FOMCと円相場のトリセツ
9月FOMCは金科玉条ではない
8月26日の「ジャクソンホール・ショック」、9月13日の「8月CPIショック」、そして9月21日の「9月FOMCショック」と米金利上昇見通しと、それに伴う米景気後退予測が遂に限界的状況に近づいてきた感がある。
確かにドルはすこぶる強く、ドル円も日銀の介入があっても、たちまち元の円安水準に戻している。今週もタカ派の鎧を分厚くしたFOMCメンバーが、さらなる利上げスピードバイアス論を競い合うのであろう。筆者は今も、こうしたタカ派の論理に距離を置いている。
何度も記すが現在の世界経済は「戦時経済」下にあり、コロナ禍の影響も特に労働市場を大きく撹乱させたままにある。つまり、全く先が定まらない状況にあるわけで鋭角的な変化もありうる。
FRBやFOMCメンバーの見方が常に正しいとも思わない。ただ、彼らの“変貌具合い”が市場のリード役になっているのも事実であり、ディーラー的には、そうした流れにフォローするしかない。
しかし、筆者が7月末段階で直感的に予測した「原油価格は間もなく急落する」が現実になり、現在、WTI先物価格が70ドル台となっているように、何があってもおかしくないのである。
したがって「パウエルFRB議長がボルカー元FRB議長に変身をした」とまで、サプライズ扱いした9月FOMCだが、大した中身でもない、というのが率直な感想である。
最大の注目点であったドットチャートに関しては、ターミナルレート(利上げの最大値)が、引き上げられたことから、「サプライズ」と評されているが、
市場参加者が予想するFF金利を上回りすぎてしまえば、金融環境はタイト化してしまうし、市場参加者が予想するFF金利を下回りすぎてしまえば、金融環境は緩和してしまうことを踏まえれば、予定調和(市場との対話)的な結果にならざるを得なかったということであろう。
ゆえに、決して完璧な論理にもとづく結果ではないということだ。今回のFOMCで公表されたドットチャート及びSEP(経済見通し)が当面の金融政策運営の指針となるわけだが、注目されやすい中央値に関しては、あくまでも経済見通しがFOMCメンバーの予想通りとなった場合においては、参考指標としての有効性が高まる。
一方、景気・インフレともに不確実性の高い足下の状況においては、あまり意味を有さない可能性がある。
2022年以降のドットチャートを振り返れば、最大値が切り上がり続けてきた。中央値もその最大値の後追いをするかのように切り上がり、そして利上げペースも加速してきた。
つまり、FOMCメンバーが予想するFF金利の最高値が、FRBが今後さらにタカ派化した際の金利水準の目安となる。今回のドットチャートを見ると2022年は4.625%、2023年は4.875%がFF金利の予想最高値となる。
仮にインフレの高止まりリスクが高まれば、FF金利の道筋は中央値ではなく、最高値を実現するようなペース、ようするに2023年にかけて5%付近の水準へと上方修正される可能性が高まるだろう。
他方で、FOMCメンバーが予想する以上に景気悪化が進めば、需要が急激に落ち込み、インフレ圧力が和らぎ、FOMCがハト派に戻る可能性もあろう。
FOMCメンバーの実質GDP成長率の最低値は2022年に前年比+0.0~0.1%が4名、2023年に同マイナス0.3~マイナス0.4%が1名となっており、こうした最低値を下回るような減速の兆候が見られれば、利上げ停止や利下げが早期化する可能性がある。
ただし、問題は景気が悪化してもインフレ圧力が和らがない場合である。
こうした場合はインフレ対策を重視するFOMCメンバーはタカ派的スタンスを維持する一方で、景気を重視するFOMCメンバーはハト派的なスタンスを強め、FOMCが一枚岩でなくなり、金融政策に対して市場が疑念を持ちやすくなる恐れがあるだろう。
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(この記事は 2022年9月29日に書かれたものです)
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