活動指数が予想を上回ったことを受けて、堅調に推移。
コロナ関連や米中モバイル関連などでドルの弱気材料が報じられたものの、
堅調な米株がドル買いを誘い、106.00を示現。
NY終値105.99。
25日:寄り付き106.00。
東京:日経平均が新型コロナ感染拡大で急落した2月以前の水準を回復したことから、106円近辺で堅調な動き。
ただ、27日のジャクソンホールでのパウエル議長の講演を控えて、積極的に上値を試す展開とはならなかた。
欧州:米独製薬会社が共同開発しているワクチンが10月にも認可されるとの報や
独8月IFO景況感指数が良好な結果となったことを受けてリスクオン・ムードが強まる中、
106.49まで上昇。
NY:28日に予定されている安倍首相の会見がネガティヴ材料となり、一時106.26まで下落。
しかし、7月新築住宅販売が大幅に予想を上回ったことから、106.58まで反発。
NY終値106.41。
26日:寄り付き106.39。
東京:翌日にFRBパウエル議長の講演を控えてのポジション調整や月末に向けてのドル買いで106.56まで上昇。
ただ、午後にはユーロ円の売りに連れる形でドル円も小反落。
その後の欧州市場では106.16まで下落。
NY:7月の耐久財受注が予想を上回ったことから106.46まで上昇するも、
米金利の上昇が止まったことやドルが資源通貨に対して売られたことを受けて106円割れまで反落。
NY終値105.98。
27日:寄り付き105.87。
東京:日経平均株価が軟調に推移する中、一時105.80まで軟化するも、
パウエル議長の講演を控えてショートは維持できずに106円台へと反発。
NY:パウエル議長の講演内容は事実上ゼロ金利政策の長期化を容認したものとの見方から、105.60まで急落。
しかしながら、FRBのインフレ容認は織り込み済みとの見方が優勢になると、
米株上昇・ドル上昇となり、106.71まで反発。
NY終値106.57。
28日:寄り付き106.53。
東京:前日のFRBによる「物価上昇率が当面は2%を超えることを目指す」との方針が
「米景気が持ち直す」との見方に転じ、ドル買い円売りの動きとなり、106.94まで上昇。
ただ、午後に入ると「安倍首相の辞意」報道が伝わり、
日経平均が600円超値下がりするのに合わせて106円丁度近辺へと反落。
NY:安倍首相の辞意表明で、アベノミクス(超金融緩和策)が巻き戻されるとの観測から、
円買いの動きが加速し、ドル円は105.20まで下落。
NY終値105.34。
Ⅱ.長期相場分析(週足チャートをご参照下さい)
2017年のドル最高値は114.73(11月6日)、そして2018年の同最高値も114.55(10月4日)に止まり、
115円が超長期のドルの抵抗水準になっている。
2月17日週にトランプラリーの最高値118.66(2016年12月)近辺を起点とする抵抗線を抜き、
昨年の最高値112.40に迫ったが、高値は112.23に止まった。
ここ数年の高値圏である114円台では上値が重たいという値覚えがあるため、
112円台を超えての積極的なドル買いは見られず、
長期的に112円台前半が強い抵抗水準との認識が生まれた。
3月下旬に年初来高値112.23(2月20日)を試したが、
結果は111.71(3月24日高値)止まりと、
111円台後半でもドルの上値の重さが確認されている。
111.71を付けて以降、下降チャンネルの中で推移しており、ドルの軟調地合いが継続している。
7月下旬には3月中旬以来の安値水準となる104円台前半まで下落しており、
年末に向けては大きな節目の100円を目指す展開もあり得るか。
**中期予測レンジ:101.00~111.00
**上値メド水準
110.00(サイコロジカル)
112.23(年初来高値)~112.40(2019年最高値)
114.55(2018年10月4日高値)
114.73(201711月6日高値)
115.00(2017年11月以降の展開で意識された強い心理的水準)
**下値メド水準
105.00(サイコロジカル)
104.20(7月31日安値)
101.18(3月9日安値)
100.00(サイコロジカル)
99.00(2016年安値)
Ⅲ.今週のドル円相場テクニカル分析
○前回予測のポイント
・相場が下降チャンネルTR1-TR2の中で推移しているため、下方リスクが強いことに著変はない。
・4月以降(除く6月初旬の約1週間)では完全に抵抗線として機能している100日MAが
107.13(前週末)まで下降してきたため、ドルの上値が相当に重くなる可能性が高いと見る。
・ドルの大きな拠り所は5円刻みの節目105.00だが、
106円台前半で上値がキャップされる様であれば、
同水準が試されても不自然ではなくなってきた。
・今週(前週のこと)は、概ね105円~107円での弱含み保ち合い相場を予測するが、
バイアスは下方リスクに置いている。
予測レンジ:104.10~107.69
○前週の印象
前回の当欄のまとめでは「105円~107円での弱含み保ち合い相場を予測する」としたが、
概ねその様な展開となった。
週初の下攻めに失敗した後、週後半に週高値(106.94)まで反発し、
再び週安値(105.20)まで急落という荒っぽい展開となり、
想定レンジ内に収まったものの、保ち合い放れを感じさせる。
特に週末一日で、一週間の高安を示現しており、波乱の展開だったと言える。
そうした展開の中、以下の点が指摘される。
①上値圏での注目点
・高値106.94を付けた日(28日)の時点で上髭で一目の雲の中に入り込んだが
(同日の雲の下限は106.76)、終値(105.34)では雲の中で止まることが出来なかった。
・8月12~14日の3日間の高値が107.01~107.05で止まりだったことに照らすと、
上の点は重要である。
・さらに、重要なポイントとして、100日MA(前週末106.99)が
抵抗水準として綺麗に機能している点も改めて注目しておきたい。
これらのことから、上値圏ではこの先107.00に近づくに連れて、
ドルの上値が重たくなることが予測される。
②下値圏での注目点
・週安値は105.20だったが、5円刻みの節目105.00を下回っていない。
・8月15日の安値は105.10であり、これが節目の105.00と重なっているため、ドルの下値圏を支えている。
・前週末日には105.20を付けた直後に、105.73まで反発している。
この点、105.00に近づくと、売り方勢力は腰が引け、一時的に買戻しを余儀なくされていることを窺わせる。
その後の下攻めにおいても、週末ということもあってか、ショートキープは難しかった様だ。
以上の点から、下値圏の焦点は105.00をブレイクできるかどうかにある。
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以下では、上で述べた点を軸に、ドルの強弱要因を指摘した上で、今週の予測をまとめた。
ドルの弱気要因
(1)2月下旬の相場でも112円台でドルの上値の重さが再認識されているが、
そこから反落した後の戻り高値が111.71(3月24日高値)止まりとなっている。
(2)111.71と109.85(6月5日)とで抵抗線TR1(日足チャート)を引くことができるが、
同線が前週末に107.80前後へと下降してきた。
(3)(2)との関連で抵抗線TR1と下方に平行に引くことのできる線
TR2とで下降チャンネルTR1-TR2が形成されている。
(4)25日MA(前週末105.89)・100日MA(同106.99)・200日MA(同107.99)の関係において、
順番に期間の短い線が長い線とデッドクロスしている。
(5)4月以降(除く6月初旬の約1週間)では完全に100日MAが抵抗線として機能している。
(6)スポット終値(前週末105.34)が再び25日MAを下回り出している。
(7)TR1と200日MA(前週末107.99)が重なっているため、107円台後半ではドルの上値が相当に重たいと見る。
(8)チャートポイント(107.01~05)と100日MA(前週末106.99)とが重なっている。
(9)一目の雲が今週中に105.93まで切り下がってくる。
ドルの強気要因
(1)直近最安値は104.20(7月31日)と、下値が2018年12月の安値104.10によって支持された。
・・・(3月のフラッシュクラッシュ相場は考慮していない)
(2)(1)との関連では、2018年以降のドル下落局面(4回)での最安値はいずれも104円台止まりである。
・・・(3月のフラッシュクラッシュ相場は考慮していない)
つまり、104円台で売っても、ショートが機能していないため、テクニカル・ポイントである105.00直前で買戻しが入りやすい。
(3)(2)との関連で下降チャンネルTR1-TR2のセンターラインCL(前週末105円半ば)
から着かず離れずの関係を維持している。
(4)転換線(前週末106.02)が基準線(同105.61)を上回っている。
以上の強弱要因に照らして、以下の様に今週の予測をまとめた。
今週のまとめ
下降チャンネルTR1-TR2の中で相場が推移していため、
従来通りこの先の中期見通しもドルの下方リスクが強いと考えている。
こうした中、前週のドル上昇局面においてもチャートポイントの107.05(8月13日高値)を上抜けなかった。
同水準には強い抵抗線となっている100日MA(前週末106.99)が存在するため、
目先では107円を上抜くことは相当に難しくなったと言える。
こうした状況下、今週後半には一目の雲が105.93まで切り下がってくるため、
106円に近づくに連れて有象無象のドル売りが出る可能性が高い。
下値圏では105.00~105.20が支持水準だが、
前週末の106円台後半から急反落した印象が残るため、
ドル売りが先行しやすい状況が続くか。
短期9日間RSIも前週末時点で40%と、
ドル売り余力を残しているだけに、下値リスクが高いと見る。
仮に105円割れを一時的に凌いだとしても、
106円台後半を回復できない展開では、下値リスクは残り続けるであろう。
予測レンジ:104.10~106.75
Ⅳ.チャートポイント
**レジスタンス
106.76(一目の雲の下限、週後半には105.95へと下降)
*106.99(前週末100日MA)
*107.02~107.05[(50%戻し、109.85→104.20)~(8月13日の高値)]
107.57(7月20日の高値)
107.69(61.8%戻し、109.85→104.20)
107.79(7月7日の高値)
*108.16(7月1日高値)
108.13(前週末200日MA)
**108.15(前週末のトレンド線TR1)
109.85(6月5日高値)
110.00(心理的節目)
*111.71(3月24日高値)
**112.23(2月20日高値)
**112.40(昨年最高値)
**サポート
105.10~105.20(8月19日安値、8月28日の安値)
*105.00(サイコロジカル)
104.87(76.4%戻し、104.20→107.05)
*104.10~104.20(2018年12月安値、7月31日安値)
**101.18(フラッシュクラッシュ時3月9日の安値)
Ⅴ.今週のポイントとストラテジー・アイディア
●今週の注目材料
*米国
・FRB関連
9月2日:ベージュブック公表
・米経済統計等
8月31日:8月ダラス連銀製造業活動指数
9月1日:8月ISM製造業景気指数
3日:8月ISM非製造業景気指数
7月貿易収支
4日:8月雇用統計
・他
公表が遅れている財務省の「為替報告書」で中国が再び為替操作国に認定される可能性がある。
(米中対立が本格化・・ドル売り)
・・・昨年8月に財務省は中国を為替操作国として認定しているだけに要注意。
15日に予定されていた米中による第一段階通商合意の進捗状況の検証は無期延期となった。
この点に関して24日に米中の電話会談が行われ、双方が合意履行に前向きな姿勢を示したが、
(米側は)大統領選対策の素振りに過ぎない。
米国が人口島の建設に関与した中国企業24社に対して
輸出禁止措置を取ったことに対しての抗議と見られる中国の南シナ海へのミサイル発射。
こうした米中対立の激化は市場のリスク回避的動きに結び付きやすい。
新型コロナウィルス問題を巡っては、追加予算協議が与野党間で長引く一方、
治療薬やワクチン開発報道が錯綜。
・・・刹那的なドル売り・ドル買い要因
トランプがキャピタル減税案等で株式相場を押し上げる様であれば、一時的なドル高も。
*日本
安倍総理辞任発表で金融市場の先行きに不透明感が残るため、思惑が錯綜しやすい。
アベノミクス(超金融緩和策)の巻き戻しは長期的な議論としてはありえるが、
直ぐに政策転換が起きることはない。
ただ、市場の観測が勝つ相場であれば、日本株売り・円買い要因となるので、
状況次第では追随する必要もあるか。
*ユーロ圏
8月31日:独8月CPI
9月1日:ユーロ圏8月製造業PMI(確報)
ユーロ圏8月CPI
2日:ユーロ圏7月PPI
3日:ユーロ圏8月非製造業PMI(確報)
今週のストラテジー
ストラテジー
*基本ストラテジー:下降トレンドが継続しているため、依然として基本ストラテジーはドルの戻り売りに置く。
・推奨水準
106円台後半からの戻り売り。
106円近辺からの試し売り(短期日計り戦略だが、奏功する様であれば、ある程度長目の
ポジションとしてキープ。浅目のストップ要)。
・理由
理由については、以下でも述べたが、参考図「上値の切り下がり」と下段に詳細を記した。
(1)下降チャンネルTR1-TR2(日足チャート)が機能している。
(2)ドル需給の緩み
上値の重たい展開が続いているため、徐々に実需の売り水準が切り下がる可能性がある。
(3)25日MA(前週末105.89)・100日MA(同106.99)・200日(同107.99)の関係で、
期間の短い線(含むスポット)が順番に長い線とデッドクロスしている。
25日MAと100MAとのクロス関係は信頼性が高い。
デッドクロス中の25日MAと100日MAとの関係が逆転するまでは、ドルの中期的軟調地合いに著変はないと見ている。
(4)一目の雲の下限が前週末時点で106.76だが、100日MA(前週末106.99)がその上から重なっている。
(5)4月以降終値は(除く6月上旬の一時期)100日MAを上回っていない。
(6)109.85(6月5日)からのドル下降局面では、ベアリッシュ・フラッグとウェッジのパターンが出現している。
・・・前回の参考図
(7)転換線(前週末106.07)が基準線(105.85)を下から抜いているが、ドルは伸びを欠く。
注)利食い・損切りは個人のトレーディング・スタイルやトレーディング・スパンが異なるため、特に推奨水準はありません。
コメントや推奨水準は単なる筆者の分析結果であり、その水準での取引を勧めるものではありません。
投資の最終判断は自己責任で行ってください。
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