最近の中東情勢 OPECプラス,イスラエル,トルコ
OPECプラスの協調の行方
6月4日に開かれるOPECプラス(OPEC加盟国と主要非加盟国で構成)の会合に注目が集まっている。
5月31日付ロイター通信は、米国石油協会(API)の週間在庫統計が発表され、ロイター通信の市場予測(140万バレル減)より大幅に在庫が積み増されており、520万バレルになっていたと報じている。
また、同日、中国国家統計局が発表した購買担当者景気指(PMI)が4月の49.2から下げ、48.8と5カ月ぶりの低水準をつけたと報じられている。
こうした状況の中、6月1日の時点では、追加減産を決める可能性は低いとの報道が多く流れている。
その根拠として挙げられているのは、季節的に需要は高まるが、OPECプラス以外の供給の伸びが鈍化するというもので、4月の減産効果を見極めるうえで現状変更はないとの分析である。
OPECプラスは原油輸出量の調整を主導し、原油価格に与える影響は大きいが、米国のシェール・オイルやシェール・ガスの生産動向は無視できない状況にある。
4日のOPECプラスに関し、5月31日時点で、ロイター、ブルームバーグ、ウォールストリート・ジャーナルは現地での取材許可を得られていないと報じられている。
OPECプラスは、新型コロナウィルス感染症のパンデミック当初のサウジアラビアとロシアの対立による混乱後は、ロシアのウクライナ侵攻のなかでも協調減産を続けてきた。
しかし、世界経済の成長が伸び悩む中、原油価格の下振れも見られており、今回の会合は、OPECプラス内で産油量をめぐり政策協調が難しい局面をむかえつつあることを示しているのかもしれない。
イスラエル国会での2023年度・2024年度予算の可決
ネタニヤフ政権の司法改革に対する激しい反対運動が続くなか、5月24日、国会での36時間に及ぶ討論を経て、2023年度予算案、2024年度予算案が可決した(賛成64、反対56)。
5月29日までに2023年度予算が成立しなければ、議会は自動的に解散し総選挙になるところだった。
解散、総選挙を回避できたネタニヤフ首相は、「新しい日の夜明けで、イスラエル国民にとって良い日だ。司法制度改革は復活し、連立政権は、任期期間はここにいることになる」と述べた。
この予算案をまとめる過程で、ネタニヤフ政権は、極右政党などと協議を行い、超正統派の神学校への資金提供を増額している。
そのことで、神学校に進むユダヤ人男性が増え、さまざまな領域の仕事や軍務に就く男性が減少するのではとの懸念が生じている。
司法制度改革の影響
一方、ネタニヤフ政権が再開しようとしている司法制度改革は、イスラエル経済に悪影響を及ぼしている。
4月には、ムーディーズがイスラエルに対し、ソブリン格付けでA1としながらも「積極的」から「安定」に引き下げた。
さらに、イスラエルの有力企業は、すでに資産を国外に移転しており、テルアビブ株式市場や通貨シェケルは下落傾向にある。
5月22日、イスラエル中央銀行は、政策金利を0.25ポイント引き上げ、4.75%とした。10会合連続の引き上げで、金利水準は2006年以来の高水準となっている。
この状態について、アビル中央銀行副総裁は、「司法制度改革を受け、ここ数カ月で想定以上の利上げに迫られた」と述べている。
司法制度改革に反対する国内の起業家や投資家も多く、彼らは米国のユダヤ社会の司法制度改革批判にも耳を傾けている。
米国議会では、3月に上下両院の民主党議員90人以上が、イスラエルの司法制度改革は同盟国イスラエルの民主主義を脅かすとの懸念を表明する文書をバイデン大統領に提出している。
ネタニヤフ政権は、司法制度改革への批判を主権国家の内政問題と主張し、推進しようとしている。
しかし、イスラエル経済への影響や米国の軍事支援がイスラエルの安全保障を補完していることに鑑みれば、同政権は米国のユダヤ社会をはじめとする改革への懸念の声に配慮する必要がある。
トルコ通貨リラの下落
5月28日の決選投票で、エルドアン大統領が再選され、さらに5年間の任期を務めることになった。同氏の再選を受け、5月29日、トルコの通貨リラは対ドルで20.077リラを付け、最安値を更新した。
エルドアン大統領は型破りの低金利政策論者で、これまで中央銀行や経済閣僚は、しばしば同大統領の主張を忖度して金融政策を行った。エルドアン氏の再選で、この政策は今後も続くと市場は見たのだろう。
エルドアン大統領は、・・・
全文を読みたい方はイーグルフライをご覧ください。
メルマガ&掲示板「イーグルフライ」より一部抜粋しています。
(この記事は 2023年6月4日に書かれたものです)