為替レート表記とクロス円レート計算
1.為替レートの表記
為替レートの記載の方法がいくつもあるので、分かりにくいと思っている方もいるのではないでしょうか。
テレビのニュースなどでは、1ドルが115円30銭と言うような表現がされる一方、ドル円、USDJPY、USD/JPYといった表記もあったりで少し混乱する方もいるのではないでしょうか。
最近は「USD/JPY ドル/円」のような分数の形での表記が一般的に定着してきましたし、この表記には後ほどお伝えするようなメリットがあるのでこの表記で説明をしていきたいと思います。
まず、1ドルが124円50銭、
1ユーロが1ドル13.5セントと言うようなときは、
それぞれ
USD/JPY=124.50
EUR/USD=1.1350
のように常に左側に書いてある通貨1単位に対して、右側に書いてある通貨の幾らと等しいかが数字で書いてあります。
FXのマーケット(為替市場)では、通常アメリカドル(USD)を単位通貨としたレート表記で単位通貨の金額での取引がされています。ただし、一部の通貨ペアはUSDではなく、他の通貨を単位通貨としています。
イギリスポンド(GBP)、オーストラリアドル(AUD)、ニュージーランドドル(NZD)、ユーロ(EUR)の4通貨です。
これは外国為替発展の初期段階で、主導的な立場にいたイギリス連邦構成国と、EU加盟国の多くで使用されている共通通貨ユーロの2種類だけは為替市場の慣習としてUSDに優る単位通貨として取り扱われているのです。
2.クロス円レートの計算
次にクロス円についてです。FX取引をしているときや海外旅行をしていてよく必要になるのが外国通貨1単位が日本円でいくらであるかを算出する計算です。
ユーロやイギリスポンドのような主要通貨であれば多くのサイトでリアルタイムで提供されていますが、マイナー通貨になると自分で計算する必要が出てきます。これをFX の世界ではクロス円レートを計算すると言います。
円貨での価値を知りたい通貨(他通貨)のクロス円レートの計算には
・USD/JPY と
・USD/他通貨 といった
「円と対象となる他通貨」の対アメリカドルレートの2種類があれば十分です。
クロス円の計算には、対円のレートを算出する通貨によって掛け算と割り算を使います。
以下のUSD/JPY①とEUR/USD②からはユーロ円(EUR/JPY)。
USD/JPY③とUSD/CAD④からはカナダ円と言ったクロス円レートをそれぞれ計算してみましょう。
USD/JPY=124.30 ①
EUR/USD=1.0900 ②
EUR/JPYは掛け算を用いて
①×②で124.00×1.0900=135.16
USD/JPY=124.00 ③
USD/CAD=1.2500 ④
CAD/JPYは割り算を用いて
③÷④で124.00÷1.2500=99.20 となります。
ここで、掛け算と割り算の二つが出てきて分かりにくいと感じた方がいると思います。
これは為替市場で取引される際に使われる為替レートには2種類あることによって計算方法が影響を受ける為です。
以下の2種類の為替レートが存在します。
a. 掛け算通貨(レート)
クロス円を計算する際に、二つの為替レートを掛け算してクロス円を計算するUSD/JPY以外の通貨レートを「掛け算通貨(レート)」。
〇〇〇/USDの形で表記されている通貨ペアの
USD以外の通貨○○○のこと。
b. 割り算通貨(レート)
クロス円を計算する際に、二つの為替レートを割り算してクロス円を計算するUSD/JPY以外の通貨レートを「割り算通貨(レート)」。
USD/〇〇〇の形で表記されている通貨ペアの
USD以外の通貨〇〇〇のこと。
先にお伝えしてしまうと、掛け算通貨は基本的にはUSD が単位通貨となっていない為替レートで市場取引されている以下の通貨です。
EUR/USD、GBP/USD、 AUD/USD、 NZD/USD
それ以外は全て割り算通貨です。
実はCADもイギリス連邦の構成国ですので昔は掛け算通貨の一員だったようですが、筆者がFXの世界に入った1990年ころには割り算通貨でした。
隣国のアメリカとの貿易が多く、米国との経済規模の差からUSDを基準とするレート表記になったものと思われます。
ところで、ビジネスの世界や海外の両替商では、FXの世界で一般的に使われているEUR、イギリス連邦通貨、USDの単位通貨あたりの為替レート以外にもその逆数の為替レートも時々登場します。
いわゆるJPY/USD やJPY/MYR、 JPY/THBなどなどです。
この場合多くは1以下の小数点以下の数字になるのでレートを100倍にしてから表記することもあり、ますますややこしくなります。
表記の方法は目的に応じていろいろであっても良いと思いますが、金融取引に利用するのであれば筆者としてはあくまでもFXの世界での表記を使うことをおすすめします。
また、クロス円のレートの計算もUSDやEUR、GBP、AUD、NZDを単位通貨とした表記のレートから計算することをお勧めします。
余談ですが、割り算通貨で計算したクロス円の取引は、結構FXディーラー泣かせでした。
日本の企業の輸出入に関連したクロス円例えばCAD/JPYの為替の取引を行うと、多くの銀行はそのままカバー取引をせずにUSD/JPYとUSD/CADに分解してカバーします。
例えば、CAD200MIO(2億カナダドル)を対円で取引した場合、
1.取引金額がカナダドルで設定されているためカバーする金額がFX市場で取引される通貨単位であるUSD換算でいくらになるかわかりにくい。
2.為替の世界では常に通貨ペアごとに取引レート提示側から見た売値(Offerレート)と買値(Bidレート)の2つのレートが表示されていますが、慣れないとUSD/CADとUSD/JPYのそれぞれについてこのどちらのレートで取引すれば(すなわち売り買いのどちらをすれば)カバーできるかが分かりにくい。
先ほどの例で仮にFXディーラーである自分が顧客からカナダドルを2億ドル対円で買っているとすれば、(これをCAD/JPYをGIVENされたと言いますが、)
③と④のレート水準を使う場合、FXマーケットでカバー取引をする際にUSD/CADは約160MIOの米ドル買い、USD/JPYは約160MIOのUSD売りを行う必要があります。お分かりいただけますでしょうか(汗
新人のFXディーラーにとっては、カバー金額の計算以上に通貨ペアごとの売りと買いのサイドはわかりにくく、取引の売り買いのサイド間違いで怒られるのなんていうのは日常茶飯事でした。
今は、全てコンピューターが取引してくれるのでこのような間違いは起こらないので、心配はいらないのですが、このようなカバー取引に直接触れる機会が減ったことによるFX取引関係者のスキルの維持が今後の課題かもしれません。
【関連記事】
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