ドルの強弱要因をふまえての相場予測
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Ⅰ.早読み先週のドル円相場(寄り付きは東京午前9時の気配値、NY終値は現地午後5時の気配値)
週初10日:寄り付き105.86。
東京:重要経済指標の米雇用統計発表後のこの日、東京やSPRが休場ということもあり、105.80を挟んでの狭いレンジに終始。
NY:ロンドン時間に106.20を付けた後のNYでは、特段の材料がない中、米金利の低下に連れてじり安の展開となり、105.72まで下落。
しかしながら、新型コロナ追加経済対策や米中対立の行方を見極めたいとのムードが強まる中、低下していた米金利も持ち直し、106円方向へと反発。NY終値105.97。
11日:寄り付き105.99。
東京:仲値にかけてのドル買いに押される形で106円台を回復すると、東京の終盤には106.22まで上昇。
NY:ロンドン時間に欧州通貨や資源国通貨に対してドルが弱含んだものの、NY時間では7月PPIが予想を上回ったことや米金利の上昇を受けて反発。
前週の高値106.47近辺では上値を抑え込まれるも、10年債利回りが7月15日以来の0.65近辺まで上昇すると、106.68まで上昇。
NY終値106.50。
12日:寄り付き106.48。
東京:米金利が上昇する中、露のワクチン承認が好感材料となり、106.79まで上昇。
NY:欧州時間に106.98まで上昇した後のNYでは、7月CPIが良好だったことを受けて107.01を示現するも、米追加経済対策への期待感が後退し、106.69まで反落。
ただ、株高・原油高が進む中、リスクオンの姿勢でドル円は小反発。
NY終値106.91。
13日:寄り付き106.83。
東京:ドルが対オセアニア通貨で軟調となったことに連れ安となり、ドル円も106.57まで下落したが、同水準では底堅さを示した。
NY:ロンドン市場で106.97まで上昇した後のNYでは、107円直前で上げ渋るも、午後に入ると30年債入札の不調を受けて米金利が上昇すると、107.05を示現。
だが、その後はクロス円の売りに上値を抑えられる形で106.89まで下落。
NY終値106.95。
14日:寄り付き106.91。
東京:米金利が上昇する中、仲値に掛けて輸入筋のドル買いなどで強含みに推移し、一時107.03まで上昇。
ただ、米追加経済対策を巡って与野党間での調整が進まず、景気の先行き不透明感が残る中、ドル買いのフォロースルーも見られず、欧州時間にかけてはポジション調整の売りで106.73近辺まで下落。
NY:7月小売売上高が予想を下回ったことや米金利の上昇が一服したことを手掛かりにドル売り優勢の展開となり、106.44まで下落。
NY終値106.56。
Ⅱ.長期相場分析(週足チャートをご参照下さい)
2017年のドル最高値は114.73(11月6日)、そして2018年の同最高値も114.55(10月4日)に止まり、115円が超長期のドルの抵抗水準になっている。
2月17日週にトランプラリーの最高値118.66(2016年12月)近辺を起点とする抵抗線を抜き、昨年の最高値112.40に迫ったが、高値は112.23に止まった。
ここ数年の高値圏である114円台では上値が重たいという値覚えがあるため、112円台を超えての積極的なドル買いは見られず、長期的に112円台前半が強い抵抗水準との認識が生まれた。
3月下旬に年初来高値112.23(2月20日)を試したが、結果は111.71(3月24日高値)止まりと、111円台後半でもドルの上値の重さが確認されている。
111.71を付けて以降、下降チャンネルの中で推移しており、ドルの軟調地合いが継続している。
7月下旬には3月中旬以来の安値水準となる104円台前半まで下落しており、年末に向けては大きな節目の100円を目指す展開もあり得るか。
**中期予測レンジ:101.00~111.00
**上値メド水準
110.00(サイコロジカル)
112.23(年初来高値)~112.40(2019年最高値)
114.55(2018年10月4日高値)
114.73(201711月6日高値)
115.00(2017年11月以降の展開で意識された強い心理的水準)
**下値メド水準
105.00(サイコロジカル)
104.20(7月31日安値)
101.18(3月9日安値)
100.00(サイコロジカル)
99.00(2016年安値)
Ⅲ.今週のドル円相場テクニカル分析
○前週のまとめのポイント
・5円刻みの節目である105円が当面の下値となる可能性が出てきた。
・目先は前週の高値106.47さらには106.64(6月10日:当時の強い支持水準)を
ブレイクできるかどうかが注目されるが、106.47~64を上抜いて行く様であれば、
107円台後半までの反発もありえる。
・しかしながら、相場は下降チャンネルTR1-TR2の中で推移している点に著変はなく、トレンド転換を語るには時期尚早である。
・下値不安が払拭された訳ではなく、中長期下降トレンドが続く中、105円を割り込む様であれば、再び直近安値の104.20が試される可能性がある。
・今週は105円半ば~106円半ばで保ち合う展開と見るが、ドルがやや強含む局面もあると予測する。
・予測レンジ:104.20~107.69
○前週の相場と印象
週前半に保ち合い相場をこなした後、週半ばからドルが堅調となり、107.05まで上昇した。
12日~14日の3日間、日々107円を付けるも、107円台ではドル買い意欲が薄く、むしろ売りが優勢で、週末には一時106円台前半まで反落している。
前週の予測のまとめで「ドルが強含む局面もある」とした様に、ドルの上昇は一時的なものに終わった印象がある。
もっとも、107円を付けてからの下値が前週の予測で重要水準とした「106.47~64」近辺で止まっているため、ドルの弱地合いが改善されつつある点も否めない。
この点を強く支持するテクニカル要因としては、
(a)スポット終値(前週末106.56)が25日MA(同106.31)を上抜いていること
(b)転換線(前週末106.17)が基準線(同105.85)を上抜いており、三役逆転が解消されていること
が挙げられる。
(a)については、7月20日以来のことであり、特に注目しておく必要がある。
これに関連して、100日MA(前週末107.22)が目先の強い抵抗水準になっているが、
今週はスポット終値が同MAを上抜くかどうかが注目される。
(b)については、今週後半に一目の雲の下限が107.20近辺へと下降してくるが、
スポットが雲の中に入るかどうかが注目される。
下限は100日MAと同水準に当たるだけに、107.20近辺の動向が目先の焦点と言える。
他方、下値圏にも注意を払っておきたい。
106円を割り込む様であれば、上で述べた(a)や(b)の目は薄れることになり、
再び下値を試す展開が見込まれる。
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以下ではドルの強弱要因を指摘した上で、今週の予測をまとめた。
ドルの弱気要因
(1)2月下旬の相場でも112円台でドルの上値の重さが再認識されているが、そこから反落した後の戻り高値が111.71(3月24日高値)止まりとなっている。
(2)111.71と109.85(6月5日)とで抵抗線TR1(日足チャート)を引くことができるが、108円台前半(前週末108.15前後)へと下降してきた。
(3)(2)との関連で抵抗線TR1と下方に平行に引くことのできる線TR2とで下降チャンネルTR1-TR2が形成されている。
(4)25日MA(前週末106.44)・100日MA(同107.41)・200日MA(同108.18)の関係において、期間の短い線(含むスポット終値)が長い線とデッドクロスの関係にある。
(5)前述TR1と200日MA(前週末108.13)が重なっているため、107円台後半ではドルの上値が重たくなる
(6)107円台での滞空時間が短く、直ぐに106円台に押し戻されている。
ドルの強気要因
(1)直近最安値は104.20(7月31日)と、下値が2018年12月の安値104.10によって支持された。
・・・(3月のフラッシュクラッシュ相場は考慮していない)
(2)同様に、前週の下値が下降チャンネルTR1-TR2の下限によって支持された。
(3)(2)との関連で下降チャンネルTR1-TR2のセンターラインCLの上に出ている。
(4)7月27日週に下値圏で週足ローソクが下髭の長いカラカサ[短い実体(コマ線)+長い下髭)]となっている。
・・・前回ストラテジーアイディア参考図
(5)スポット終値(前週末106.56)が25日MA(同106.31)を上抜いている
(6)転換線(前週末106.17)が基準線(同105.85)を上抜いており、三役逆転が解消されている
(7)109.85(6月5日)を起点とする中期トレンド線(抵抗線)を上抜いている。
以上の強弱要因に照らして、以下の様に今週の予測をまとめた。
今週のまとめ
前週の展開では、107円台を付けたものの、依然として上値の重たさが感じられる。
上値を抑えた要因として100日MA(前週末107.22)の存在が挙げられるが、値頃感からの有象無象のドル売りがあったと言える。
もっとも、上値が重たかったとは言え、大きく値崩れしなかった点も見逃せない。
ドル売りが加速した7月下旬の局面では104.20までの下落を見ているが、その後の展開では徐々に下値を切り上げており、8月以降では一度も105円を割り込んでいない。
従って、当面の下値は見たと言える。
下降チャンネルTR1-TR2が機能しているため、中期トレンドは下向きであることに著変はないが、目先では7月下旬局面の様な地滑り的下落はなさそうだ。
やや上振れ感を見せ始めたのは前々週末からであり、時間経過から今週も上値を試す局面があると見ている。
但し、106円を割り込む様だと強気になり始めたセンチメントが後退する可能性があるため、依然として105円台前半程度までの反落はみておきたい。
予測レンジ:105.30~107.70
Ⅳ.チャートポイント
**レジスタンス
107.02~107.05[(50%戻し、109.85→104.20)~(8月13日の高値)]
*107.22(前週末100日MA)
107.57(7月20日の高値)
107.69(61.8%戻し、109.85→104.20)
107.79(7月7日の高値)
*108.16(7月1日高値)
108.13(前週末200日MA)
**108.15(前週末のトレンド線TR1)
109.85(6月5日高値)
110.00(心理的節目)
*111.71(3月24日高値)
**112.23(2月20日高値)
**112.40(昨年最高値)
**サポート
106.44(8月14日の安値)
105.72(8月10日の安値)
105.31(8月6日の安値)
*105.00(サイコロジカル)
*104.10~104.20(2018年12月安値、7月31日安値)
**101.18(フラッシュクラッシュ時3月9日の安値)
Ⅴ.今週のポイントとストラテジー・アイディア
●今週の注目材料
*米国
・FRB関連
19日:FOMC(7月29日開催分)議事録の発表
・・・フォワードガイダンス(6月のFOMCでも議論)の採用やイールドカーブコントロール(YCC)の
導入に関する議論があったかどうかが注目される。
・米経済統計等
17日:7月NY連銀製造業景気指数
18日:7月住宅着工・許可件数
民主党全国大会(~20日)
19日:FOMC議事録(前出)
20日:7月景気先行指数
8月フィラデルフィア連銀製造業景況指数
21日:7月中古住宅販売件数
7月製造業サービス業PMI
・他
公表が遅れている財務省の「為替報告書」で中国が再び為替操作国となる可能性。
(米中対立が本格化・・ドル売り)
・・・昨年8月5日に財務省は中国を為替操作国として認定しているだけに、今月は要注意。
15日に予定されていた米中による第一段階通商合意の進捗状況の検証は延期見通し(15日東京時間)。
実施された場合は、中国の輸入額が合意目標値を下回っているため、米中対立激化要因となる(ドル売り)が、本稿執筆時点では、中国が米国から原油の輸入を増加させると伝わっている。
新型コロナウィルス感染者拡大を巡っては、追加予算協議が与野党間で長引く一方、治療薬やワクチン開発報道が錯綜。
・・・刹那的なドル売り・ドル買い要因
大統領選ではトランプ大統領が不利な状況も、イスラエル・UAEとの融和路線で巻き返しに転じている。
・・・今週は民主党全国大会、来週は共和党全国大会
*日本
中長期的に貿易収支が赤字傾向にあるため外貨不足となっている(ドル高・円安)
・・・このところ下値圏では輸入筋のドル買いが増えている。
但し、日銀短観(7月1日発表)の大企業(輸出)関連事業計画の上期採算レートは107.86
(下期は107.86、通年は107.87)と、107円台半ば~108円台前半では実需の売りが想定される。
*ユーロ圏
21日:ユーロ圏7月製造業/サービス業PMI
今週のストラテジー
ストラテジー
*ストラテジーA:下降トレンドが継続しているため、依然として基本ストラテジーはドルの戻り売りに置く。
推奨水準
107円台半ばからの売り。
107円台前半から日計りとしての試し売り(日計り戦略のため、浅目のストップ要)。
*ストラテジーB:転換線が基準線を抜いていため、日計り戦略としてのドル買い
(日計り戦略のため、浅目のストップ要)
推奨水準:106円台前半
・ストラテジーAの理由と背景
(1)下降チャンネルTR1-TR2(日足チャート)が機能している。
(2)ドル需給の緩み→107円台で上値が重たくなる可能性。
日銀短観(7月1日発表)の大企業事業計画の上期採算レートは107.86(下期は107.86、通年は107.87)と、
107円台半ば~108円台前半では実需の売りが想定される。
上値の重たい展開が続いているため、徐々に実需の売り水準が切り下がる可能性がある。
25日MA(前週末106.31)・100日MA(同107.22)・200日(同108.13)の関係で、
期間の短い線(含むスポット)が順番に長い線とデッドクロスしている。
25日MAと100MAとのクロス関係は信頼性が高い。
デッドクロス中の25日MAと100日MAとの関係が逆転するまでは、
ドルの中期的軟調地合いに著変はないと見ている。
(3)一目の雲の下限が週後半に107円台前半に下降してくる一方で、
同ゾーンに100日MA(前週末107.22)が存在している。
(4)109.85(6月5日)からのドル下降局面では、
ベアリッシュ・フラッグとウェッジのパターンが出現している。
・・・参考図
・ストラテジーBの理由と背景
(1)前週では105円台前半で実需のドル買いが見られている。
本邦貿易収支に赤字化傾向が見られるため、押し目では実需のドル買いが入りやすい。
(2)7月下旬ではドルが104円台まで下落したが、週足終値では5円刻みの節目105円を下回っていない。
・・・8月以降では105円を下回っていない。
(3)(2)との関連で、このところの下値圏で「カラカサ」の週ローソク足が出現している。
・・・前回の参考図
(4)109.85(6月5日)を起点とする中期トレンド線(抵抗線)を上抜いている。
(5)転換線(前週末106.17)が基準線(同108.85)を上抜いている。
(6)スポット終値が25日MA(106.31)を上抜いている。
注)利食い・損切りは個人のトレーディング・スタイルやトレーディング・スパンが異なるため、特に推奨水準はありません。
コメントや推奨水準は単なる筆者の分析結果であり、その水準での取引を勧めるものではありません。
投資の最終判断は自己責任で行ってください。
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