キウイ通貨の光とリスク
オセアニア通貨間ディールの人気
ブルンバーグニュース(5日)に、これまでにない視点からのオセアニア金融市況解説がなされている。
明らかに外為市場でのオーストラリアドル(オージー)と、ニュージーランドドル(キウイ)の組み合わせディールが注目を浴びていることを意識している。
RBA(オーストラリア準備銀行)は今週の会合で追加利上げを行うと見込まれるものの、引き締めサイクルは終わりに近づいているとみられる。
一方、RBNZ(ニュージーランド準備銀行)は前回会合で過去最大の利上げ(75bp)を実施するとともに、追加引き締めも示唆しており、年末の段階で両中銀の見通しには開きが目立っている。
RBAは6日の政策決定会合で、政策金利であるオフィシャル・キャッシュレートの誘導目標を、25bp引き上げ3.1%とするとの予想がエコノミストの間で大勢だ。
さらに1、2回の追加利上げを見込むエコノミストがいる一方で、豪州経済を過度に減速させることなくインフレを落ち着かせるとRBAの目標を踏まえ、来年にはRBAが利上げを一時停止すると予想する向きもある。
これに対し、RBNZはここまで合計400bp(4.0%)の利上げを実施し、追加引き上げが見込まれている。FRBも3月から計375bp(3.75%)引き上げており、こちらもさらなる利上げが予想される。
両中銀はインフレ抑制でリセッション(景気後退)入りリスクも辞さない構えだ。
HSBCのチーフエコノミストでRBAにいた経歴を持つ人物は以下のように指摘した。
中銀間の相違は一部経済状況の差と反応関数の違いを反映している。NZ(ニュージーランド)のインフレ問題はより根深いものと見られ、住宅市場のサイクルもさらに極端だ。
豪州ではNZと米国が経験しているほどの賃金上昇圧力が見られないことも重要な点だ。
NZの労働コスト指数の伸びは年初から3%を上回り続けているが、豪州の統計は前四半期に2%レンジを抜けたに過ぎない。
インフレ率については、RBAの予想は今四半期に8%でピークを内、その後の2年間は鈍化傾向となり、2025年になってようやく2~3%目標に戻るとの見方を示している。
これに対しNZは、今四半期と来四半期に7.5%でピークとなり、その後は積極的な利上げサイクル見通しを背景に、より急速に減速すると予想されている。
NZドル急上昇の背景
NZドルは10月以降、堅調な推移となっている。
主な要因は米国で利上げペース鈍化観測が台頭したことを受けたドル安であり、多くの通貨が同じ方向に動いている。
ただし、その中でもNZドルの戻りは大きく、10月21日から12月5日までの主要通貨の対ドル騰落率を見ると、NZドルが9.8%と最も買われている(因みに円は8%)。
背景にあるのはRBNZのスタンスだろう。足下では多くの先進国の中央銀行が利上げペースの鈍化に踏み切っている。一方、RBNZのスタンスは非常にタカ派的な状態が維持されている。
NZにおいては、商品高により食料品やエネルギーなど生活必需品を中心に、インフレ圧力が強まっているほか、コロナ禍からの景気回復の動きに加え、資金流出に伴うNZドル安が輸入物価を押し上げてインフレ昂進を招いており、インフレ率、コアインフレ率ともにRBNZの定めるインフレ目標を大きく上回る水準で推移している。
また、同国ではコロナ禍対応を目的に政府、及びRBNZが財政並びに金融政策の総動員による景気下支えに動いたものの、金融市場におけるカネあまりや低金利環境の長期化に加え、コロナ禍を経た生活様式の変化も重なり不動産市況が急上昇するなどの副作用も顕在化した。
よって、RBNZは景気への悪影響を懸念して住宅ローン規制の厳格化などによる対応に留めたものの、その後も景気回復が進むとともに不動産市況は一段と上振れしたため、昨年7月に量的緩和政策を終了し、10月には7年強ぶりの利上げ実施を決定するなど、金融政策の正常化を進めた。
更に、その後もインフレが一段と昂進したことを受けてRBNZは10月の定例会合まで、8会合連続の利上げを決定するとともに、直近5会合は利上げ幅を50bpとする大幅利上げに動くなどタカ派姿勢を強めてきた。
NZドルは10月下旬以降のドル反落地合いの中、大きく上昇し、物価への悪影響は後退。
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(この記事は 2022年12月07日に書かれたものです)
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