公開日 2023年3月22日

SVB破綻はスタートアップやVCのチャプター11に繋がるのか?

SVB破綻は株価暴落に繋がるのでしょうか。ゾルタン・ポズサー氏の予言どおりに、世界は動いてきています。L字型の垂直に落ちる深いリセッションに今年中に入っても不思議ではない状況になってきたのではないでしょうか?
SVB破綻はスタートアップやVCのチャプター11に繋がるのか?

SVBの破綻で新興企業破綻の可能性は現実に,その破綻の要因と経緯

昨年11月の記事「SPAC合併企業の破綻連鎖が起きると投資しているファンドも危ない?」では、SPAC上場企業など新興上場企業の破綻はいつか起きるそこに投資するファンドも倒産すればエンロン事件のように株式市場暴落へのきかっけとなりうると書きました。

まず、FTX破綻の余波により、暗号資産関連融資が多かったシルバーゲート銀行の親会社シルバーゲート・キャピタルが9日に事業を閉鎖、シグネチャー・バンクも12日に破綻しています。

そして、3月10日、シリコンバレー・バンク(SVB)が経営破綻しました。危機にあるというニュースが流れてからFTXは10日間で破産しましたが、SVBは僅か2日でした。

SPAC上場企業でも、それに投資をしているVCでもありませんが、融資をしている銀行が潰れてしまったのです。赤字企業がほとんどで、利上げによりVCからの増資の機会もなくなり、手元資金も金利高騰で流出額増加しているスタートアップ企業が顧客だったことが、大きな要因です。

SVBは、SPAC上場企業も多く含まれるベンチャー企業に特化した銀行です。破綻の原因については他の記事でも解説されていますが、誤解を招くものが多いので、ここでは簡単に時系列でまとめてみました。


1.2018年のトランプ政権の規制緩和によりMBS(住宅ローン担保債券)などの自己資金を元手とする取引が可能になった

2.2000年3月のFRBのゼロ金利政策により多額の資金がスタートアップ企業に流れ込み、SVBの預金は2020年末には2018年比較で倍増していた(参照:ニューヨークタイムズ記事)

3.倍増した預金を現金として手元にあまり残さず、安全な米国債券だけでなくMBSでも運用していた

4.2022年に開始されたFRBの利上げにより米国10年債券は0%から4%へ、住宅金利は6%台となり、米国債券よりさらにMBSの価格は急落していた

5.利上げにより毎月の返済資金が増加していたスタートアップ企業からの、預金の流出が続いていた

6.3月9日に手持ち債券を約210億ドルで売却、第1四半期の18億ドルの税引き後損失と22.5億ドルの資金調達を発表、大きな損失を抱えていることが明らかになった

7.シリコンバレーで大きな影響力を持つ「PayPalマフィア」のドンと呼ばれるティール氏などの有力VCが出資するスタートアップに資金引き上げを要請した

8.他の地方銀行とは異なり、主要顧客は個人ではなくITリテラシーの高いスタートアップ企業のため、多額の資金がスマホのクリック一つで一気に流出した

9.20日には破綻したが、本来は保護される預金は25万ドル(約3300万円)であり、顧客は個人ではなくスタートアップ企業のためほとんどの顧客の預金額はそれを上回っており、多くのベンチャー企業が従業員の給与も払えず破綻する危機となった

10.イエレン財務長官がFRBと協議、特例として3行とも預金が全額保護されることとなった

11.救済に充てるFDIC(連邦預金保険公社)の預金は20兆円に満たず今後新たな破綻が起きると対応できないため、BTFPプログラムを設置、銀行への融資提供も決定した

12.米中対立が続く中で将来性のあるスタートアップを潰すことは米国の国益に反し、政府の対応は迅速で評価できるものの、モラルハザード問題は残り、世界金融危機(リーマン・ショック)時と同様に、今後破綻が続くのかという疑心暗鬼に市場は陥っている


これが現在の状況ですが、利上げにより含み損を抱えている銀行が実は他にもあるのではという不信感から、FRBのタカ派転向で人気セクターだった銀行部門は大幅に売られ、大手銀行の株価も大きく下げていました。

そして、過去数年破綻が取り沙汰されていたクレディ・スイスが同業のUBSに吸収合併される事態となりました。前回のFTXの破産の記事に書いたように、市場の隠された闇がついに公となってしまいました。

スタートアップとVCの破綻が現実となる理由

現在は銀行部門に市場の不信の目が向けられていますが、スタートアップとそこに投資をしているVCも危険な状況にあります。

SVBは、1983年設立でITバブル期からベンチャー企業に融資していた、ベイエリアの起業家ならば知らない人はいない銀行です。そのSVBでさえ倒産したのですから、有名VCが破綻してももう驚く人はいないでしょう。以下に破綻の可能性がある理由を挙げてみます

1. VCの投資企業への評価損が不明

今回のSVBの破綻の際も、含み損が明らかになったのは3月9日に手持ち債券を売却し、含み損を公表したからです。VCも同様であり昨年から続く傘下のスタートアップ企業の株価暴落で、投資した企業の時価総額の価値が大きく減少しているはずです。

しかし、多くのVCは評価損を全て計上しているわけではなりません。株価が10分の1になっている企業も存在する中で、どれほどの評価損が出ているのかは不明なのです。

前回の記事に書きましたが、FTXにはセコイア・キャピタル、タイガー・グローバル、サード・ポイント、シンガポール政府投資公社、ソフトバンクの著名VCが投資していましたが、投資額はゼロになったわけです。

2. スタートアップが増資でなく融資に頼る環境にある

将来有望でもまだ赤字のスタートアップ企業は、その株価が暴落する中で、増資をしようとすると、市場価値を下げることになります。そこでメディカルやITのスタートアップの半数と取引があったSVBからの融資に頼るようになっていました

しかし、SVBの破綻によりその預金は保護されましたが、新たな融資については難しくなるでしょう。融資ができたとしても返済条件は悪化し、より高い金利を受け入れざるをえないでしょう。また、米国では利上げが後1、2回で一旦停止するとしても、高い利率にとどまるため、返済金は高止まりするでしょう。

3. 増資も厳しく、できてもVCもスタートアップも市場価値が下がる

VC自体がどれほどの傷を負っているのかは分かりません。しかし、含み益がどんどん減少し、株価がベア・マーケットにありリセッションが確実となっている環境で、スタートアップの増資に応えるVCは少ないのではないのでしょうか?

増資できたとしても、株価と市場価値を下げてのものとなるので、スタートアップだけでなくVC自体の持ち株の評価額も下げることとなり、ルーズ-ルーズとなってしまいます。

4. 株価が暴落する可能性がある

今回の金融不安により「リーマン・ショックの再来か?」などの記事が見られるようになりました。上述のように破綻した4行は仮想通貨関連、スタートアップ専業、ゾンビー企業であり、特殊要因で破綻したと言えるでしょう。

しかし、イエレン財務相は他にも問題を抱えた銀行があるとしており、SVBのように米国債券やMBSで運用し含み損をかかえている地銀は存在するのでしょう。そうした地銀が破産するかどうか、連鎖倒産が起きるかは誰にも分かりません。

しかし、株価が暴落した際には一番影響を受けるのは、まだ赤字で資金力のないスタートアップとそこに投資をしているVCとなります。

有力スタートアップやVCが破綻する可能性も、昨年11月よりも高まっているわけです。

しかし、来年は米国では大統領選挙が実施されるので、バイデン政権は、株価暴落は当然嫌います。そのため、今回のような緊急措置をモラルハザードと言われながらも、取ってくるでしょう。利上げも3月または次回で終了し、年後半には利下げという声も出てきているようです。

それでも、ブッシュ政権もできるだけのことをしたにも関わらず、世界金融恐慌は起きました。政府であっても株価暴落は止められないことは、歴史が証明しています。

ゾルタン・ポズサー氏の予言どおりに、世界は動いてきています。L字型の垂直に落ちる深いリセッションに今年中に入っても不思議ではない状況になってきたのではないでしょうか?

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プロフィール

松田遼司

松田遼司

東京大学史学科を卒業後、内資メーカーに入社、半導体需要予測を担当。IVYリーグ系M.B.A.をアート・マネジメントとインターナショナル・ビジネス専攻で修了後は外資系半導体メーカーでアナリスト・広報・企画等を担当。その後ウェブ系外資系企業CEOを経て起業、2度のイグジットを達成。さらには内資メーカーでメディカル事業部を立ち上げ、ロンドン市場上場の黒字企業のM&Aを実現させた。

映画・写真・美術・旅行・料理・ワイン・漫画などについて造詣が深い。
自分ではなく、世の中のためになる仕事に就くことを理想としている。

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