元チーフディーラーの金融危機対策 竹内のりひろ編
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今まで一番記憶に残っている事
1番の大きい金融危機は、100年に1回の金融危機「リーマンショック」です。それ以外ですと80年代でいえば「ブラックマンデー」です。リーマンショック後だと、東日本大震災後の日本株の暴落、2015年の「チャイナショック」、記憶に新しい所ですと2020年3月の「コロナショック」とあります。
1番強烈で市場を破壊したというと「リーマンショック」です。当時ディーリングルームで阿鼻叫喚の売りを見ていました。
あの頃、日本は低金利で機関投資家もしかり、学校法人は運用に非常に苦慮していました。そこで何をしたかというと、証券化商品ではなくて仕組債をたくさん買っていました。
豪ドル円は当時高金利通貨でした。豪州もニュージーランドも7~8%金利があり、その金利を取りにいくために金融派生商品が多く作られました。
そのスキームをご紹介します。投資元本が10億円だったとします。豪ドル円が100円を超えていた時に80円以上であれば毎月5000万円入るというスキームです。10億円の元本に対して年間6億円もらえる夢のような商品がありました。
ただし、そこにはノックアウトとノックインといった条件設定があり、1回でも80円ついてしまうと5000万円もらえる権利が消失し、毎月1億円を支払わなければいけないというものです。
当時は高金利だったので誰もが80円がつくわけないと思っていました。ところが、リーマンショックの中で皆が証券化商品の損失を埋めるために、一斉に総投げし、あっという間に80円がついてしまいました。
東京にある駒沢大学は大損して100数十億円の損失が出て、多摩川の校舎を担保にいれたという話がありました。当時、学校法人は大なり小なり、そういった事をやっていましたので、金融機関と訴訟にまでなって揉めたケースもあります。
金融危機が起きると破壊力があるため、こうした事象を過去の事例として頭にいれておき、金融危機のリテラシーの1つとして覚えておいていただきたいです。
消えた人はどんな人か
機関投資家、銀行、個人投資家、問わずにいます。リーマンショックでは、証券化商品を買ったプロが投げたわけです。暴落するとトレーディングは儲かりますが、他の部門(セキュリタイゼーションの部門)は大損なので、銀行全体でNETすると儲かっていないとなり、トレーダーにボーナスが周ってこなくて辞めるパターンもあります。
リーマンショックでは個人で大けがした人が多くいて、去った人は多くいます。ドル円、クロス円、日経平均株価が下がってくる所に無限に難平(ナンピン)して最後に万歳して投げていった人が消えていった人です。
急落、暴落が起きると投資家層の入れ替わりがおきます。
皆さんに伝えたいこと
暴落・急落が起きるということは、市場の中で変なポジションを持っている人が増えてきて初めて起きます。平和な時に1抜けた2抜けたとはならない。市場の中で評価損を持っている人が増えてきて1抜けた2抜けた始まり、一気に10抜けたとなり、急落・暴落が起きます。
その暴落が起きる前に市場が不安定化します。数字ですと、日経VIでいえば30を超える、米株3指数の1つであるS&P500変動率のVIX指数が40に寄るなどで現れます。
暴落が起きる時はどういう条件があるのか?とよく聞かれますが、「自分が生きていて不自由を感じる時に急落、暴落が起きる」と答えています。
東日本大震災の時は福島第一原発の影響で今まで購入できていたミネラルウォーターが買えなくなりました。これは不自由です。
コロナ時はマスクが購入できなくなりました。8枚入り500円で購入したり、100枚入り8,000円で購入したりしました。
金融市場が混乱していて、自分が不自然な状態あるいは不自由を感じる時に暴落・急落が起きると覚えておいてください。これは、金融リテラシーの尺度の1つだと思っています。
マイケルバリーが空売りを仕掛けている?16億ドルのプットオプション
プットを買うということは売る権利を買っているわけで、ダウンサイド(下向き)の力が大きく働くと、実はとんでもないことになります。例えば、コロナショックの時には、買った価格から40倍、50倍になった例は多くあります。
それを扱える人というのは、一通り学んだ人しかできません。いきなりオプションをやり、明日に爆益が出るかというと、そういうものではありません。どこを買ったらいいか、どこを売ったらいいかはリスク指標を考えていけば自然と消去法的に回答が出てきます。
もし金融危機・暴落・急落の中でオプションにて爆発的利益を得たいと考えるのであれば、普段の平和な時、今から学習を積み重ねていかなければなりません。
リテラシーを確立することが重要だと考えています。オプションを買う事は単純ですが、それ程簡単ではないことを理解していただきたいと思っています。
FX、現物株しかやってことがない方がオプションをやると、とんでもない損益のブレに直面して驚かれると思います。
例えば、1,500万円の評価益があったものが、6時間後に1,000万円になっていて、そこでどういう判断をするかが重要です。売る判断をせずに、継続する判断をし、その日の夕方には300万~400万で、戻っても500万程度にしかならないということもあります。
損益のブレが発生するところが、オプションの怖いところです。ある程度の経験値が重要になってきます。
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