ゾルタンポズサー【9】コモディティのスーパーサイクルが到来!?
前回の記事はこちら
【1】ブレトンウッズ体制3は起きるのか?
https://real-int.jp/articles/1932/
【2】米ドル時代の終焉と人民元時代の到来
https://real-int.jp/articles/1933/
【3】2023年 FXでの勝者と敗者
https://real-int.jp/articles/1934/
【4】2023年 何に投資をすべきか
https://real-int.jp/articles/1936/
【5】世界は新冷戦時代 2023年も60/40には戻らない?
https://real-int.jp/articles/1956/
【6】L字型の大不況とスタグフレーションの必要性
https://real-int.jp/articles/1960/
【7】予言どおりに世界情勢は変化
https://real-int.jp/articles/2006/
【8】「TRICKs」の脅威
https://real-int.jp/articles/2010/
貿易戦争に勝利するために今後5年間必要となる4つの産業政策
ポズサー氏によると、世界金融恐慌(リーマンショック)を救ったバーゼルⅢのように、貿易戦争に勝利するには以下の4つの産業政策が必要だそうです。
- 再軍備
- 再サプライチェーン
- コモディティ在庫の積み上げ
- エネルギーのESG化
1.再軍備
「再軍備」についてはドイツの1,000億ドル、西側のウクライナ復興のための7,500億ドル、中国の「一帯一路」政策対抗のための6,000億ドルの予算をG7は用意しているそうです。
2. 再サプライチェーン
「再サプライチェーン」は、上記の米国のCHIPS法、EUのインダストリアル・ソベリニティなど自国への生産回帰策です。
友好国によるサプライチェーン再構築を目的とする「フレンドショアリング」をさらに推し進めたものです。対象のインドが本当に西側なのかわからない、海峡が封鎖されれば機能しないなどの問題があるからでしょうか?
しかし、第2次大戦前同様のブロック経済化に世界を推し進めることとなるので、どうなのでしょうか?こうなってくると、インドよりもメキシコが有望となるかもしれませんね。
3.コモディティ在庫積み上げ
「在庫積み上げ」は、EUは天然ガス、米国は減少した戦略石油備蓄が必要となります。インドは今後3年間に必要な石炭の備蓄を表明しているそうです。
食料もウクライナ紛争、中国と欧州の歴史的干魃で不足しています。銅は電気自動車などESGに多く使われるので、供給が不足しています。
4.エネルギーのESG化
「ESG化」の方向は変わらないですが、長期的なインフレによりコストが高いESGだけでなく石化製品に頼らざるをえないようです。またレアメタルは中国が供給量の過半を占めているので、上述のレアメタルブロック構想がでてきたのでしょう。
この4つの産業政策に今後5年間でどれだけの資金が投入できるかがポイントのようです。そして、この4つの産業政策推進はインフレと一体です。
需要ショックといえるほどに需要が増えるからです。反面、ESGに移行するために石化製品には投資をしてこなかった上に、在庫を自国に増やすために供給は制約されます。メキシコがリチウム鉱山を国有化し、ロシアが原油を減産するなどの動きがでています。
需要が増えて、供給が不足するので、構造的なインフレとなります。
中国のWTO加盟以来のコモディティのスーパーサイクルがやってくる!
ポズサー氏によると、上記の4つの産業政策を実施するには、政府も民間も長期の借り入れが必要となります。再軍備と在庫積み上げは政府、サプライチェーンの国内回帰とESG化は両方です。船や戦闘機、工場、倉庫、風量発電所などを作るために借り入れ、起債、増資しかないわけです。
そして、この政策は義務なので、金利が3%だろうと7%だろうと、関係なく実施されます。金利は上昇し、株価は暴落します。10年以上続く景気循環となります。
世界金融恐慌後の、低インフレとグローバル化、お金を刷りまくっていた時代はもう終わったことを認めるべきだと、ポズサー氏は訴えています。
1997年のドルペッグ制度の崩壊、2008年の世界金融恐慌発生と同じ状況で、世界経済は新たな10年間に入ったそうです。
中国やロシアなどの東側諸国には、もう投資はできません。米国はロシアに続いて、中国への投資を制限しているからです。
中長期的には金や原油などコモディティと、それに相関する通貨が上昇するというのがポズサー氏の予言です。
米ドルではなくコモディティに裏付けられた「ブレトンウッズ3」体制はもう始まっているのです。
【関連記事】
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