ウクライナ危機が世界経済に及ぼす影響は?
対ロシア貿易ができなくなることで世界のGDPは0.6~0.8%減少
ロシアのウクライナ侵攻により世界経済は一変した感がある。具体的に、世界及び日米欧各地域の経済に、どのような影響が、どの程度あるのか?
第1に、ロシアの金融機関がSWIFTから排除されたこと、安全面、倫理面での理由からロシアとの取引がしにくくなったこと、などにより、ロシアと世界各国との貿易取引がほとんどできなくなってしまった。
しかも、ロシアが世界から隔絶された状況は、プーチン政権が続く限り、今後数年にわたって続く可能性が強い。ロシアのGDPはさほど大きくないが、貿易量は意外に大きく、日本の半分程度だ。おそらくは、そのほとんどが消失してしまう。
ロシアから欧州などへの石油・天然ガス輸出の決済は、今のところSWIFT排除の対象外となり、現状では容認されているが、これも今後どうなるか、わからない。
2021年のロシアの海外への輸出は4,933億ドル。うち約半分の2,532億ドルが石油、天然ガスなどのエネルギーの輸出で、残りの半分の2,401億ドルがそれ以外の輸出だ。
ロシア経済のGDPは1.77兆ドルだ。エネルギー以外の輸出2,401億ドルはほぼ確実に失われるとすれば、それだけでロシアのGDPは14%減少する計算だ。もし、エネルギー関連の輸出2,532億ドルもできなくなれば、ロシアのGDPは計28%減少する計算になる。
一方、2021年のロシアの輸入(つまり海外からロシアへの輸出)は2,934億ドルだった。海外からみると、ロシア向け輸出需要が失われることになる。ロシアの輸出減少幅はエネルギーを除いて2,401億ドル、エネルギーを含めて4,933億ドルだ。
一方、海外の輸出減少幅は2,934億ドルとなる。合計すると、5,335億ドル(エネルギー部分を除く)~7,867億ドル(エネルギーを含む)が失われることになる。これは世界のGDP(94.9兆ドル)の0.56%~0.82%に相当する。
IMFの1月経済見通しによれば、世界経済の成長率は2021年の5.9%から4.4%に鈍化するというものだった。だが、ロシアとの貿易取引が事実上できなくなるという直接的な影響だけで、世界の成長率は4.4%ではなく、3.6~3.8%に鈍化することになる。ちなみに、通常、世界経済の成長率3%割れが世界全体の景気後退に匹敵する。
したがって、この直接的な影響だけでは景気後退にはならない。地域別にみると、米国の場合、ロシア向け輸出が米国のGDPに占める比率は0.03%とほとんどないため、ロシア向け輸出がゼロになっても米国経済に影響はない。
ユーロ圏ではロシア向け輸出がユーロ圏のGDPに占める比率は0.6%と比較的大きい。ロシア向け輸出がゼロになれば、ユーロ圏のGDPは0.6%減少することになる。日本のロシア向け輸出の対GDP比は0.2%で、日本のGDPは若干減少する。
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2022/03/14の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
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