ビッド・レートとオファー・レート
前回の記事
https://real-int.jp/articles/1259/
1.ビッド・レート(買値)とオファー・レート(売値)
日常生活で私たちが目にするプライスのほとんどは、スーパーや店舗での販売価格や売値と言った価格の1つしかありませんが、FXのプライス表示は常に2つあります。
それがビッド・レート(買値)とオファー・レート(売値)です。
ビッド・レートはそれを提示している「業者」の買値、
オファー・レートはそれを提示している「業者」の売値です。
ビッド・レートとオファー・レートを提示している業態として身近な例ではチケットショップがあります。
デパートの商品券や航空会社の株主優待券などは、チケットショップの買取価格と販売価格の二つのプライスが提示されているのを見たことがあるかと思います。これこそがビッド・レートとオファー・レートです。
二つの通貨の交換レートであるFXレートのオファー・レートとは、そのレートを提示する業者か見て通貨ペア表示の左側の通貨を売って右側の通貨を買う交換レートとなります。
USD/JPYであればUSD売りJPY買いのレートということです。
ビッド・レートはそれぞれ売り買いが反対のレートとなります。
2.取引所取引と店頭取引
上場株式や取引所で売買されている「先物」のような市場集中型の金融商品であれば、取引所取引と言って、市場中の全ての売りオーダーと買いオーダーを一か所に集めて双方の値段が一致したところで取引を成立させます。
そのためその瞬間に成立している価格は1つですが、FXや債券現物のような店頭市場で業者と顧客の相対で取引されている金融商品では同時にいくつもの取引価格が存在します。
それは全ての取引を取引所等の一箇所に取引を集中させないことによって普通に発生する店頭(業者)間の価格差がまずあり、次に店頭(業者)ごとに提示するビッド・レートとオファー・レートの2つの価格で取引が成立することが理由です。
業者は顧客からの引き合い(価格提示依頼)に応じて、業者側から見た買値であるビッド・レートと売値であるオファー・レートを提示します。
顧客は自分が買いたければ業者の売値、自分が売りたければ業者の買値で取引を行います。一つの業者に対して複数の顧客がほぼ同時に同じ商品の価格提示依頼をしてそれぞれの売りと買いの取引が成立するなどという事も普通にあります。
3.ビッド・レートとオファー・レートの差は業者の収益源
また、ビッド・レートとオファー・レートの差額、これをスプレッドといいますが、このスプレッドが業者の収益の源泉となります。
例えば業者はビッド・レートで買い取った商品を、別の顧客が買いに来てくれればオファー・レートで売却することができます。
この間に市場価格が動かなければ、「ビッド・レートとオファー・レートの価格差×金額」がこの業者の収益となります。
ところで、金融商品の市場価格は常に動いていますので、別の顧客が買いに来た時に価格が上昇していれば、ビッド・レートとオファー・レートの差額にこの上昇分を加えた価格差がこの業者の収益になります。
一方、価格が下落していた場合はビッド・レートとオファー・レートの差額との差分が損益になりますので、スプレッド以上に価格が下落していると損失を被ることになります。
これが価格変動リスクと呼ばれるものです。
もしも、別の顧客がこの商品を買いに来てくれず、そしてこの業者も価格変動リスクを負いたくないと考えれば、他の業者への売りを打診してその相手方の業者のビッド・レートで売却をおこなうことになります。
ところで、顧客としては、売却に際してはできる限り高いビッド・レートで売りたいし、購入に際してはできる限り低いオファー・レートで買いたいと思うので、通常顧客は何社かの業者にプライス提示を求めることになります。
4.店頭取引のプライスはディーラーが作り出す
先ほどお伝えしたように市場集中型の取引所取引と違い、店頭取引では同じ瞬間にいくつものプライスが存在するので、仮にすべての業者のプライススプレッドが同じだったとしても価格差は生じることがあります。
極端な例ケースでは、ある業者のオファー・レートが他の業者のビッド・レートを下回ることもあります。
一方、業者としてはなるべく短期間でより多くの買いの取引と売りの取引を成立させた方が収益に結びつきますので、取引を増やし、薄利多売で収益を狙う業者は他社よりも小さなスプレッドでプライス提示をしようとします。
一般的にビッド・レートとオファー・レートのプライススプレッドの小さいプライス提示ほど「良いプライス」とされて顧客はそのような業者に集まってきます。
FXの世界では小さなプライススプレッドを提示でき、しかも収益を上げ続けることのできるインターバンクディーラーは市場の参加者から尊敬の対象となります。
次回は店頭取引のプライスを作り出すディーラーの動きについて解説します。