東京都は公僕の組織なのか
以前にも記した神宮外苑花樹伐採の愚
明治神宮外苑の再開発(東京都)に伴い千本近くの樹木が伐採される予定になっていることに、ようやく批判が殺到、社会問題となっている。
https://real-int.jp/articles/1818/
そのことを察知した東京都は、年の瀬も押し迫る昨年12月26日、都の環境影響評価審議会を急遽開催。事業者(三井不動産、伊藤忠商事、日本スポーツ振興センター、明治神宮)案に関する審議を、事実上終了とし、再開発計画にゴーサインを出した。
イチョウの枯死に関わる根の調査も後回しにされた。事業者側は必要な申請手続きを進め、都は間もなく最終判断を行う予定だ。
ただ、著名な日本の音楽家(故人)が伐採中止を都知事宛に請願していたことが伝わり、都知事も、「よく環境や文化への影響を精査するよう、業者側に伝える」と反応。
しかし、結局のところ、多少の伐採縮小などで逃げるつもりであることは、わかり切っている。
明治神宮外苑全体の再開発計画は2000年代当初からあって、当時から「2回目の東京オリンピック開催」を大前提とし、大きな構想であった。具体化し、全体像が図面化したのは2013年にオリンピック招致が決定したあと。
そして2021年12月、ようやく東京都が計画骨子案を2週間に限って縦覧。神宮球場と秩父宮ラグビー場の位置関係を入れ替えたうえで、神宮球場は高層ホテルと一体化し、ラグビー場は屋根を掛けて人工芝にする予定だ。
それだけではなく、現在、公園やスポーツ施設がある場所に、商業モールやホテル、オフィス用途を前提に、高さ190メートルの二本の複合ビルをはじめ、複数の超高層建築が計画されている。
ようするに、東京五輪を執拗に招致しようとしたのは、この外苑再開発が真の狙いだった。
スポーツ界のドン=森喜朗元首相とデベロッパー、ゼネコン、明治神宮が各々の思惑から石原慎太郎都知事(当時)を五輪招致に向かわせたのである。
計画は広範囲かつ超高層ビルも含めた巨大な再開発であり、しかも東京都の中心に位置する歴史的文化的エリアで進められる。
そんな公共の資産の利活用が、十分な議論のないまま、拙速かつ乱暴に進められているという驚くべき事態である。東京都は「自らは計画に関与していない」と白を切る。
しかし、明治神宮とその周辺は、そもそもそのような詭弁が通る場所ではない。新宿区と港区にまたがる神宮外苑は、もとは国有地。
明治天皇の偉勲を偲ぶ多くの国民の声で、軍の操練所であった場所に明治神宮が、創建されたわけで、全国民から寄付された樹木と勤労奉仕により1926年(大正15年)に完成した。
「神宮の杜」として百年後に原生林に近づくように計画された神宮内苑と、広く国民の健康増進とスポーツ振興に加え、自然と融合した都市景観のモデルとなることを目指し、近代的な都市公園として計画されてきたのが、この神宮外苑なのである。
さらにその周辺は、日本で初の自然的景観の保全を義務づけた都市計画上の風致地区にも指定された。
そのため、ほんの数年前までは、高さ15メートル超えの建物建造を禁止するなど厳しい開発規制がなされていた。それがなぜ、超高層ビルの建物が可能になり、商業施設の誘致が可能になったのか。
ほんの数年前のことである。その予算が数千億円にまで膨らみ、さらに建設の着地点が見えなくなり、結果として計画の全面見直しとなったことで、その無謀ぶりが広く国民に知られることとなった、新国立競技場計画の問題は記憶に新しいところであろう。
東京都が東京オリンピックのメイン会場になるからと、それまでの5倍以上の高さである80メートルにまで建築規制を緩和した。
この事実こそが、この地区・地域の猛烈な開発に手を貸した最大の原因である。
つまり、この再開発計画は東京都による「高さ制限の撤廃」と、「風致地区破り」が元凶となり、結果として超高層が可能になったことで、民間デベロッパーの投資意欲を惹起させたことは明らかなのである。
「民間が計画したものを都が許認可しただけ」と、何か問題が生じる毎に都知事以下の都幹部は、口を揃えて、逃げ切る構えだが、元々都の規制緩和・撤廃こそがデベロッパー、ゼネコン、政商、有力政治家による「仁義なき再開発」を煽ったのである。
言ってみれば、欧州各都市の歴史的遺産である「旧市街地区」の存在を、ぶち壊してしまうことに等しい。
東京都庁では歴史も文化も関係ない、のであろう。
ひたすら民間に任せ、都はさらなる税収(資産課税)アップを狙う…
葛西臨海公園の歴史的経緯
以上は東京都の悪政を神宮外苑の樹木伐採を例に、概略的にお伝えしたが、もっと立腹する例を記す。都立葛西臨海公園の樹木伐採の件だ。
江戸川区にあるこの公園は、世界的にも評価が高い建築家の設計によるマグロの回遊水槽が、有名な水族園と、広大な自然公園に江戸の海を再生した人口渚からなる臨海公園で構成され(旧江戸川を挟んで東京ディズニーリゾートが目前にある)、長く都民に親しまれてきた公共施設(広大なり!)である。
この水族園の建て替え計画が持ち上がったのは2019年。都は同じように「民間がやることなので、合法であれば都は許可することしかできない」という。同公園の運営は“PFI方式”。これは財政負担軽減を旗印に昨今様々な地方公共団体で採用が進んでいる「パークPFI」の一環。
PFIはプライベート・ファイナンス・イニシアティブのことで、公共サービスを民間業者に任せて維持管理などの財政出動を軽減するだけでなく、施設活用や運営に自由度をもたせることで民間事業者には公園内に商業施設の誘致等で、収益構造の創出を促すといった制度である。
同時に必要な施設の建設を民間に任せ、行政(都)は現法に則し許認可だけを担当する。東京都は22年1月にPFI計画の公募を開始し、8月に複数のゼネコンからなる共同事業体を事業者として選定。
その新水族園計画は、延べ面積約2万4千平方メートル規模。カフェやレストランなども併設される予定である。
現在の同公園は、その建物を地下に沈め、屋上を水盤として、東京湾と一体のランドスケープが美しいグラスドームが有名だが、そこにもうひとつ貴重な施設がある。それは、自然の景観の中に小川の流れを再現した淡水生物館だ。
この一見目立たないが重要な施設のある場所に、新水族園が計画されてしまったことで、外苑で伐採される以上の樹木が犠牲となる。同時に、新施設の屋上には太陽光パネルを敷き詰めるという。
葛西臨海公園も、その歴史を振り返れば都や国民の共有財産であり、民間事業者の自由な計画を当然とするような場所ではない。
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続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
2023/06/013の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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