ダム発電量は簡単に年間2兆円増やせる
日本は自然に恵まれた国
海外の川と比べると、日本の川は急峻で「滝」のようだと言われています。
周りを海で囲まれ、16000以上の山に雨が降る世界でも類を見ない国なのです。
山に降る雨は、位置エネルギーと呼ばれるエネルギーを持っています。
(個人的には位置エネルギーは一般のエネルギーとは違うのですが分かりやすいため使っています)
ダムは水をせきとめ、位置エネルギーを電気に変換することで発電しています。
水力発電は原油や天然ガスを燃やすわけではないので優れています。
高さが高い位置にあるダムの水は原油に相当するといっても良いのでダムは油田に相当するといわれています。
地面から汲み上げるのではなく、勝手に空から降ってくるのです。
電話の発明で有名な米国のグラハム・ベルは地質学者でもあり、1898年に来日した時、「日本の豊かな水資源はエネルギーになる」と言ったそうです。
日本は自然に恵まれ、発電のポテンシャルが高いダムが実は、発電能力を半分程度しか使っていないのです。
まさに、もったいない状態です。
既存ダムの発電量は増やせる
現在、新しいダムを造るのは困難です、
しかし、今のダムの運用方法を変えるだけで大幅に発電量を増やすことができます。
一般にダムは多目的ダムが多く、その目的は利水(発電・水道)と治水(洪水防止)で相反することです。
大雨に備えて、ダムの水を半分程度にしておくことが求められているのです。
治水機能も大切ですが、これは気候(大雨・台風)を予測できない60年以上前の考え方です。
現在は気象予測を活用することで、大雨が降りそうであれば、先に放流することができます。
その分、ダムの水位を上げることができ、発電量が増えます。
日本の川は急峻なので、放流された水はほとんど1日で海までいきます。
多摩川は朝放流した水は夕方には海までいきます。
気候変動が激しくゲリラ豪雨などもありますが、天気予報に合わせて調整することにより、ダム水位は上げやすくなっています。
その他のダムの活用
① 発電設備を最近のものにする
古い発電設備(発電機)を最新のものにするだけで20%も効率をアップすることが期待できます。
これは極めて簡単なことですが、現在、電力会社に資金の余裕がなくなっているので交換できない状況らしいです。
お金を生むものなので積極借り入れをすると良いですし、クラウドファンデングなども活用できるのかもしれません。
また、電力料金は高くなっていく方向だと予測されています。
②発電に使っていないダムで発電する
現在、発電に使っていないダムに新たに発電機を設置することができます。
民間だと許認可などで問題となることがあるので、国や地方自治体が設置すると良いです。
③古いダムをかさ上げする
費用がかかりますが、新設するのと比べるとはるかに安価です。
発電量を倍近く増強できるので、新しいダムを1つ造るのと同じメリットがあります。
ダムではありませんが、小水力発電をすることで効率よく発電することも可能です。
発電に使っていないダムに新たに発電機を設置するのは規模から小水力発電に分類されるものが多いと思います。
日本では小水力発電を設置できるところはかなり多いです。
小水力発電についてはこちらの記事を参照ください。
https://real-int.jp/articles/1608/
水力発電量
参考までに2021年の日本の発電割合を掲載しておきます。
天然ガス 31.7%
石炭 26.5%
石油等 2.5%
太陽光 9.3%
水力 7.8%
原子力 5.9%
この中でも、水力は一番クリーンといえます。
新規ダムを造らなくても現在の水力発電の7.8%の約2倍、約16%を目標に発電できるようになるのではと思っています。
東京のダムも有効運用する
東京の奥多摩町には治水(水道水確保)を目的に造られた小河内(おごうち)ダムがあります。
小規模ですが発電もしています。
発電量を増やせるのか検討すると良いと思います。
都心に近いところでも水力発電ができるので新築住宅に太陽光パネルを設置義務化するより、ダムの有効運用や小水力発電に着手すると良いと思います。
tokyo-np.co.jp 東京都奥多摩町の小河内ダム
元国土交通省河川局長の竹村公太郎氏
この記事は、ダムのプロである元国土交通省河川局長の竹村公太郎氏の書籍を参考にしていますので、詳しく知りたい方は書籍をお読みください。
「水力発電が日本を救うー今あるダムで年間2兆円超の電力を増やせる」
「水力発電が日本を救う ふくしまチャレンジ編」
2冊とも東洋経済新報社出版
竹村公太郎氏の考察ではダムの発電量は年間2兆円、100年で200兆円増やせるとのことです。
ちなみに日本のダムの耐久性は半永久で、その理由は
建築物のコンクリートは鉄筋が入っているので劣化するが、日本の多くのダムは鉄筋がないコンクリートの塊で石のようなものであり、100年200年単位で硬化が進むとのことです。
安全保障のためにエネルギーを考える
日本は安全保障上でも、海外の天然ガス・石炭・石油に依存しない自立したエネルギー確保が必要です。
環境配慮・再生エネルギーの視点でも水力発電は注力したい分野です。
また、日本では地熱発電も有望です。
https://real-int.jp/articles/1608/
脱ダム宣言
昔、脱ダム宣言という宣言を元にダム建設反対運動がありました。
その後、ダム建設を中止した結果、酷い洪水被害が発生したことから建設再開したダムもあります。
脱ダム宣言では、すぐに堆積物で埋まるのでダムは無駄と主張していましたが、多くのダムは堆積物を簡単に除去できるようです。
さらには堆積したジャリを売却しているケースもあるようです。
(塩分のない砂やジャリは価値があります)
脱ダム運動が、現在、どうなっているか不明ですが、今回の提案は新しいダムを造る話ではなく、既存のダムを有効に運用するという提案であり、国防にもかかわることなので、積極的に推進していくことを願います。
ハード(ダム)はあるので、ソフト(運用)を時代にあった最新のものにするということです。
本質を理解する
ダムが勢いよく放水している時は発電していないと書きました。
理屈は異なりますが、一般のプロペラ式の風力発電も風が強い時はプロペラが勢いよく回っていても発電していません。
風速の3乗に比例して発電するため、風が強くなると発電機を守るために発電を止めてしまうのです。
風が強いと発電できないのは、もったいないと風が強くても発電できる風力発電の仕組みも開発している人もいます。
一旦、利権や常識や自分の知識などをリセットして、まず物事の本質を理解していくことが基本だと思います。
そして、日本の特徴を活かすことが富を拡大します。
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