初心者のためのFXトレード
「FXトレードで利益を出すために一番大切なものとは何か?」と聞かれたらあなたは何と答えるだろうか。トレード手法、相場観、資金管理など、人によって様々な要素を思い浮かべるのではないだろうか。
その中でも初心者だからこそ見落としがちなFXトレードに関するある重要な考え方がある。実は、この見落としがあるせいで多くの人が致命的なトレードをしてしまい、FX市場からの撤退を余儀なくされてしまっている。
今回は、FXトレードで利益を出すために重要な考え方とは何なのか、そして初心者がやってはいけないFXの3つのトレードスタイルについて紹介していきたい。
初心者が見落としがちなFXトレードで非常に重要な考え方とは?
冒頭でも述べたようにFXトレードで利益を出すために一番重要なものを一つ上げるのは容易ではない。その中でも初心者だからこそ見落としがちなポイントがあるとすれば、それはFXトレードでは「100%勝つことはありえない」という考え方だ。
「いまさら当たり前なことを!」と思った人もいるかもしれない。しかし、世の初心者がやってしまう失敗例から見てみると、この部分を実際の肌感覚として理解している初心者は実は少ないように思える。
「100%勝つことはありえない」の意味するところは「負けは避けられない」という事実だ。もしかしたら最初のトレードが負けになるかもしれないし、その負けが数回続くことすら確率的には起こりうるのだ。
ベテランになればFXトレードは負けながらもトレードを繰り返すことによって、トータルでプラスにしていく性質のものだと身をもって理解している。これは、どんなに優れた手法や規律性があっても例外ではない。勝つことだけを頭に思い描きがちな初心者には、ついついこの事実を想定に入れずにトレードしがちになる。
一回一回のトレードで勝つイメージが先行してしまうからこそ、やってしまいがちな失敗も多いといえるだろう。これらの失敗は小さなもので終わればいいが、最悪の場合は相場からの即退場にもつながりかねない。
ここからは初心者が特に避けるべきトレードスタイルを3つ紹介していく。これらに共通しているのは「なんとなく勝てるのではないか」というイメージが先行しがちな初心者だからこそ、犯してしまいがちな「やってはいけないトレード」の代表例だ。
初心者がやってはいけないFXトレードその1:損切りをしないトレード
トレードの世界では損切りがきちんとできるようになってやっと一人前といわれるほど、損切りは経験者にとっても難しい行為だ。これは損切り行為そのものが人間の本能に強く逆らう行為だからだといわれている。
「プロスペクト理論」という行動経済学の理論を聞いたことがある人も多いだろう。プロスペクト理論とは、人間は不確実な状況において損失を目の前にすると、損失を回避しようとする心理が強く働くというものだ。損切りの重要性を頭で理解している人が多いにも関わらず、実際の行動としてできない人が多いのはこの心理によるところが大きい。
特に安易に勝てるというイメージが先行しがちな初心者は、「まあ、その場面になったら損切りすればいいだろう」と軽い気持ちでトレードしてしまいがちだ。しかし、いざその場面になると「もうすぐしたら反転するかもしれない」とか、「この時間軸ではまだ耐えられるはず」などと考えてしまう。いろいろな理由を持ち出して、損切りを先延ばしにしてしまうのだ。
そうしてズルズルと含み損が膨らむのを放置してしまい、いよいよ損切りするときには損失が多大になっている。あるいは、強制ロスカットで全財産を失うというような最悪の事態になってしまう。
このような失敗を避けるためにも、負けは不可避なものだと受け入れ、損切りはかならず執行しよう。もし、その場で潔く損切りできる自信がない場合は、注文後すぐにかならず損切りの逆指値注文をセットで入れるのがおすすめだ。
初心者がやってはいけないFXトレードその2:ハイレバレッジのトレード
ハイレバレッジのトレードも勝てるイメージだけが先行している場合にやってしまいがちなトレードの一つだ。ハイレバレッジのトレードとは、例えば10万円が元手なら、国内での最大レバレッジである25倍を元手の全てにかけ、250万円分の通貨を取引するようなトレードだ。
ハイレバレッジでのトレードは勝てれば利益が早く出るが、負けたら同じくらい早いスピードで資金が減る。1ドル100円で25倍のレバレッジでトレードした場合、レートが40銭不利な方へ動くと瞬く間に約10,000円の損失が出る計算だ。このようなトレードを行っていると、あっという間に資金を減らしてしまう可能性がある。
ハイレバレッジのトレードをしようと思っている場合は、勝ちを前提に手に入れる利益にばかり注目していないか改めて考えてみてほしい。FXトレードでは負けは不可避であり、負けながら利益を出していく性質の投資だ。だからこそ、たった数回で全資金を全て失ってしまうようなリスクのあるトレードでは潜在的に利益を出すのが非常に難しくなってしまう。
では、レバレッジは一切かけないほうがいいのかというと、それは違う。安全かつ適切にレバレッジを利用しさえすれば、そのメリットは最大限享受できる。そこで、安全かつ適切なレバレッジでトレードをするためにぜひ知っておいてほしいのが「リスク許容範囲」の概念だ。
リスク許容範囲とは、1回のトレードで損をしていい額をあらかじめ設定しておくルールのようなものだ。一般的に1回のトレードに対して取るリスク許容範囲を総資金の2%前後に設定するトレーダーが多い。
例えば、リスク許容範囲を2%に設定する場合、資金が10万円であれば1回のトレードで2,000円のリスクまでを許容する計算になる。これをもとに想定している損切り幅から逆算して取引数量を割り出せる。
具体的に1ドル100円、資産10万円、リスク許容範囲を資産の2%、損切り幅を20銭(20pips)
とした場合を見てみよう。この時、適切な取引数量は10,000通貨となり、レバレッジは10倍だ。(下図参照)
このように毎回計算しなくても、リスク許容範囲とおおよその目安で損切り幅を想定したうえで取引数量を計算しておくだけでも、適切なレバレッジの算出は可能だ。このようにリスク許容度からレバレッジを割り出せば、レバレッジの利点も活かしながら、リスクを抑えたトレードが可能になる。
初心者がやってはいけないFXトレードその3:経済指標発表時のトレード
最後に紹介する初心者がやってはいけないトレードは経済指標発表時のトレードだ。経済指標とは世界各国の経済の統計データ、政策金利、中央銀行の会合など経済状況を表す指数や数値を指す。アメリカの雇用統計などは有名なので、ご存知の方も多いのではないだろうか。
このような経済指標発表時には結果次第で為替相場が大きく動く場合が多い。そのために、この動きを利用してトレードをしたら簡単に勝てるのではと思う人がいるかもしれないが、なかなかそうはいかない。
経験のある人ならおわかりだろうが、経済指標発表時の際は注文が殺到している。そのため、業者によっては瞬間的にスプレッドが大きく開き、エントリーした瞬間に大きな含み損からスタートする場合もある。
また、注文が殺到しているせいで約定そのものが成立せず、何度も注文を繰り返しているうちにレートがどんどん動いていくこともあるのだ。約定しても通信のタイムラグのせいで、思っていたレートで約定しなかったりするケースも珍しくない。
利益が出ている場面であればまだいいが、損切りの場面で起こったらどうなるか想像してみてほしい。損切り注文を出しているのに注文が約定せず、損失がすごいスピードで膨らんでいってしまうのだ。
こんな時はたとえ逆指値注文を前もって出していても、指値で約定しない事態も十分に起こり得る。このように経済指標発表時の動きに乗っかろうとするトレードはコントロールが難しいので、避けておくのが得策だろう。
また、「そんなトレードはやらないから自分には関係ない」と思っている人も全く無関心でいては危険だ。なぜなら経済指標発表のタイミングを知らないままトレードしてしまえば、意図せずその混乱に巻き込まれてしまうからだ。
だから経済指標発表に乗っかったトレードをしない人であっても、重要経済指標の発表スケジュールは必ずチェックして、発表前はトレードをしない、持っているポジションは手仕舞いするなどの対策をとっておくようにしよう。
初心者にこそ必要な「負けも前提に考える」トレード
FX取引を始める時はみな「利益を出したい」という思いを強く抱いてトレードを始める。だからこそ初心者ほど勝ちトレードだけを思い描いたり、夢想したりしがちだ。しかし、そのせいで多くの初心者トレーダーが数多くの失敗を犯し、市場から去らざるを得なくなってしまう。
FXトレードは本来、「負けながらトレードを繰り返し、トータルでプラスにしていく」性質のものだ。もしこれが盲点になっているという自覚があれば、今回紹介した3つのトレードスタイルを避けるだけでも、資金を守りながらトレードを繰り返していく土台ができるだろう。
「負けも前提に考える」ことができて、初めてFXで利益を出すスタートラインに立てるのではないだろうか。